強制クエストは割に合わないらしい
クロノ達は外は寒いので家にいるからカナタに来いと呼びにきた。男連中はまだ飲むらしく外で騒いでいた。
エリナ達も風呂から出て来たのでお開きにしようと思ったら男どもがまだ飲むというので、家の中でもう少し飲むことに。
「あら、リズ。随分と女の子らしい服じゃない」
「うっせぇな。似合わねぇって言いたいんだろ?」
「そんな事無いわよ。黙っていれば女の子に見えるわよ」
エルメスはそうからかう。
「スカートってスースーするんだな」
「スカートは初めてはくの?」
「うちは兄貴しかいなかったからな。お下がりは全部ズボンだったんだよ」
リズは兄 兄 妹の3人兄弟らしい。他の国から一人でハンターとしてゴーレンに来たとの事。
叶多は似合ってるよと言いかけたが、変に期待を持たすのも悪いし、クロノも拗ねそうだから何も言わなかった。
ようやく宴会もお開きになり、トーマス達を宿に送っていく。
「狭いけど大丈夫?」
リズとシンシアがシングルベッドで寝るのを心配する叶多。
「大丈夫だって。遠征に行ったらクソ狭いテントで雑魚寝だからな。ベッドがあるだけで十分だ」
そうか。俺達はどこにも行っても家に帰って寝られるけど、普通は遠征に行ったらテントになるのか。
じゃ、おやすみと言ってから、叶多は風呂に行く。
寝る前に服を脱ぐリズ。
「な、なんで脱いでるんですかっ」
「せっかく貰った服がくしゃくしゃになるだろ?」
「う、上の下着は?」
「サイズが合わなかったんだよっ。女神さんのは大きかったんだっ。言わせんな恥ずかしい」
シンシアも服がバーベキューの臭いがしているので、自分も脱いで寝ることにした。
「なんでお前も脱ぐんだよ?男みたいだからってそんな趣味ねーぞ」
「カナタさんのベッドにバーベキューの臭いを付けたくないんですっ」
「え?これカナタのベッドなの?」
「そうですよ。いつも別々に寝てるらしいです」
そう聞かされて裸でベッドに寝るのが恥ずかしくなるリズ。
「リズさんカナタさんの事が好きなんですよね?」
「す、す、好きじゃねーしっ」
「私はカナタさんの事が好きなんです。でもエリナさんからは諦めてとっとと違う男を探せといわれてます」
「そうなんだ」
「風邪引くから早く布団に入って下さい。襲ったりしませんから」
そう言われてリズは布団に入った。
「女の子同士でも暖かいですね」
「そりゃそうだろ?」
「リズさんも他の男の人を探すんですか?」
「私は男女って言われるぐらいだからな。自分でもそう思うし。あんたや女神さんみたいに女の子らしくなんてなれなねぇよ」
「でも、カナタさんって、リズさんみたいな人好きだと思いますよ。多分ですけど」
「慰めてくれなくってもいいよ」
「ふふっ。慰めです」
「何だよそれ?普通は違うとか言うもんだろっ」
「まぁ、いいじゃないですか。振り向いてもらえないもの同士なんですから」
「そうだな」
「このベッド、カナタさんの匂いがするんです。ここで寝るとカナタさんと寝ているような気になります」
「本当だ・・・」
「エリナさんから未練が残るからこのベッドでもう寝るなと言われているので、リズさんがいたから便乗しました。これが最後になると思います」
「そっか。私もこれが最初で最後かな。嬉しいけど切ないや」
「ほら、やっぱり好きなんじゃないですか」
「うるさいなっ。ちょっとドキドキしただけだよ」
「あの怖いカナタさんにですか?」
「最初は恐ろしいと思ったけどよ、なんかあのままめちゃくちゃにされたいとか思っちゃたんだよな。吸い込まれそうな感覚っていうのかな。それまではなんだこのひょろこい奴は?とか思ってたんだけどな」
「私は優しい方のカナタさんが好きです。怖いカナタさんには震えちゃったんです」
「そっか。まだハンター始めたばっかだろ?戦いを続けたらまた違った風に感じるかもよ」
「そうかもしれませんね」
二人はそんな話をしながらカナタの匂いに包まれて寝たのであった。
その隣では、カナタが神の試練に耐えていた。
翌日スクランブルエッグとベーコンと米の朝食にえらく喜んでくれたリズ。
「今日さ、一緒にトレーニングするだろ?だから昨日の自分の服を着るけどさ、あの服は貰ってもいいのかな?」
「いいよ。似合ってたし」
と、昨日黙ってたのに褒めてしまった叶多。
「あ、アリガト」
トーマス達を迎えに行き、早速トレーニング開始だ。
「じゃ、シンシアとカナタの模擬戦からな」
と、同じメニューをやる。
「おいおい、あんな本気で攻撃すんのかよ。それにシンシアってすげぇな。あんな連射でファイアボールとアイスランス混ぜて打てんのかよ。ハンター登録したばっかだよな?」
「始めた頃よりマシになってきたな。カナタのスピードも上がってきた。2日休んで身体がリフレッシュしたせいかもしれんな」
「シンシアってあんなに凄かったんだ」
「実践経験はないからな。現場に出てもほとんど役にたたんだろ。それに身体能力が低いからな」
「その点リズは魔法使いと思えんほど動けるよな」
「うん、魔法使いだとわかると狙われるからね」
「そうだな。厄介な奴から殺るのはセオリーだ。シンシアはそのへん理解してねぇからな。よし、女神さん入れてやってみるか」
「は?あの娘戦えんだろ?」
「カナタとペアに慣れんといかんからな」
トーマスの説明が出来ないフランク達。
「カナタ、女神さんと一緒に逃げろ」
と、言われたので叶多はクロノを抱き上げた。
ボヒュンっ
「な、なんだよありゃ?」
「ドワーフ特性の防具だ。俺も驚いたがあの二人だからこそ機能するってやつだ」
クロノを抱いた叶多にシンシアの魔法は当たるどころか狙いすら付けられなくなった。
「クロノ、大丈夫か?」
「うん。しがみついてたら大丈夫」
あまり急転換するとクロノに負担が掛かるけど慣れていって貰わないとダメだからな。
「よし、リズ。お前も攻撃側に入ってみてくれ」
「え?当たったらどうすんだよ」
「ポーションがあるから大丈夫だ。遠慮なくやれ。カナタは女神さんをちゃんと守る」
と、言われて攻撃するも当たらない。
「ナタリー、お前速そうだな。攻撃に加わってくれ」
「大丈夫?」
「女神さんを抱いてるクロノはなかなかのもんだぞ」
と、ナタリー参戦。
げっ、まだ追加されんの?
