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面倒臭ぇ

「くそっ、もっとポーション持ってこいっ」


ポーションをジャバジャバ掛けると傷が塞がっていく。治癒士も懸命に魔法を掛ける。叶多とクロノは何も出来ずにそれを見ていた。


「カ、カナタさんがやったんですかっ?」


「いや、やったのは俺じゃ・・・」


「そうよっ!カナタが私の為にこいつをやったのよっ」


クロノがフフンとそう大声で叫ぶとハンター達がぎょっとする。


あちこち切り裂かれて血塗れのズタボロになったジェイソン。そのジェイソンはここの誰もが恐れてクロノが拐われるのを黙って見捨てたのだ。


そして、クロノは叶多が来ていたシャツを来ている。あぁ、このカナタという男はジェイソンからクロノを救いだし、殺す寸前まで傷めつけたのだと皆は理解した。



「う、うぅ・・・。こ、ここは?」


「エスタートのギルドだ」


「お、俺は助かったのか・・・?」


「カナタがお前を救えと言ったからな。ポーション代と治癒代は自分で払え。それとお前のハンター資格は剥奪しておく。自分の国へ帰れっ」


「わ、わかった・・・。おい、女神とカナタとやら。すまなかった。あと礼を言う」


「お前の事を許した訳じゃないけど、二度と女の子に悪さすんな。次は無いからなっ」


「了解した・・・」


ジェイソンは金貨10枚をトーマスに渡してギルドを出て行った。


ポーションってすげぇな。あんなズタボロの死にかけが治ってもう歩けるんだ。


「おい、ポーションは何本使った?」


「はい、上級7本です」


「おい、お前の治癒の相場より高いが緊急依頼ということで、金貨1枚で手を打て」


「はっ、ハイッ」


「ほれ、カナタ。余りの金貨2枚はお前にくれてやる。ハンター証に入金しておいてやるから、それで女神様に服とか買ってやれ」


「いいの?」


「構わん。詫び代とでも思っておいてくれ。あと貴様らっ!今日の事は口外禁止だ。もし漏れたらお前ら全員、女を見捨てたグズハンターの烙印押してやるからなっ」


「わっ、わかりましたっ」


「それと二度と女神様にちょっかいかけんな。これはカナタの女房だ」


「ええーーっ。なんだよぉ」


ギルド内にいるハンター達がクロノが既婚者だと言われて不満を垂れる。この世界では既婚者に手を出すのはご法度なのだそうで、旦那に殺されても文句は言えない。しかも叶多は皆が怯えたジェイソンをあんなにズタボロにした凄腕と思われていた。


トーマスよ。嘘も方便とはいえ、何を宣言してくれてんだ・・・


「カナタ、女房って何?」


「気にすんな」


「ちょっとーーっ、教えなさいよーーっ」


「お前、大人しくしてないと大勢の前でポヨンするぞ」


叶多にそう言われたクロノは真っ赤になった。


「カナタの馬鹿っ!変態っ!スケベっ」


「うるせぇっ!事故だ事故っ」


ギャーギャー言い合う二人をトーマスはギルマスの部屋へと連れていく。



「トーマス、嘘も方便とはいえ、何でみんなの前であんなことを言ったんだよっ」


「だから合法的に守るにはあれしかないだろうが。シンシア、女神様のハンター証も作っておいてくれ。カナタと籍が入ってるようにな」


「えーっ、カナタさんを既婚者にしちゃうのー?」


「形だけだっ。つべこべ言わずにやれっ」


シンシアはぶつぶつ文句を言いながらハンター証を作りに行った。


「ちょっとカナタ。既婚者ってどういうことよ?」


「女神様、あんたは今何も能力を使えないと聞いている。カナタが女神様を守る正当な理由を設けないとまた狙われる恐れがあるから形だけでもカナタと結婚している事にした方がいい」


「えっ?私とカナタが結婚? ぷーくすくすっ。人間で下僕のカナタが?私の結婚相手ですって?」


「な、トーマス。こういうやつなんだよ。だから無理矢理ハンター証を偽造することないって。こんなのバレたらトーマスもシアちゃんもヤバイだろ?」


「それはそうだが・・・」


「おい、クロノ。俺は戦闘能力がない。いつでもお前を守れるとは限らん。誰か強そうな奴をたぶらかして守ってもらえ。俺は何年かかるかわからんがそのうち神器を取り返すから。取り返したらお前に届けるから好きに生きてろ」


「な、何よっそれっ」


「さっきもらった金もお前にやる。服でも靴でも好きなのもの買えよ。トーマス、金貨1枚ってどれぐらいの価値だ?この世界の通貨の価値が解らん」


「ランクDの奴が月に稼ぐのが銀貨10枚くらいだ。これで贅沢しなければ暮らしていける。銀貨100枚で金貨1枚。だからDランクの奴の1年分ないぐらいだな。この街なら金貨2枚あったらここか安い食堂で食えば1年は持つぞ」


おぉ、結構な価値だな。金貨1枚で200万円くらいの感覚か?


