自分が何をしているか知った
トーマスとの特訓は第二段階に入った。体力トレーニングに加えて模擬戦に入ったのだ。
「カナタは女神さんを守りながら、シンシアの攻撃を避ける。シンシアは本気で当てにいけ。もしカナタが食らってもポーションで何とかなる」
ということでシンシアの攻撃を避けるのに専念する。ゲートは無しにだ。
「行きますよっ!」
と、シンシアが火の玉を出すのを避ける。結構大きめに避けないと着弾した余波で熱くて火傷する。慣れるまでクロノ抜きの1対1だ。
火の玉は威力はあるが大きくて見やすく、スピードもそれ程ではないので何とかよけられるが、氷の矢は速い。避ける事が出来ずに腕の防具で防ぐの精一杯だ。砕けた氷がバンバン顔にあたる。もう避けるとかではなしにスピードをあげて狙われないようにするしかない。
シンシアは逃げる叶多を追うのにスピードをあげて連射する。
スピードを上げて走り続ける叶多、魔法をバンバン連射するというお互いに辛い訓練だ。
一日それをやって叶多もシンシアもぶっ倒れた。
「よし、これで今日はこれで終わり。一日これをやって平気になったら次の段階だな。ゲートを使わずに宿までダッシュだ。カナタは女神さんおぶってけ」
鬼め・・・
「クロノ、汗臭くていやじゃないか?」
「大丈夫。カナタの汚くないもん」
「いや、汚いぞ」
そんな会話をしながら、宿にまでへーこら言いながら走る。というか歩くスピードと変わらない。シンシアもヘトヘトだ。
宿に到着して水を飲む。
「じゃ、また明日」
「飯はどうすんだ?」
「いらない。食べたら吐く」
叶多達は家に帰っていく。
「ごめん、先にシャワー浴びさせて」
と叶多はシャワーだけ浴びて寝に行ってしまった。
叶多はベッドに寝転がった時に赤ちゃんのような女の子の匂いに気付く。
あ、シンシアがここで寝てたからか。
なんとなくここにシンシアと寝ているようで気恥ずかしいがそれよりもうダル過ぎて無理だ、とゴーゴー寝てしまった。
クロノもシャワーを浴びて、またこそっと叶多の所に寝に行ったのであった。
同じ事を繰り返して一週間ほどしたときにシンシアが身体中が痛くてたまらないと言うので翌日は休養日して、また風呂に入りにくることに。
「シアちゃん。風呂で寝て起きなかったから俺に裸見られるからね」
「じ、じゃ、寝ちゃおうかな・・・」
やめなさい。
「ちゃんと出て来たら、ハニーチーズ揚げと発泡ワインあるけど?」
「ちゃんと出てきます」
と、敬礼して風呂に行った。
「カナタはもう平気なの?」
「ちょっと慣れたのと、レベルが1上がったんだよ。訓練でも上がるんだね」
と、そんな話をしながら待っているとホコホコになったシンシアが出てきたのでクロノに風呂へいかせる。
「お酒を飲む前に水飲んどき」
と、先に水分を取らせる。
「はー、スッキリしました。やっぱりここのお風呂最高ですね」
「トーマスも買うって言ってたから明日ハポネに行こうか?」
「ハイッ」
クロノはシャワーだけを浴びてとっとと出てきた。俺とシンシアを長く間二人っきりにさせておきたくないらしい。
「お前、頭洗ってないじゃないか」
「じゃ、後で洗ってよ」
「カナタさん、女神様の髪の毛を洗ってあげたりするんですか?」
「前にね。こいつリンスの使い方を知らずにヌルヌルのままで出てきたりするからさ」
「い、一緒にお風呂入ってですか?」
「洗面所でだよ」
「お風呂も一緒に入るわよ」
「水着着てたまにだろが。俺が風呂入ってる間に先に食べてて、ハニーチーズを揚げてからいくから」
と、叶多はゆっくりと風呂で癒やされたいので、ハニーチーズと発泡ワインを贄に出して風呂に行った。
グボボボ
ふぅ。明日は休養日だから、ゆっくりしてからハポネに行って、アッキバにでも遊びに行くかな。
「水着ってどんなのですか?」
「見たい?」
