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帰って来たカナタ

叶多はエスタートギルド宿舎に戻って来ない。


「ったく、カナタの奴、顔を見せにぐらい帰って来いってんだ」


トーマスはクロノを見てそう怒る。


すっかり元気が無くなってしまったクロノはまた食事も取らず、部屋にこもっていた。


「2〜3日で帰って来ると思ってたのにねぇ」


今日は無理矢理部屋から連れ出して来たのだ。

 

「何してるんだろ・・・」


そろそろ、ベリーカの家のリフォームが終わるという頃に叶多は帰って来た。

 


「カナタっ」


クロノは叶多を見るなり飛びついた。


「こら、俺汚いからくっつくな」 


「汚くなんかないっ」

 

「お前に血の臭いも俺の臭いも付けたくないんだよ。風呂入って来るからちょっと待てろ」


叶多は今朝出て今帰って来たかのような感じでクロノにそう言って部屋に行ってしまった。


グスグス泣くクロノ。


「もう、泣かないのっ。カナタくん確かに汚かったからね」

 

「だって、だって」

 

「大丈夫よ。怖いカナタくんじゃ無かったでしょ?それにあんなに汚いなら他の女の子となんにもないわよ」


「本当?」


「多分だけど。それよりなんか作っておくわ」


とエリナが食べ物を作りに行った。


1時間ほどしてさっぱりした叶多がやって来た。


「うわぁぁん」  


泣きながら叶多に抱き付くクロノ。


叶多はクロノをよしよしする。


「お、お帰りなさいカナタさん」

 

「ただいまシアちゃん。クロノの面倒を見ててくれてありがとうね」


叶多はクロノをよしよししながらシンシアに挨拶をする。


「お前、何やってたんだっ」


叶多を怒鳴るトーマス。


「修行してた」  


「は?」


「今から何してたか話すよ」


エリナが食べ物とお酒を持ってきてくれたので飲みながら話すことに。


2件の討伐、2件とももう少し早く討伐が早ければ被害が少なかった事。


その後は被害女性をルルブ聖国に送り届けた事。 


叶多はもしあれがクロノだったらと思ったら殺気が止まらず帰って来れなかった事を話した。


「で、その後はどうしてたんだ?」


「魔族領で修行をしていた。というよりレベル上げ」

 

「は?」


「みんなにもあるかどうかわからないけど、俺にはレベルってのがあって、魔物や賊とかを倒すとそれが上がるんだよ。それが上がるとどうやら体力やスピード、力が上がるんだ」


「で、魔物だらけの魔族領でそれをやってたのか?」


「戦いの経験とかには役に立ってないけどね。ゲートに落として消滅させるだけ。木の上に乗って待ち伏せして落とす。ただそれだけだよ」


「で、そのレベルってのはどれぐらいになったんだ?」


「52。100までやろうかと思ってたんだけど50超えたあたりからほとんど上がらなくなったんだ。リフォームが終わるまでに帰らないとと思ってね。あ、リフォーム今日終わったから今から帰る?クロノが俺の事を怖くなければだけど」


「え?」


「お前、俺の事を怖かったんだろ?シアちゃんもそうだったし。だから殺気が収まるまで帰って来なかったんだよ」


「い、いつ私がカナタの事を怖がったのよっ」


「お前、前の討伐の後から俺に近付かなくなったろ?声掛けてもビクッとしてたし。まぁ、フランク達でも引いてたらしいから仕方がないよ」


「ちっ、違うっ」


「気を使わなくていいよ。魔物相手なら平気なんだけどね、人間相手だとどうにもならない。これからも同じ状態というかより酷くなるかもしれん。自分が自分じゃなくなる感覚ってやつだ。トーマス、シアちゃんとのパーティも考えた方がいいと思う」

 

「えっ・・・」

 

「シアちゃん、俺は賊の討伐依頼が出てたらそれを受ける。だから毎回怖がらせると思う。すぐに収まればいいんだけど、段々と収まるのに時間掛かるようになって来てるからね。俺、シアちゃんにそんな思いをさせたくないんだよ」


「こ、怖くなんかっ」


「無理しなくてもいいよ。Bランクのやつからも怖いと言われたからね。まぁ、それが少し収まって来るとゾクゾクに変わるとか訳のわからん事を言われたけど」


「それリズでしょっ!ま、ま、まさかしたのっ」


「何をだよ?」


「そ、そ、その・・・」


「カナタくん、クロノはその子を抱いたのか聞いてんのよ」


「そんなことするか馬鹿。お前ともしてないのに」


「え?」


「だって、良かったわねクロノ」


「俺がいない間、どんな話をしてたんだよ?」


「カナタくんはお腹がすいた狼。で、美味しそうな餌が自分から寄って来るって話よ」


「なんだよそれ?」


「ゾクゾクしたって言った女の子に誘われなかった?」


「帰るつもりないなら泊まってけとは言われたけどね。そんなんじゃないと思うよ。その時泊まるとこ無かったから」


「ど、どこで寝てたのよっ」


「え?野宿」


「こんな寒くなってきてるのに?」


「高ぶって来ると寒くもなんともないんだよ。逆に暑いぐらい。外で寝てると魔物とかも来るから、気配もなんとなく分かるようになったし。何度かぶっ飛ばされたけど」


「なんでそんな危ないことすんのよっ」 


「人といると襲われてた娘の事を思い出すんだよっ」


とその時にブワッと殺気が溢れる叶多。


ビクッとするシンシア。


ふーっ ふーっ


と叶多は息を吐き、自分を落ち付かせていく。


「ごめん、シアちゃん怖がらせて。あの時の女の子の叫び声と状況が消えなくてさ。あと10分早ければ・・・」


と、また殺気が漏れ出し始める。


「カナタっ」


「あ、ごめん。こんな感じだからさ」


ぎゅううううっ


クロノが後ろから叶多を力いっぱい抱き締める。


「大丈夫かクロノ。無理しなくていいぞ」


「無理なんかしてないっ」


「じゃ、家に一緒に帰るか?」


「うん」


「ごめん、俺、この一ヶ月近くまともに寝てなかったから帰るよ。クロノの顔見たら眠くなってきちゃった」


クロノに抱き付かれた叶多から嘘のように殺気が消えて、いつものカナタに戻った。


「わ、わかった。明日、ゆっくりでいいからここへ来い」


「了解。じゃまた明日ね」


と叶多のクロノは部屋に服を取りに行き、ベリーカに帰ったのであった。



「うっうっうっ」


叶多達が帰った後、泣き出したシンシア。


「どうするシンシア。お前カナタが怖いんだろ?」


「だって、あんなのカナタさんじゃないっ」


「お前馬鹿か。あれもカナタだ。あいつは優しいからああなるしか方法がないんだ」


「え?」


「平和な世界で生きて来たカナタがいきなり戦いの場で人を殺す事になったんだぞ。平気でいられるわけないだろがっ。あいつはああいう状態に持って行くことで心の防衛をしてんだ」  


「どういうこと?」


「恐らく、カナタは自分の中にもうひとりの自分を作ってる。人殺しはそいつがやってる事にしてるんだ。女神さんが居ないとなかなか元に戻れんみたいだがな」


「女神様が元に戻す・・・」


「で、どうする?カナタはお前が怖がるならパーティに入れないと言うぞ」


「あれもカナタさん・・・」


「そう思えるかはお前次第だ。俺が賊討伐はやめとけと言っても止まらんだろうからな」



(あのカナタくんいいわぁ。なんてゾクゾクするのかしら?シンシアは怖いがこれに変わらない方が幸せよ。うふふふふ)


 



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