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間に合って良かった

「あー、お腹いっぱい。ご馳走様でした」


「この世界の食事はお口に合いました?」


なんかの肉に塩胡椒だけだったけど、それなりに旨かった。


「大丈夫。美味しかったですよ、シンシアさん」


「シアで良いですよ。私の方が年下ですし」


「そうなの?」


「はいっ。12歳です」


・・・・小学生じゃねーか。同じ年ぐらいかと思ってたわ。俺のドキドキを返してくれ。


「ず、ずいぶん大人っぽいね?」


「そうですか?みんな似たような感じですよ」


「そういや、カナタは17歳には見えんな。シンシアより1~2つ上ぐらいかと思ったぞ」


「いや、俺の世界では普通なんだけどね」


そういや、あの汚ならしい髭も18歳とかいってたな。この世界の人は成長が早いのかもしれん。


「ちなみにこの世界の人の寿命ってどれぐらい?」


「60歳前後だろうな。怪我や病気をせずに生きてそれぐらいだ。カナタとのとこはどうなんだ?」


「男が80歳ぐらい、女はもうちょい長生きする。100歳ぐらいまで生きる人も多いよ」


「ほう、長寿だな。それにカナタは歳を取らないんだろ。シンシア、カナタの種族をハーフエルフかなんかにしとけ。あとスキルの表示も隠しておけ」


「オッケー!」


「それって偽造じゃないの?」


「問題無い。犯罪歴を隠すわけじゃないからな」


どうやら、身分証明は犯罪歴を見るためのものらしく、国の発行する身分証明、定住していない商人ギルドが発行する商人証明、ハンターギルドが発行するハンター証に別れるらしい。


で、シンシアはこの証明証の開発者で、偽造するのも容易いのだ。シンシアも偽名のようで、トーマスが他国で迫害され掛けていたシンシアを保護してここに連れてきたとのこと。この証明証システムとあの装置の利権はその国の貴族に奪われたらしい。いわゆる庶民からの搾取というやつだ。



クロノにここでしばらく世話になることと、他人と同室になることを説明しにいく。


「あれ?クロノは?」


ここにいるハンター達は下を向いて暗い表情を浮かべる。


「おい、汚い髭、さっきまでここにクロノが居ただろ?どこに行った?」


「すっ、すまねぇ・・・」


「は?何があった?」



ーカナタがギルマスの部屋で飯を食っている頃ー



「クロノ様っ!僕と付き合って下さいっ」


「えー、どうしよっかなぁ。私強い人の方がいいなぁー」


クロノは皆から食べて食べてと料理を奢られてモグモグしながら優越感に浸っていた。朝からずっとカナタにボロクソ言われていたのを取り返すかのように。


「俺の方が強いぜっ。俺とつきあえよっ」


「ほんとー?魔王を倒せるぅ?」


「あぁ、あんな奴、俺様が本気になりゃあ、ワンパンよ、ワンパンっ」


「きゃーっ!だったら魔王を倒してくれた人と付き合っちゃおうかしらっ♪」


クロノは調子に乗って、勇者達にやったことをここで繰り返していた。



「なら、俺が倒してきてやる。報酬はお前だ。それでいいんだな?」


「本当に倒せるならね。倒した証拠に私の剣の形をした時計の針を持ってきてくれたら考えてあげるわよ」


「わかった。なら、報酬は前払いだ」


「えっ?」


そう言った大きくていかつい男はひょいとクロノを肩に担いだ。


「ちょっと、ちょっとぉぉぉっ。何すんのよっ!下ろしてよっ」


「うるさい。お前はもう俺の女だ」


じたばた暴れるクロノの抵抗など全く気にせずに連れ去ろうとする男。


「まっ、まちやがれっ。クロノ様をどうするつもりだっ」


「何って、魔王を倒す褒美がこいつなんだろ?」


「魔王を倒したらだっ」


「だから貰ってくんだろ。それとも俺様とやるか?お前らごとき全員で掛かってきても俺に勝ち目はねーぞ。俺はジェイソンだ」


「ジェイソン・・・、もしかしてブラッディジェイソン・・・」


「ほう、こんな街でも俺の事を知っているか。有名人は辛いねぇ。ほら、どうした。景品が欲しいなら取り返しに来いよっ」


「くっ・・・」


「やめとけっ、相手が悪すぎるっ」


「ちょっとあんた達ーっ!助けなさいよぉぉぉぉーっ」


「す、すまん・・・。クロノ様・・俺達の力じゃ・・・」


「あーっはっはっは。ここの奴等は賢いぜ。そうそう、無駄死にするこたぁねぇ。こいつはお前らの嫁でもなんでもないだろ?それに自分から言い出したことだ。お前達が俺に斬りかかったら俺は正当防衛でお前らを殺しても罪にとわれんからな」





「すまん、ジェイソンというやつにクロノ様を拐われちまった」


「はぁ? お前ら強そうなのは見てくれだけかよ」


「どうするんだカナタ?」


心配そうにトーマスがカナタに尋ねる。


「あーもうっ!あいつが蒔いた種だけど、あいつが居ないと帰れないからな。助けに行って来るよ」


「なら、部屋に来い。ジェイソンが本当にブラッディジェイソンならかなりヤバイ。丸腰で行くな」


と、ギルマスのトーマスに言われて部屋まで行き、短剣を借りる。普通の剣は叶多には扱えそうに無い。


「で、居どころはわかるのか?」


「ワープであいつを指定したら行けるから大丈夫だ」


「なら、俺も付いていってやろう。ギルドでの出来事は俺にも責任があるからな」


「ありがとう、助かるよ。俺は戦闘能力がないからね。ワープ、クロノっ」


ブオン


「なにもないぞ?」


あれ?俺にしか魔法陣見えないのか?