「どこの国でも同じ?」


「いや、この国は安全だから物価が安い。中心の国へ行けば収入も物価も倍以上になるな。通貨は世界共通だから、ある程度稼いでこっちに移り住んで来るやつも多いぞ」


なるほど。これ、ワープ使って貿易したら儲かるかも。ここで仕入れて物価の高い国で売ればウハウハじゃね?


「ということだ。クロノはその金が無くなるまでに守ってくれる奴を探せ」


「あんたはどうすんのよ?」


「俺はここでしばらく雇ってもらって情報収集とシンシア、さっきの女の子の手伝いをする予定だ」


「はぁ?私を捨ててあんな普通の子を選ぶの?」


「選ぶも何もお前、俺と一緒にいるの不満なんだろうが。ぷーくすくすとか笑ってただろ?自分で気に入った奴を探せ。俺は誰が強いとかどうとかさっぱり解らん。お前なら何となくわかるんだろ?」


「なっ、何よそれっ。そんなのわかる訳ないじゃないっ」


「じゃあ、トーマスに強そうな奴がいるところを教えて貰うからそこまで運んでやる。そこで見付けろ。ハンターランクAとかSとかなら守ってくれんだろ」


「なっ、何よっそれっ。あんたが守りなさいよっ」


「あのなぁ、俺はワープすることしか出来ないんだぞ。ここのハンターに襲われても負けるわっ」


「あのクズをやっつけたじゃないっ」


「ジェイソンは魔物にやられただけで、俺がやった訳じゃない。俺は運んだだけだ。だから俺にはお前を守る力が無いって言ってんだよっ」


「力が無いって、そんなのどうやって魔王を倒すのよっ」


「まぁ、作戦は考える。倒せなくても神器取り返したら仕切り直しでもして、あの勇者をもう一度探して送り込むなり、スキル返して貰って新しい勇者なりに頼んで魔王を倒してもらえ。あ、言っておくけど神器取り返したら俺を元の世界へと戻せよ」


ポロポロ ポロポロ


涙を流すクロノにぎょっとする。


「なっ、何泣いてんだよ?」


「みっ、見た癖に・・・」


「はっ?」


「私のポヨンを見た癖にっ」


「あれは事故だろうがっ。それにほんの一瞬だろうがっ」


「責任取りなさいよーーーっ」


「だーーっ!なんの責任だよっ。それにお前にどうやって責任取れってんだ。俺はただの人間でお前は神様だろうがっ!それに何年掛かるかわからんが神器は取り返してやるって言ってるだろうがっ」


「せ、責任取って守りなさいよっ」


「だから無理だって言ってんだろうがっ。俺はこの世界の人達より弱いんだよっ」


「逃げればいいじゃないっ。戦わなくても逃げればいいでしょっ」


「お前が俺にぷーくすくすしたんだろがっ。なんで俺がそんなクソ女の為に四六時中逃げ回るような生活をしなきゃなんないんだよっ」


うっ、うっ、うわーーーーんっ


「泣くなっ!全部自分でやったことだろうがっ。どれだけ勝手なんだよっ」


「えっと・・・カナタさん、一応女神様と既婚にしましたけど、これどうします?」


「あ、ごめん。それ無しにしてくれる?クロノが形だけでも嫌みたいだから。俺もこの歳で結婚してますとかあり得ないし」


「じゃあ、あと3年ぐらいしたらどうですか?」


「いや、3年経っても多分俺17歳だし同じだよ?」


「でも人生経験は増えますよね?」


「まぁ、そうだね」


「ふっふーん。じゃこれ消しときますねっ。あ、女神様。今日は私が使ってた所の部屋を綺麗にしておきましたからそこを使って下さいね。私はカナタさんの部屋で同居しますから」


「えっ?」


「はい、ここの宿舎は全部相部屋なんです。女神様が男の人と同室はまずいだろうからって」


「なんであんたが私の下僕と同部屋になるのよっ」


「下僕がどうかは知りませんけど、私なら平気です。もしお手付きになったらそれはそれで・・・」


こら、小学生の癖にそう言う事を言うんじゃないっ。


「お、お手付きってど、ど、ど、どういう意味よっ」


「はい、お嫁さんにしてもらう為の予約みたいな物ですよ」


「カッ、カナタは私の下僕なのよっ」


「はい?だから結婚相手ではないですよね?」


「ぐぬぬぬぬぬっ」


「あーもうっ。トーマス。俺稼ぐからさちょっと一月ぶんの生活費貸してくれない?そんなに時間掛からずに返せると思うから」


「ま、まぁ、銀貨10枚くらいなら構わんが・・・」


「シアちゃん。君は元の部屋で寝なさい。クロノ、お前は一人でここの宿舎で寝ろっ」


「あんたはどこに行くのよっ」


「その辺の安宿でも泊まる。もう面倒なんだよこういうの」


「わっ、私になんかあったらどうすんのよっ!」


「俺といるより安全だろ。じゃなっ」



叶多は女の子と付き合った事も無く、ましてや結婚がどうのとかどう対応していいかわからなかった。クロノが何を考えてるのかさっぱりわからない。


取りあえず、トーマスから銀貨10枚を借りて街中のどこか泊まれる宿を探してギルドを出て行ったのであった。



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