シンシアが叶多の事を好きなのは知っているが、ここに来たときから色々としてくれていたシンシアとエリナの事は嫌いではないクロノ。お酒も入り、ご機嫌になっていて、どんな水着で一緒に風呂に入ってるのか聞かれていたのだ。
「見たいです」
と、言われたのでクロノは寝室に行って、水着に着替えてきた。
「じゃーーんっ」
「わっ、ほとんど裸じゃないですかっ」
「これ着てバスタオルを巻くの。泡風呂にしたら泡がたくさんあるからもっと見えないからバスタオルも取っちゃう」
「そんなのどこに売ってるんですか?私も泡風呂入ってみたいです」
「じゃ、明日カナタに水着買いに連れてってもらおうかっ。私も違うの欲しいっ」
そういうと、バタバタっと風呂場に走っていくクロノ。
「カナタっ、明日水着買いに連れてって!」
バンっと風呂の扉を開けて中に入ってきたクロノ。
「お、おまっ、入ってくんなよっ」
バスタオルも何も巻かずに水着だけで入ってきたクロノを見て真っ赤になる叶多。これはこれで目に毒なのだ。
「えっ?あ。きゃあっ」
あんた今更水着姿を見られてきゃあもないだろが。
「ど、どうしたんです?」
「まともにカナタに水着姿を見せちゃった。着替えてくる」
クロノは着替えて赤くなりながら飲みだした。飲めば恥ずかしくない。
叶多はなかなか風呂からでてこず、二人ともかなり飲んだ所で出てきた。
「カナタさん、長風呂でスッキリしたんですか?」
「えっ、ああ。うん」
ということで叶多が飲み始めるとご機嫌で笑いだした。
「カナタぁ、シンシアも泡風呂に入りたいんだって。だから明日水着買いに行こうよ」
南国か。それもいいかな。
「じゃ、そうするか」
「じゃ、あの服を着ていこうね」
知ってる人の前でバカップルするのか・・・。
「シアちゃん。水着を買いに行くところは夏だから、行く前に夏服に着替てから行くよ」
「はいっ」
「今日は泊まっていく?」
「いいんですか?」
「別にいいよ。すぐに寝れると思った方が安心して飲めるだろ?」
「ありがとうございます」
「じゃ、トーマスにそう言ってくるよ」
と、移動した。
「また泊まるのか?」
「うん、今クロノと飲んでるよ」
「シンシアは辛そうじゃないか?」
「ん?クロノとキャハハハハツって笑って飲んでるよ」
「それならいいか」
「でさ、明日南国に水着を買いに行くんだけど一緒に行く?」
「水着?なにすんだ?」
「風呂に入るときに着るんだよ。シアちゃんも欲しいって」
「お前、シンシアと風呂に入るつもりなのか?」
「まさか。クロノと入るんだろ」
「あら、ハポネのお風呂は3人で裸で入ってたわよ」
「泡風呂で遊ぶからじゃない?宿では浸かってただけでしょ?」
「泡風呂?」
「ジャグジーに泡風呂の元を入れたら泡々になって面白いんだよ」
「へぇ、私も興味あるわ。私も行っていいかしら?」
「どうぞ。女同士で楽しんで下さい」
明日は全員で南国へ行くことになった。
家に帰ると二人ともヘベれけだ。
「おっそーい」
「そんな時間経ってないだろうが」
「もうこんなに飲んじゃったもんねぇ」
二人で3本も飲んだのか。
「カナタ、なんか作って」
「どんなもんだよ?」
「うーん、何でもいいっ」
そういうのが一番困るんだよな。まぁ、今から手のんだ物をリクエストされるよりいいけど。
「じゃ、あっさりしたものな」
と、蒸し鶏を作る。蒸すといっても鶏の胸肉を弱火の出汁でゆっくりと煮るだけだ。作ってる間もキャハハハハツと笑い声が聞こえる。シンシアも笑ってるから問題ないか。この家は騒いでも近所迷惑とかないからな。
煮えた鶏肉の粗熱を取って、スライスしてまた出汁に。本当は一晩置いた方がいいんだけどね。
「ほら出来たぞ」
俺もこれでハポネの酒も飲もう。
ちょいとつまんでクピっとな。
「ねーねー、カナタさん」
「何シアちゃん」
「まだずっと我慢してるんですか?」
お前らなんの話をしてんだ?
