限界ってものがある
楽しい旅行も終わり。今日からハンター生活がメインだ。我慢の神とかじゃねぇっと叶多から説教を食らったエリナはしゅんとしていた。
一度ベリーカに行って、俺達の家を紹介する
「カナタさん、思ってたより質素な生活されてるんですね」
「まぁ、二人だし飯・風呂・寝るだけだからね。お茶でも飲んでからドワーフの国に行く?」
とりあえずザイルとドグは先に送って来たのだ。
家に入りたいと言うので結界の魔道具を解除して中へ。
「わー、中は綺麗なんですねぇ」
「リフォームしたばっかりだからね」
「カナタくん、部屋少ないけど子供出来たらどうするの?
「そんな予定ないよ。というか事情知ってるでしょうが」
「だって、神じゃないならそんなのいつどうでもいいってなってもおかしくないでしょ?」
そうならないように気を付けてます。
シンシアはどんな生活をしているのか興味津々のようで仕方がないみたいだ。
「キッチンダイニングとリビング、寝室しかないよ」
「こ、ここがカナタさんの寝室?」
カチャっと開けて見せ、もう一つの寝室も。
「で、ここがお風呂」
「わ、なんですかこのお風呂?」
「ここが泡々が出て、ここは寝転ぶとジェット水流がでて身体をほぐしてくれるんだよ」
「カナタくん、お風呂だけ豪華にしてエッチね。そういうプレイ?」
違う。
「この世界って娯楽というかテレビやスマホとかないからこういうのがないと楽しみがなんにもないの」
この世界の人がよく酒を飲む理由はこういうことなのだろう。それしか楽しみがないのだ。
「テレビ?スマホ?」
と、元の世界の物を説明する。
「へぇ、そんなのがあるのねぇ」
「そう、だから夜ふかしすることも多いよ。ゲームとかしてたら寝る暇もなくなるし」
へぇとか言うけど、実物無かったら想像付かないだろうな。
「クロノの世界に俺のカバンを置いて来たんだよ。そこにスマホ入ってるんだけどね。まぁ、持ってきてても使えないし、ダウンロードしたアプリのゲームをしても1日も持たないよ」
「どうして?」
「こっちの世界は魔力があるけど、電力ってのがないだろ?スマホとかは電力を使って動くからね」
「電力?」
「うん、雷とかと同じだよ。あれを作り出して使うんだ。洗濯機とか同じような物があるけどね。動く仕組みは違うんだよ。魔力は自然に存在しているみたいだから、こっちの方が優れているとは思うけど」
グボボボボボ
「トーマス、何やってんだよ」
「面白いなこれ。どこで買ったんだ?」
「ハポネだよ」
「よし、俺の家を建てたらこれを入れよう」
その後にベリーカの街に行き、宿を長期予約してからドワーフの国へ。
「よし、行くか」
と、ザイルの案内で武器屋に。
「ほーぅ、お前がわざわざ連れて来るとは珍しいの」
武器屋のオヤジはイカつくてゴツい。名前はアマツだそうだ。
「とりあえず魔力を計る。これに手を乗せろ」
トーマスは計らなくていいと言ったので、まずは叶多から。
「おぉっ!こいつはスゲぇな」
「えっ?俺魔力あんの?」
「いや、0じゃ。こんなのは初めて見たぞ。綺麗に0じゃ」
あ、そーですか。もしかして魔法チートがあるのかと思ったじゃないか。
次はシンシア
「むっ・・・。お前は人か?なんじゃこの魔力は?」
常人とは比べ物にならないぐらいにあるらしい。
次はクロノ
ボヒュッ
「うわっ」
魔力の測定メーターが振り切って壊れてしまった。
「ザイル、なんじゃこいつらは?特に最後の嬢ちゃんは」
「カナタは異世界人、シンシアは魔族とのハーフ、最後の嬢ちゃんは女神クロノじゃ。どうじゃ面白かろ?」
「なんじゃと?」
ザイルはざっくり説明した。
「フム、久しぶりに面白い仕事じゃな。ハーフの嬢ちゃんのはこの杖を使え。金貨10枚じゃ」
と、金と銀が混ざったような色で先にハテナマークみたいな形の中に赤い綺麗な石が付いたとても綺麗な杖を出して来た。
トーマスが確認する。
「かなり軽いな。見事な杖だ」
「フム、お前は見る目があるようじゃの。持ってる剣を見せてみろ」
トーマスは剣を見せる。
「ダメじゃな」
「そう言うな。昔から使ってる相棒だ」
「物が悪いわけではない。もう限界に来とるという意味じゃ。研いでやろうかと思ったが無駄じゃな」
「もうダメそうか?」
「相当荒い使い方をしてきたじゃろ?もう芯にダメージが蓄積しとる」
トーマスは残念そうな顔をした。
「なら、俺のも見繕ってくれ」
「坊主は何にするんじゃ?」
「俺、武器を使った事がないんだよね。何がいいと思う?」
「は?武器を使った事がない?」
「うん」
どんな戦い方をするのか聞かれて説明する。
「ふむ、それなら武器はいらんじゃろ。防御に特化した方がいいな。魔力がありゃもう少し違う方法があるんじゃが・・・。女神とお前の分は新しく作り出さなきゃならんの」
叶多はクロノを守りながら戦うが、クロノ自身も防御に特化した武具があった方がいいと言われて作って貰うことに。
トーマスは今より少し長く厚い剣を選んで貰っていた。短剣と対だ。これなら強引に扱っても大丈夫だろうとのこと。
値段は聞こえなかったが相当高いみたいだ。トーマスがえっ?と驚いてたからな。
防具はサイズを合わせて作ってくれるとの事で任せた。
「一ヶ月ぐらい時間をくれ」
「じゃ、来月の中頃に来るね」
と、ドワーフの国を後にした。
「カナタ、明後日から特訓だ。今日と明日でベリーカに戻って家を建てる所を決めたい」
ベリーカの宿に行き、エリナを連れて家の近くへ移動。
「この辺でいいんじゃない?」
「こんな所で店すんの?」
「暇そうでいいじゃない。トーマス達も帰って来てご飯食べるのに空いてる方がいいでしょ?」
なるほど、エリナはトーマス達の面倒というかご飯を作ってあげるのが目的なのか。嫁さんではないから仕事としてってことなのかな?
