拗ねてたリズ
「うわっ、すっごい泡」
3人でもギリ入れるぐらいのサイズの風呂で泡を楽しむ女性陣。
シンシアはジェットバスの所に行って泡に溺れる。
「キャハハハハツ。カナタもそうやって溺れてた」
「二人でお風呂楽しむなんてえっちねぇ」
「たまーにね、たまーによ。ちゃんと水着来てるし。泡で見えなくなるし」
「それでもよ」
クロノはカナタとそうしたいとの欲求よりも、くっついていたいかそういうのが強い。なので恥ずかしいのが薄れる泡風呂とかを一緒に楽しみたいのだ。お風呂で飲むお酒も美味しいし、二人で飲むとなおさらなのだ。
「シンシア、これ、トーマスも買うつもりだから家が出来たら毎日入れるわよ」
「カ、カナタさん入りに来るかな?」
「家にあるのにわざわざ入りに来ないわよ。いい加減あなたも違う男を探しなさい」
「はい・・・」
「大丈夫よ。そのうちお前は俺が守るって言ってくれる人が出てくるわよ」
「そうですかね?でもそんな事を言ってくれても好きになるとは限りませんよ」
「あら、そうかしら?口だけで言われても響かないけど、身体を張って守ってくれたらキュンとするものよ」
「そうかなぁ?ギルマスも守ってくれたけど、ドキドキしなかったよ」
「あれはあなたにとっては父親みたいなものでしょ?ドキドキする代わりに近くにいたら安心はするでしょ?」
「それはそうだけど。エリナさんはギルマスにキュンとしたの?」
「ふふふっ。したから一緒にいるんじゃない。これはトーマスには内緒よ。あいつは口だけじゃなかったからね・・・」
クロノも叶多がジェイソンから自分を守ってくれた時の事を思い出してキュンとしていた。
ホコホコになった3人はほんのりピンクの頬をして風呂から出て来た。
「カナタくん。このお風呂良かったわ。あなた達も入って来たら?」
「男二人で泡風呂ジャグジーとか勘弁してよ」
「あら、いいじゃない。男に同士でキャッキャウフフしてきたら?」
「するかっ」
「トーマス、先に入っで来たら?お湯入れ直すけど?それとも一人で泡風呂する?」
「いや、あのジェットバスをやってみたい」
「なら、お湯抜いて入れ直すよ。泡風呂だと溺れるからね」
と言うとシンシアは下を向いていた。
トーマスが風呂に行った隙にまたエリナのトーマス物語が始まる。どんどん暴露されて可哀相に。
トーマスが俺ぐらいの頃、エリナはすでにこの容姿だったようで、軽い食事とお酒を出す店をやっていたらしい。当然エリナ目当の客も多く、魅了を使わなくてもモテてたらしい。
「で、店に来たトーマスが一目惚れしたの?」
「毎日通ってくれてね。他の男と違って声を掛けてくるわけでもなく、ただ少し飲んで帰るの」
「へぇ」
「で、ある日、花束持って、いきなり結婚してくださいって言われたのよ」
「わぁ、凄い。ギルマスって情熱的なんですね」
「ふふふ、そうね。でも私はトーマスの事をなんにもしらないでしょ?それにまだ大人って感じでもなかったし」
「で、断ったの?」
「私は強い人が好きって言ったら、必ずあなたを守れる力を付けて来ると言って来なくなったのよね。で、何年も来なくなったから、また口先だけの男かと思ってたのよ」
「へぇ。で、次に来たときは勇者と一緒に来てってなったんだ?」
「そうよ」
「トーマスに魅了使ってたの?」
「本人はそう言ってるけどね、使ってないわよ」
トーマスはマジで惚れてたのか。
そこまで話すとトーマスが風呂から出て来た。
「やっぱりあれ買うぞ。めちゃくちゃいいじゃねーか」
トーマスはジェットバスが気に入ったようだった。
それから少しだけ飲んで、明日どうするか話をする。
「ゴーレンに何か仕入れる物がないか聞きに行きたいだよね。年明けたら行くと行ってそのままだし」
「そうか、ならみんなで行くか。臨時パーティの奴らも見てみたいしな」
「じゃ、朝イチで行こうか。遅くなるとクエストに出ちゃうから」
明日はゴーレンに行くことが決定。
トーマス達を宿に送って行こうとするとシンシアがもじもじっとしている。
「シアちゃん泊まって行く?」
「えっ、いいんですかっ」
「ダメよ。あなたも一緒に帰るの」
とエリナにダメだしされて渋々帰っていった。ここの方が楽しいのかもしれない。
「じゃ、明日の朝ご飯はゴーレンの食堂で食べよう」
と言ってまた戻る。
「シンシア、あなたカナタくんのベッドで寝られるのが嬉しかったんでしょ?」
「う、うん」
「そんな事をしていたらいつまでも未練が残るでしょ。もう泊まりに行っちゃダメよ」
「はい・・・」
シンシアは叶多のベッドに入ると一緒にいるようで嬉しかったのだ。
叶多達が家に戻ると、叶多は風呂に行った。
さっきまでワイワイしていた空気が一変し、風呂からグボボボと音が聞こえてくるだけ。急に寂しくなったクロノは水着に着替て風呂に行った。
「お、お前、さっき風呂入っただろうがっ」
「い、いいでしょっ。水着も着てバスタオル巻いてるんだから」
クロノの手にはグラスと発泡ワイン。飲みきらないとダメでしょと持ってきた。
少し気の抜けた発泡ワインでもこうしてクロノと一緒に飲むと美味しいなとカナタは怒ったふりをしながら飲んだのであった。
翌朝、トーマス達を迎えに行ってゴーレンのギルドへ。
「お、やっと来やがったな」
「ごめん、ちょっとしごかれててね。あ、この人達は俺とパーティ組んでくれてる人」
と、コックに紹介して朝ごはんを頼む。そして、仕入れて来てほしい物を聞いていく。
「でよ、覚悟しとけよ」
「何を?」
「リズがめっちゃ怒ってたぞ。年明けたら来るって言ってたのに全然来ないって」
「なんで?年明けたら来るとは言ってたけど、臨時パーティは去年しか出来ないって言ってあったのに」
「まぁ、そう言ってやるな。ちゃんと謝ってやれよ」
???
