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殺気を纏う

叶多はそっと一軒一軒家を覗いていく。感じたのは違和感。そう圧倒的に男が多い。女もいるがあまり品が良くなく田舎の素朴さがない。 


ほぼ間違いないな。


一番大きな家に目を付けてそこの近くにワープ。


窓から覗くと金を数えている男達は帯刀していた。田舎の村人があんなのするわけがない。


納屋に回ると血で黒く染まった荷馬車が停めてある。この血の臭いは動物の物ではない。これはもう確定だ。


家の裏から中を覗き、そこへワープ。まだ気付かれてないがすぐに気付かれるだろう。フランク達を呼びに行こうとした時に


「いゃぁぁ、やめてぇーーっ」


泣いてそう叫ぶ声が下から聞こえてきた。


叶多は下に降りる階段を探す。


「てめぇっどこから入りやがったっ」  


階段近くの見張りに叶多は見付かり、剣を振り上げた男達を問答無用で生首にする。普通の村人ならいきなり剣を抜かない。


階段をから地下に降りようとするとまた見張りがいる。そいつらも生首にして、地下に行くと、裸に剝かれ、泣き叫ぶ少女と事情の真っ最中だった。


一気に膨れ上がる叶多の殺気。


ゲートを出すと女の子まで巻き込む。叶多は初めて剣を抜いた。


その殺気に気付いた男に叶多は剣を刺した。


ズグっ


とても嫌な感触が叶多に伝わる。


「てんめぇっ」


とがんっ!


剣の素人である叶多の短剣は刺さりが甘く刺した男にぶん殴られ吹っ飛んだ。


グフッ


が、殴られた痛みで手に残る感触が薄れた叶多はそいつを生首にした。


襲われている途中だった女の子は恐怖で泣き叫び、叶多から後ずさった。


叶多は無言で上の服を脱ぎその子に投げる。溢れ出る殺気は止まらない。ガタガタ震える女の子には近寄らず、牢のような所に押し込められている女性達の所に近付いた。皆が後ろに後ずさり震える。


鍵は簡単な物だ。中からは開けられないが外からは開く。


「鍵は開けるけど、まだ外に出るな」


と言って叶多は上に上がる。


異変に気付いた男共が叶多に向かって来た。


叶多は淡々と生首にしていく。


「うわぁぁぁっ!バケモンだこいっっ」 


仲間が近付くだけでいきなり生首になるのを見て盗賊達が逃げ出した。叶多はそれを追い、生首にしていく。




「なんか騒がしいがカナタの奴、もしかして一人でおっ始めやがったんじゃねぇだろうなっ。ニック見てこい」


フランクがそう言うとニックは消えるようにして外に出てすぐに戻って来た。


「始まってやがる。行くぞっ」


フランク達が外に出ると我先に逃げ出そうとしている男達。


フランク達はまだ賊かどうか確信が持てないため、死なない程度に倒す。その時に大きな家から飛び出して来た叶多を見付けた。初めは強烈に強い魔族かと思ったぐらいの殺気と威圧を放つ叶多。追われた賊は次々と生首になっていく。


「な、なんだよありゃ・・・」


この光景を初めて見るニック達は動けなくなる。


「馬鹿やろうっ。逃げた奴を負うぞっ」


フランクの声に我に帰ったニック達は残党を狩った。叶多があんな状態になってるのは賊確定だと確信したのだ。


叶多はその間も家に入っては出てくる。


騒然となった村はすぐに静かになった。



ふーっ ふーっ


髪の毛が逆立ち、獣のような呼吸で佇む叶多。


「カ、カナタ・・・」


リズは本当に叶多なのか?と確認の意味も込めて名前を呼ぶ。


くるっと振り向いた叶多は目が血走り、恐ろしい魔族と言われても信じてしまうような殺気を身に纏いリズを見た。


ビクッ


リズとエルメスは叶多を見て怯えた。


「リズ、エルメス。あの大きな家の地下に被害者がいる。頼んだ」


そう言い残した叶多は村から出て行った。



フーッ フーッ


ここにクロノは居ない。叶多の状態がなかなか解除されない事を自分で自覚していた。そして怯えたリズのエルメスを見てその場を離れたのだ。


クロノのスカーフも、被害者の女の子に投げた上着のポケットの中だ。


殺気を纏ったまま村から離れる叶多。そこに魔物が現れる。


犬やデスボア、人型の魔物か何かわからないが向かって来るやつは敵だ。


ゲートに落としてキャンセルする。全部落として消滅させても良かったが討伐証明が取れるように足だけを落とす。時折飛び掛かってくるやつは空中にゲートを出して消滅させた。


魔物と対峙した事により、少し冷静さが戻ってくる叶多。


殺気も少し収まってきた。


魔物の頭に囲まれて叶多は座り込む。そしてしばらくすると、フランクがやってきた。 


「大丈夫か?」


「悪い、先走った」

 

「まったく無茶しやがって。ほれ」


のクロノのスカーフを手渡すフランク。


「これで落ち着くんだろ?」


「ありがとう」

 