と、ナタリーが一瞬で間を詰めてくる。
「おー、ナタリーは予想通り速いな」
「ニックが一番速いがな。攻撃するならナタリーだろう」
叶多は腕でガードをするとシールドが発動して攻撃を交わして逃げる。
「よし、フランクも入ってくれ」
フランクが参加したことで状況が一変する。
ナタリーの攻撃をかわした所を魔法で狙い撃ちされ、攻撃を受けた所にフランクが突っ込んで来た。叶多はかわせずに攻撃をシールドで受けて吹っ飛ばされた。
ダメだこのまま転がったらクロノに痛い目を合わせてしまうっ。
叶多は受け身を取らずクロノをぐっと抱き締めて背中からズザザザザっと地面にこすりつけられた。
「痛ってぇ」
「カナタに何すんのよっ」
クロノは如意棒に魔力を込め、追撃しようとしてきたフランクに突き刺して、
シビビビビビっ
「ふんぎゃぁぁあ」
フランクが感電して失神したところで終了。
エルメスにヒールをかけられて目覚めるフランク。
「何なんだよっ!あんな攻撃来るとか聞いてねぇぞっ」
「女神さんよ。逃げるだけって言ってあったろが」
「だって、カナタに酷いことするんだもん」
「ったく。休憩して飯にすっか」
ということでハポネに移動しておばあちゃんの店に行った。
「よう来た、よう来た」
「俺は刺身定食!」
クロノはイカ定食、女性陣も刺身、男性陣はフライ定食だ。
「カナタ、これなんだ?」
「生の魚だよ。醤油を付けて食べる。緑のはワサビといって辛いから少しだけ付けて様子を見ろよ」
リズは俺が頼んだということで同じ物を頼んだが、気持悪そうだった。
自分の刺身を食べながら、クロノにイカ刺を食べさせていく。
「お、旨いじゃん」
リズはワサビが平気そうだったが、エルメスは鼻を押さえてジタバタしていた。
「リズ、一つくれ」
と、テトラがフライと刺身を交換して食べる。
エルメスと同じく鼻を押さえてジタバタするテトラ。
「大げさだなお前」
「なんでこんなんもん食って平気なんだお前はっ」
「デカい図体しやがって、こんなもんでジタバタするお前が情けないんだろうがっ」
「何だとっ」
エルメスに言わせると二人はいつもこんな感じらしい。
ニックはシンシアに一生懸命話し掛けている。
「帰ったら、色々と組合せ変えてやってみるか。なかなかこういう機会ないだろ?」
「そうだな。強制クエスト以外で他のパーティと連携というか一緒に戦うとかないからな」
「強制クエストってなに?」
「そんな事も知らんのか?Cランク以上にかかるクエストだよ。魔族の強襲とかスタンピートとかの時に強制的に参加させれんだ。報酬は安いし危険だしろくなもんじゃねーな」
「参加しなかったらどうなるの?」
「ランクがDまで落ちる」
強制クエストが発生すると街中に赤い煙があげられるらしい。
「でもその時にその街にいるとは限らないじゃん」
「お前みたいにあちこち行ってるヤツなんかほとんどおらん。大体は所属ギルドの街で活動しているからな。強制されるのは所属しているやつだけだ」
「所属ギルド?」
「変更してなければ登録した所だな」
「カナタはエスタート所属だ」
「ということは?」
「まず、エスタートで強制クエストに参加する必要はないだろうな。あそこでそんなことになったなら他の地は壊滅した後だろう」
「強制クエストってしょっちゅうあるの?」
「いや。俺も2回しかしらん。2回とも魔族の襲撃だ。魔族は倒す前に逃げたがな」
「トーマス、俺、魔族って幹部と魔王しか見たことないんだけど強い?」
「俺は幹部も魔王も見てないからな。それに魔族ってのも色々いるから全部はわからん」
と、そんな話をして宿に予約を取ってからベリーカに戻った。




