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拷問

雪まみれになった子供達が降参。


「兄ちゃんたち、あれ何やったんだよ?」


「魔王を倒す能力だ」


「私のは魔法よ」


「すっげぇ。どうやったらあんなの出来んの?」


「出来ない方が幸せだぞー。出来たら出来たで大変だからな」


「なんだよそれー」


「こうやって普通に遊べるのが一番幸せなんだって事だ。ホラ雪だるま作るぞっ」


と、叶多は子供達と遊びだした。


「おねぇちゃん達きれいね」


そう言った女の子がクロノの所に来た。


「カナダも綺麗だって言ってくれたわよ」


「カナタ?」


「あそこで遊んでるお兄ちゃん」


「へぇ」


そこへ親達がやって来た。


「すいません、子供達と遊んで貰って」


「カナタは子供と遊ぶの好きみたいだから大丈夫よ」


お父さん達はクロノにポーッとしたり、エリナをガン見したり、シンシアにニコニコしたりと忙しい。


雪だるまを作ってたカナタはまた雪のぶつけ合いになっていた。


「こらっ、もうやめなさいっ。お兄ちゃん達に迷惑で・・・」


ベシッ


「キャアっ」


止めに来た若いお母さんが巻き添えを食らって倒れかけたので叶多が支える。


「大丈夫ですか?」


「えっ、あっ、す、すいません」


と言いながら顔を赤くしてそのままのお母さん。


「ちょっとカナタっ!何をしてんのよっ」


「いや、こけそうだったから」


クロノがぷりぷりしながら叶多からお母さんを引き剥がした。


「もうっ」


「何怒ってんだよ」


「嬉しそうだった」


「そんな事ないよっ」


「じゃ、抱っこして」


ハイハイ


とクロノを抱っこするとまた子供達がイチャイチャカップルをやっつけろーっとか言い出した。


「カナタ、そのまま避け続けろ。攻撃食らうなよ」


と、遊びに来たのに特訓になってしまった。



足場の悪い雪の上で逃げ回ってヘトヘトになった叶多達はお昼ご飯へ。


子供達にバイバイして、お食事処へ。


「何にしよう・・・。これだな」


と、天麩羅うどんとかやくご飯のセットだ。


「カナタ、何それ?」


「うどん」


「じゃ私もそれ」


うどんが何か知らないのに叶多と同じ物を頼むクロノ。


他のみんなはフライ定食を頼んでいた。


運ばれて来た天麩羅うどんは天麩羅が別に添えられていたので、クロノにエビだけ食べられて、シシトウがこっちに来た。


残りの天麩羅をうどんに投入。叶多は衣がテロテロになったのが好きだった。カップうどんの後乗せサクサクと書かれている天麩羅も最初に投入しておく派だ。


残念ながら期待したほど美味しいうどんではなかったが結構満足だ。まぁ、リゾート地のうどんはこんなもんだ。


クロノはうどんを食べるのにフォークで悪戦苦闘しているので、小さいお玉の上に乗せて食べるように勧める。もう冷めてるのでチュルルといっても大丈夫だろう。


「このっ このっ」


あーっもうっ


お玉にヒョイヒョイとうどんを乗せてやる。


「トーマス、昨日も思ったが、いつもあんなんなのか?」


「食べさせてないだけマシだぞ」


「カナタって大変なんだな」


「嬉しそうにやってるからいいんじゃねぇか?人を構うの好きなんだろうよ。漁港でも子供かわいがってたしよ」

 


皆もうスキーもいいかとなって、少しゆっくりしてから宿に帰った。雪見酒をしたいらしい。


叶多は一度ベリーカに戻って火酒とハポネの酒を樽で持ってきて厨房に運んでいくと女将の満面の笑みが印象的だった。


売店の酒が無くなるぐらい買い込んで風呂に持ち込む。


皆は大浴場で飲むらしいが、俺は部屋で休憩だ。雪合戦でヘトヘトなのだ。


「お風呂はいんないの?」


「ん?明るいのに一緒に入るのか?丸見えだぞ」


「え、あうん。恥ずかしいからやめとく」


まだ飲んでないし、明るいからそれはそうだろう。俺も昨日の事があるし恥ずかしくてダメだ。というか生々しく感覚が残ってるからな。


浴衣に着替てごろ寝してるとそのまま寝てしまった。


クロノは寝ている叶多を見ていた。エリナに言われた、自分より神と言われるぐらい我慢しているのかと思うと申し訳なくなってくる。


せめて寝ている時ぐらいこっそりと思い、叶多の手を取って少し自分の胸に当ててみる。気付かれないか物凄くドキドキするし、叶多の手が自分の胸に当出てるのもドキドキする。