「あ、シアちゃんは付いて来ないでね。勝手に入ってきてるの知らずに俺がゲートから出たら亜空間に閉じ込めてられるかもしれないから」


興味本位でこそっと付いて来そうなシンシアに釘を刺しておく。




「あ、あんた。こんなところに連れてきて女神に何をするつもりなのよっ」


「へっ、自分で自分の事を女神というか?ま、別に女神なら女神でもいいわ。女神とやれるなんて貴重な体験だからな」


「ま、まさかあんた本当に私に悪さするつもりなのっ」


「当たり前だろ?なーに、ちゃんと約束通り魔王は倒してやるよ。へっへっへっ」


「いやぁーーーーっ!あんたになんか触られたくないっーーーっ」


「いいねぇ、いくらでも喚け。どうせ誰も助けに来なねぇんだからな。さっきの奴等もお前の事を見捨てたろ?」


「いやぁーーーーっ! カナタっ!カナタ助けてっーーーー!」


「誰も助けに来ねぇって。観念しろやっ」


ビリビリっ


「いやぁーーーーっ。カナターーっ」


ブオン


「呼んだか?」


「わっ、いきなりなんだてめぇっ」


ドンっ


服をビリビリに破かれたクロノはジェイソンを突き飛ばしてダッシュで叶多に抱き付く。


「遅いわよっ!」


ぐすっ ぐすっ


泣きながらカナタにそう叫ぶ。


「知らねえよっ。お前が勝手に拐われたんだろ?犬に噛まれたと思って忘れろ」


「まだ噛まれてないわよっ」


一緒にゲートを出たトーマスはジェイソンと対峙してくれている。


叶多は飄々とクロノに話し掛けた。が、腹の底ではクソ女とはいえ、今はただの女の子であるクロノを酷い目に合わせようとしたジェイソンという野郎にぶちギレていた。


胸元が破けたクロノに自分のシャツを脱いで着せてやる。


(まだ噛まれてないか・・・。間に合って良かった)


「ギルマス、こいつはこの世界ではどういう罪になるんだ?」


「お前の女を拐ったんだ。お前が攻撃をするのは許される。が、反撃は覚悟をしろ。こいつは本物のジェイソンだ」


「誰かと思ったらトーマスか。ずいぶんとくたびれたなぁ、おい」


「うるせぇっ」


俺の女・・・。違います。被害者です。まぁ、それより、


「おい、ジェイソン。お前なんでクロノを拐った?」


「はぁ?魔王を倒した景品なんだろ?そいつは」


「ほう、なら魔王をすでに倒したんだな?」


「いや、前報酬ってやつだ」


「なら、こいつが欲しがったら魔王を倒して来いよ」


「はっ、どこにいるかわからん魔王をどうやって見付けるんだ?」


「俺が連れてってやる。だから倒して来い。見事倒せたらこいつはお前の者だ」


「ちょっ、ちょっとカナターーっ!何勝手に約束してくれちゃってんのよっっ」


「はぁーーっ?お前が言い出したんだろうがっ!女神なら約束ぐらい守れっ」


「あいつが本当に魔王倒したらどうすんのよっ」


「そんときゃ大人しく噛まれろっ」


「嫌よーーーっ!」


「うるさいっ!だったら軽々しくそんな事を口に出すなっ!」


「何よっ!私がこんなやつに弄ばれてもいいわけっ?」


「知るかっ。俺はとっとと元の世界に帰りたいんだっ!」


「キーーーーっ!」


泣いてたクロノは叶多の胸をドスドス殴る。


「止めろっ」


ベシっ!


カナタはクロノにチョップを食らわした。


「おいおいっ、何をごちゃごちゃやってんだ」


俺達を見て呆れるトーマス。


「あ、すまんすまん」


慌てて叶多はマップを開き、魔王の近くにゲートを設定した。


「ワープ」


ブオン


「おい、強姦魔、さっさと付いて来いよ」


「誰が強姦魔だっ」


「お前に決まってるだろが。怖いなら止めとけ。今から本当に魔王の所に連れてってやる」


「ほう、お前、転移魔法を使えるのか。そいつぁ、貴重だな。魔王を倒したら俺の下僕にしてやる」


「ちょっとぉーーっ!カナタは私の下僕なのよっ」


「誰がお前の下僕たっ」


「女神の為なら下僕でもなんでも良いって言ったでしょーーっ」


「それは俺じゃねーって言っただろうがっ」


またギャーギャー言い合う二人。


「カナタ、早くしろ」


「あぁ、ごめん。クロノ、お前はここで待ってろ」


「嫌よっ。また変なのが私に寄ってきたらどうすんのよっ」


「お前、走れんだろうがっ」


「は、走れるわよっ」


「たったら、途中で音を上げるなよ。走らないと閉じ込められるからなっ」



こうして、叶多達4人は魔王の元へと向かうことになった。


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