と、スカーフを顔に当てるが、このスカーフをクロノが身に付けてたのは随分と前だ。甘い香りも消えかかってる上に男を刺した時の血の匂いが付いている。


「女はリズとエルメスが対応してる。とりあえずギルドに連れて帰るわ。で、詳しい調査は明日でいいか?」 


「わかった」


と、フランクと村に戻った。



「みんな先走って悪かった。帰ろうか」


エルメスは叶多が怖いが、リズはポーッとしていた。


叶多はゲートを開き皆を引き連れギルドに戻った。


裏口から入り、後の処理はやっておくと言われたので明日の朝にまた来ると言い残して叶多はエスタートに帰った。


 

ギルドは終了しているが食堂はギリ閉店前だ。


叶多がギルドに入ると、ざわざわしてたのがピタッと止まり皆が息を飲んだ。叶多からまだ殺気が抜けきっていないのだ。 



「あ、カナタくん・・・」

 

エリナが気付いて声を掛けて止まる。


「ごめん、迷惑だったね」 

 

「大丈夫よ。もうすぐ閉店だから」  


と、エリナは顔が赤くなった。その時、シンシアが


「カナタさん、お帰・・・」


叶多を見てビクッとするシンシア。


あぁ・・・ 


「シアちゃん、クロノにしばらく帰らないと伝えておいて」  


と言い残して叶多はゲートに消えて行ったのであった。


自分を見て怯えたシンシア。きっとクロノも怖がるだろう。


そう思った叶多はクロノに会わずに姿を消したのであった。



ーエスタートギルド食堂閉店後ー


「シンシア、カナタくんの事怖かったの?」


「えっ、あっ。その・・・」


「カナタくん、それに気付いたわよ」


「シンシア、何があっても怯えてやるなと言ってあったろうがっ」


「ご、ごめんなさいっ。いつもの優しいカナタさんと全然違って驚いちゃって」


「カッ、カナタはどこに行ったのっ?」 


「ご、ごめんなさいっ。しばらく帰らないと女神様に伝えてくれと言って消えちゃったの」 


「どうしてよっ」


「クロノ、あれからカナタくんとどうなの?」


「え?あの、そのなんか恥ずかしくて・・・」


「やっぱりね、ここに来た時におかしいとと思ったのよね。カナタくんもクロノの事を構わないし、クロノもカナタくんから離れてでしょ?」 


「だ、だって・・・どうしていいかわからないんだもん」


「それ、カナタくんはクロノが自分に怯えてると勘違いしてるんじゃない?」


「え?」


「ほら、帰って来た時に殺気纏ってたでしょ。ここのボンクラでも分かるぐらい。で、それを見たシンシアも怯えた。クロノがカナタくんにくっつかなくなったのは前の賊討伐の後でしょ?カナタくんは怖がられてると思ってるのよきっと」


「わっ、私は怖がってなんかないもんっ」


「だって、それしか考えられないでしょ?あの殺気はきっと討伐後でしょ?一度戻って来たのにまた出て行く必要ないじゃない。明らかに帰って来たって感じだったのに」 


「わ、私が怯えたから・・・」  


シンシアは自分のせいだと落ち込む。


「まぁ、今更何を言ってもカナタくんは殺気が抜けきるまで帰って来ないわよ」


「いつもならすぐに抜けるのに」

 

「それはクロノがそばに居るからでしょ?」 


「あ・・・。でも私のスカーフを持ってるもん」


「それいつのよ?」


「前の討伐の時に渡したやつ」


「カナタくんがずっと持ってるならあんたの匂いなんてもう消えてるわよ。匂いかどうか知らないけど。殺気が消えてなかったのがその証拠よ」


「いつ帰ってくる?」 


「しばらくってのがどれくらいかわからないわ。でも帰って来るわよ。でも・・・」

 

「でも?」 


「他の女となんかしてきても怒っちゃだめよ」 


「な、な、な何よそれっ」


「あの殺気を纏ったカナタくん、魅力的だったわぁ。もうめちゃくちゃして欲しいって思っちゃったもの」


「何でそんな事を思うのよっ」


「あら、お子ちゃまにはわからないのよ。クロノもいつものカナタくんの方がいいって言うし、シンシアも怖かっただけでしょ?あれ、おこちゃまじゃない他の女がほっとかないわよ〜。で、カナタくんは禁欲生活中、その上戦いで高ぶってる。これは何があっても仕方がないわ。ね?ギルマスもそう思うでしょ?」


「だろうな」


「そんなのいやーーっ!」


「クロノが悪いのよ」


「え?」


「ちゃんとそばにいなさいって言っておいたのに、離しちゃったでしょ」


「は、離してなんかないもんっ」 

 

「離れてたでしょ。いつもあんなにベタベタしてたくせに」  


「だって、だって、だってぇぇ。あんなのが入るなんて信じられないんだもんっ」

 

「は?」


「あ・・・」


エリナはクロノの代わりに、この前あった出来事を説明するのであった。





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