ダメっ。恥ずかし過ぎる。


一人で赤くなっているクロノはジタバタしていた。そんな事を知らない叶多はクークー寝ていた。


クロノは一人でジタバタしてぐったりした頃に夕食となり、叶多も起きた。


「あ、寝ちゃってたよ。ごめんな一人にして。ゲームコーナーでも行けば良かったね」


「だ、大丈夫」


「顔真っ赤だぞ。熱あるんじゃないだろうな?」


と、叶多がクロノのデコに手をやると余計に赤くなるクロノ。


「だっ、大丈夫だから」 


あー、もうダメっ。


「は、早くご飯食べにいこっ」


と、せかされて大部屋に。


「カナタ、寝てたのか?寝癖ついてんぞ」


「ウトウトしてそのまま寝ちゃったよ。雪遊びって体力使うんだね」


中居さんは今日もカマクラに行くか聞いて来るので行きますと返事をする。


「では、焼きフグはあちらでご用意いたしますね。お飲み物はヒレ酒で宜しいですか?こちらも同じ物をご用意できますが」


何かよくわからないのでそれを頼む。


皮の湯引きと鉄刺(フグ刺し)とともにヒレ酒が出て来た。


「熱いですのでお気を付け下さい。中のヒレはお召し上がりになりませんよう」


なるほど、フグのヒレを炙って熱燗に入れてあるのか。


グビっ


「熱っつ」


「今熱いから気を付けろと言われただろ?」


と笑われながら飲んでみると旨味が濃い味だ。しかも熱々燗なので身体がめちゃくちゃ温まる。


カーーっとなるなこれ。


「これは旨いの」


シンシアはダメなようだが、他は旨いという。シンシアは味はというより、熱々燗がダメなようだ。飲む前にケホッとしている。


まず皮の湯引きから食べる。フグの皮って旨いんだな。


次は目の前で白子を塩で焼いてくれる。


表面はパリっとして中はトロっとしてて旨い。続いて鉄刺。


ペラっペラっ何だな。えー、モミジおろしとポン酢か。


「クロノ、この赤いの辛いからダメなら入れるなよ」


これフォークで食べるの難しそうだな。


「食べさせてやろうか?」


「う、うん」


クロノ、自分と交互に食べていく。旨いなこれ。だんだんと手が止まらなくなる叶多。


次はフグの唐揚げ。これも旨い。フグって旨いよなぁ。これ高くても人気があるの分かるわ。


続いて鍋を食べるが、他の食べ方程感動はない。と思ってると野菜がめちゃくちゃ旨くなってる。


「カマクラからお戻りになりましたら雑炊をご準備しておきますので」


中居さんいわく、てっちりの醍醐味は雑炊にあるとのこと。なのでその分お腹を空けておいて下さいね、と言われた。

 

昨日と同じくクロノは足の間に座る。

焼きフグはあっさりだけど、ヒレ酒とよく合う。食べたり飲んだりするにはクロノが邪魔だけど暖かい。フンフン♪とご機嫌のクロノがフニフニと動くので腰を引いてもお尻をくっつけてくるのはやめて欲しい。


皆はここの飯と風呂、酒が気に入ったようで毎年これをやろうと盛り上がる。確かに年に一度は贅沢してもいいだろう。牡蠣とかもあるらしいし。生牡蠣は苦手だけど他のは好きなのだ。


雑炊を食べるぞと部屋に戻る。


「こりゃ旨い」


確かにてっちりの後の雑炊は蟹雑炊と甲乙付け難いな。


「カナタよ、明日武器を見に行くぞ。シンシアの杖を新調してやらんとな」  


「杖が無くても魔法使えてたよね?」


「あった方が威力が増すんだ。杖の性能にもよるがな」


へぇ。ちゃんと意味があるんだな。


と、色々な武器の説明を受ける。その武器屋で魔力量を計れるらしく、俺とクロノも計ってもらえとの事。


「クロノも計るの?」


「何か使える武器があったら持っていた方がいいだろ?」


「使えるのがあったらね」


何もないだろうけど。


またおっさん連中は風呂に酒を持ち込んで飲むらしいので俺とクロノは部屋に戻る。ヒレ酒で結構酔ったのだ。



部屋に戻って水を飲んでおく。皆と離れて気が抜けたのか一気に酔いが回ってきてフワフワしてるのだ。


「先に風呂入ってきて。俺が先に入って出て待ってたら寝そうだわ」


「じゃ、お風呂でシュワシュワ飲もう」 


「お前水着持って来てないだろが。昨日みたいな事をされたらお前の事を襲っちゃうかもしれんぞ」


酔った叶多はそんな事を言ってしまう。


「大丈夫。カナタは神様らしいから♪」


クロノはいいから、いいからと灯りを消して風呂へと引っ張って行った。


なんだよそれ?


先に入れとのことなので、髪と身体を洗って湯船に。


しばらくするとクロノが酒を持って入って来た。


もう一緒に入るのも慣れて来たとはいえ、色々と想像というか残像というか、感触とか蘇ってきて辛い。 


「ハイ」


とグラスを渡されて少し飲む。クロノはヒレ酒をあまり飲んでいなかったので、グビグビとピッチが早い。

 

「そんな飲み方してたら一気に酔うぞ。ただでさえ風呂で飲むと酔うの早いんだから」


「大丈夫 大丈夫」


とグビグビ飲むクロノ。


と、フワフワになったクロノがしなだれ掛かってくる。


「ほら、言わんこっちゃない。フラフラになってんじゃねーか。俺も酔ってるから危ないぞ。フワフワしてて支えられなかったらどうすんだよ」


「ん、こうやってたら大丈夫ぅ」 


またお前はそんな事をするっ。


クロノは抱きついてきたのだ。


「ク、クロノ。その、そんな事をされたらダメなんだよ。離れて」


「カナタ・・・」


「早くっ離れてっ」


「あのね・・・」


「いいから早くっ」


「カナタは私より神だから大丈夫なんだって」


エリナの野郎、そんなわけあるかっ。


クロノはカナタと単純にくっついていたいだけなのだ。だが、カナタには拷問に近いものがあった。



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