「子供はそんな事を知らなくて宜しい」
「もう成人したもーん」
「エリナだろ、そんな話を教えたの?まったくろくでもない女だ」
「エリナはんはとっても優しくて面倒見がいいんですっ」
「そうかもしれないけどさぁ」
「カナタさんの事を本気で心配してくれてるんですよっ。」
「俺とクロノはこのままでいいの」
「わ、わらひなら大丈夫でふよ」
「やめなさい。そんな赤い顔して何を言いだすんだ」
「わたひもね、もうおとななんですよ」
あー、めっちゃ酔ってきてるな。
「ひょっひょ、ヒンヒア。なんれあんらがカナタとほんなことをふるのよっ」
クロノよ、お前もか。今日はずいぶんとわかりやすく酔ってるな・・・。あっ、トウモロコシのお酒の残り全部飲んでやがる。
トーマスの所に行ってる僅かなすきにどんだけ飲んだんだよっ。
「お前ら飲みすぎ」
「ひいから、ひいから、カナタも飲んでっ」
と、クロノに口に酒を押し付けられる。
「やめろって」
「ひゃあ、わらひがのまへてあげるね」
と口移しをしてこようとするクロノ。
「やめろって。飲むからっ。飲むからっ」
これはエリナは教えてたのか。これでクロノが帰れなくなったらどうすんだよっ。
クロノだけ酔ってるなら対応出来るけど、シンシアもへべれけなんだよな。
シンシアはクスクス笑いながらじーっと見てくるし。
「シアちゃん。飲みすぎだぞ」
「これがのまふにやってられますかっての。わらひにもふこしくらいなんかはへへくれてもいいんひゃないでふかね」
何を言ってるかさっぱりわからん。
「何?」
「こ、こうひうことれすっ」
とガバッと抱きついてキスしようとしてくる。
「ダメだって。悪い酒になってんぞ」
「キャハハハハツ ヒンヒアおほられてるっ」
クロノも俺が何されようとしたかわかってないな。
シンシアはそのまま叶多に抱きついたまま寝ていく。
クロノも突っ伏したのでお開きだな。
シンシアを寝室に運び、クロノを寝室に運んでから蒸鶏をつまみに一人で飲む。
はー、女の子にこんなんされてもドキドキしなくなったな。こうやって大人になっていくのだろうか?
叶多は片付けてクロノのいる寝室へと寝にいく。スースーと気持ちよさそうに寝るクロノから少し離れて寝ようとしたらゴロゴロっと転がってくっついて来た。
「起きてんのか?」
スースー
寝てやがる。
もう一度元の場所に戻して寝ようとするとまたくっついて来たので諦めて叶多も寝た。
叶多は寝た後にクロノをギュウウッと抱きしめる。無意識でもそれはいつものコト。そしてまた無意識にクロノのポヨンに手をやっていた。
んっ
ふとクロノのそんな声で目が覚めた叶多。
はっ!俺は何をやってるんだよっ。
手に残るもうホニャホニャの感触。叶多の手はクロノのポヨンの上にあった。
わあっ!ヤバいヤバいヤバい。
そして叶多はまた眠れない夜を過ごしたのであった。
朝起きるとクロノの顔をまともに見れない。まだ手に感触が残っているのだ。
ヒッヒッフーヒッヒッフー
一人で起きてザーっと冷たいシャワーをあびる叶多。
これは一刻も早く神器を取り返さなくては。
もう、いつ自分が間違いがいを起こしてもおかしくないと、理解した叶多なのであった。