近くにいたおっちゃんにここの土地が誰のか聞いてみると別に誰のとか決まってないらしいので、飲み屋兼住宅を建てていいか聞くと好きにすればいいとのこと。
「随分とおおらかというかなんというか、土地がタダなのか?」
「みたいだね。豪邸でも建てる?」
「いや、ほどほどでいいだろ?それともカナタも一緒に住むか?」
「いや、あそこでいいよ。あの家は報酬とはいえ、ここの人達の善意で貰った家だからね」
毎晩、エリナからの辛かいがあるとかしんど過ぎる。
明日、大工のディックに家の相談をしようということで、ベリーカの街の食堂で飯を食って帰った。
先に風呂に入れと言うので身体を洗ってグボボボとして楽しんでいるとしばらくしてからクロノが入って来やがった。
泡風呂の元を入れてから湯船の中でバスタオルを外して泡々を楽しみだすクロノ。
アワアワアワっ
「ジェットバスしてる時に泡風呂にしたら死ぬだろうが」
「だってこれ楽しいじゃない♪」
叶多はあの泡の下には半裸のクロノがいると思うと近付けない。
「クロノ、俺は水着を着てないんだぞ」
「私も着てないよ」
は?
「な、な、な、な、何やってんだよお前っ」
「泡で見えないからいいじゃない」
そういう問題ではない。
「じゃあ、泡をふーふーしてやるからなっ」
「い、いいよ」
ダメだ。
「お前、どんどん恥ずかしいのがどっかいってるだろ?」
「はっ、恥ずかしいに決まってるじゃない」
「なら、なんでそんな事をするんだよっ」
「だって、これからエリナやシンシアと一緒にいる時間が長くなるでしょ」
「そうだな」
「私には我慢の神でも、他の人には良からぬ事を考えるかもしれないじゃない」
「考えるわけないだろっ」
「あ、あの二人のポヨンも、き、綺麗なんだから見ようとするかもしれないじゃない」
やめて、想像させないで。特にシンシアのポヨンなんて物凄く罪悪感があるから。
「そんなことするかっ」
「だってエリナが言ってたもん。男ってそういうもんだって。チラッと見えそうなら絶対に見るからって」
エリナのヤツ、いらんことを教えてやがる。そう思いながら否定出来ない叶多。
「だから、見たいなら、わっ私の見ればいいかなって」
「クロノ、もうそういうのやめなさい。俺とお前はそういう関係になれないんだから」
「他の人とはなるの?」
「ならないって言ってるだろ」
「だって、なるかもしれないじゃないっ」
「四六時中お前と一緒にいるのになるわけないだろうがっ」
「またなんかあったら一人でフラッと出ていったりするかもしれないじゃない」
「もうしないよ」
「絶対?」
と、確認するように近づいてくるクロノ。
「だから、水着も着てないのに近寄るなって」
こいつ、飲んで来やがったな。
「あーっもうっ。離れてっ」
「だって私には我慢の神なんでしょ?」
「だからやめろって。限界ってものがあるんだよっ。こんなんが続いたら一緒にいれなくなるぞっ」
そう言うとビクッとなって離れた。
「ぐすっぐすっ」
「泣くなよ」
「だって」
「だってじゃない。早くこれを巻け」
と、バスタオルを渡す叶多。
「こっち見んなよ」
と、叶多も腰にタオルを巻いてシャワーで泡を流して風呂から出た。
あーっもうっ。最近のクロノおかしいぞ。飲んだらすぐにあんな風になりやがる。
そこにはザイルから貰ったトウモロコシのお酒が半分くらいなくなっていた。少し飲んでみるとめっちゃキツイ。こいつこれを一気に瓶半分くらい飲んだのか。
そしてクロノが風呂から出て来ない。
あーっもうっ!あーっもうっ!
覗きに行くと案の定寝てやがる。
もう、灯りを消して、風呂から抱き上げるとバスタオルすら巻いていないクロノ。暗くても見えてしまうし、ぐったりとしているから抱かないと拭くことも出来ない。
軽く拭いてバジャマだけ着せてダブルベッドに寝かせて、自分の寝室で寝た。
翌朝、真っ赤な顔で寝室から出て来たクロノ。
「お前、もう他に嫁に行けると思うなよ。俺に真っ裸を見られて触りまくられてんだからな」
「う、うん」
「お前はもう俺のだからな」
「う、うん」
叶多はそう宣言した。早く魔王を倒して、こんな悶々とした生活から脱出だ。