「あ、うん」
そんな事を言われた叶多は曖昧な返事をした。
「あーーーっ!カナタっ。あんた年明けたら来るって・・・。誰?その人達?」
クロノとシンシアが両隣、トーマスとエリナがその前に座っていた。
「年明けたらパーティ組むって言ってたろ?その人達だ」
と、リズをトーマス達に紹介し、リズにも皆を紹介しているところへフランクとナタリーがやって来た。フランクはトーマスに会えて嬉しそうだった。
朝飯を皆で食いながら年が明けてから何をしていたか話していく。
「基礎トレーニングか。そういやひょろこい身体が幾分かマシになったか?」
「少しだけね。2ヶ月ほどだからそんなに変わんないよ」
「で、いつまでそのトレーニングはやるんだ?」
「俺がA給クラスの体力が付くまでだって」
「何年かかんだよ、それ?」
「半年だ」
「え?」
「半年でそこまで鍛えあげる。こいつには明確な目的があるし、女神さんを守る使命があるからな。こういうのを持ってる奴は音を上げないし、上達も早い。それにそれぐらいの期間で出来なければ魔王討伐なんて無理だしな」
「お前、無茶させられてんなぁ」
「毎日肉離れしたり、筋痛めたたりして、ポーション飲みながらやってるよ」
「かーっ、そんなやり方してんのか。そりゃあなかなかここへ来れないわけだ」
「月イチで休んで商売もしないとダメだからね。前回の休みは約束してた所を優先して来れなかったんだよ」
「だってよ、リズ。いつまでも拗ねてないでこっち向けよ」
「拗ねてなんてねーよっ」
「こいつな、カナタが来ない来ないって毎日機嫌が悪かったんだよ。嫁のいるやつに惚れんなって言ってるのによっ」
「ほ、ほ、惚れてなんかねーっ!」
と、そこにテトラ達もやって来た。
「お、カナタ。やっと来たな。リズが拗ねててな」
「お前らもうるさいぞっ」
「お嬢さん、はじめまして。ニックと申します。自分はカナタと臨時パーティを組んでいました」
ニックはいきなりシンシアにそう自己紹介を始めた。
「なんだよニック、お前、私にお嬢さんとか呼んだことないくせにっ」
「うるせぇっ。お前みたいな男女とこのお嬢さんは全然違うだろうがっ」
「誰が男女だっ!」
「シアちゃん、魅了使ったの?」
「つ、つ、使ってないですっ」
ニックはシンシアに一目惚れか?
テトラとエルメスはニックを生暖かい目で見ていた。
「テトラ、ニックってあんなんなの?」
「いや、いつも飄々とはしていて女には構いにいかないんだがな」
「この辺じゃ見ないかわい子ちゃんだからじゃない?カナタの愛人?」
エルメスよ、シンシアになんてことを言うんだ?
「違います。妹みたいな娘です」
シンシアは妹と言われてガーンとなっていた。
「で、今日はどうすんだ?」
「今日は皆がいたらトーマス達を紹介しようと思ってただけ。あとはここの注文を聞いたから、後で持って来て終わりだよ」
「次は?」
「また2ヶ月ぐらい後かな」
「よし、それなら今晩宴会にしようぜ」
「だって、どうするトーマス」
「構わんぞ」
「前の店でやるの?」
「わっ、私、カナタの作ってくれた物が食べたいっ。前に遊びに来ていいよって言ってくれたじゃんっ」
「あぁ、そうだね。なら家でバーベキューでもする?狭いから外になるけど」
「いいのか?」
「前に約束してたからね。ゴーレンの肉は安くて旨いし。火酒もストックあるから好きなだけ飲んでくれてもいいよ」
と、いうことで我が家で宴会となった。
「じゃ、早めにクエスト切り上げて来るからなっ」
リズは元気いっぱいで皆とクエストに出掛けていった。
叶多はトーマス達にアッキバでバーベキューセットの追加の購入を頼んで、その間にゴーレンで頼まれた仕入と、バーベキューの食材を買いに行くのであった。