また賊討伐
叶多が帰ろうとした時にテトラ達が戻って来た。
「あっ、カナタだ。昨日フランク達と討伐行ってたんだよねっ。凄かったらしいじゃん」
「別に凄くないよ。フランクとナタリー強かったし」
「まだ時間あんだろ?ちょっと話を聞かせてよっ」
思ったより早く終わったからままぁいいか。
と、ギルドの食堂で遅めの昼飯を食うことに。
「リズ達は何してたの?」
「魔物狩り。今回はでっかいトカゲ。木こりから討伐依頼結構あるんだよ」
へぇ、そんなのいるんだ。
「カナタがいればもっと持って帰れたのに。結局3匹しか持って帰れたなかったんだよな。10匹ぐらい倒したのに」
「討伐は証明はどこ持って帰るの?」
「右前足。コレが結構重いし、肉と牙の毒も売れるから本体ごと持って帰りたいんだけどね。あーあ、もったいない。ねぇ、カナタうちのパーティに入りなよ」
「楽しそうだね。でも魔王倒さないとダメだしね」
「ちぇっ。あれ?あの娘は?」
「体調悪くてエスタートのギルドに預けてきた」
「へぇ、離れる事もあるんだね」
「あそこは安全だし、トーマスがいるからね。唯一預けられる所だよ」
と、料理が運ばれて来たので食べる。俺は本日のおすすめってやつにしてみた。
リズ達はガッツリ牛肉だ。
「これなんの肉だろ?鶏にしては歯ごたえがしっかりしてるし、筋肉質だね」
「あー、それ多分私達が狩ってきたトカゲだよ。結構いけんだろ?」
「あぁ、旨いよ。リズが狩ってきたやつだと思ったらなおさらね」
「はっ、恥ずいこと言うなよっ」
「お前、何赤くなってんだよ」
「うるさいニック、お前はさっさと自分の食えよっ」
と言われた斥候のニックが肉を切ると血の臭いがしだした。ヤバいっ
ポケットからスカーフを出してスーハースーハー。
「カナタ、何やってんのさ?」
「いや、ちょっと鼻がむず痒くて・・・」
「女物のスカーフで鼻かむの?」
「いや、これはその・・・」
「もしかして、あの娘のスカーフの匂いを嗅いでるんじゃ・・・」
「あははは・・・」
「うわっ、あんたそんな事してんのっ?」
「ちっ、違うんだよ。俺、こう血の匂いがしだすとダメでね、クロノがいると平気なんだけど、いない時はこういうのが無いと・・・」
「匂いフェチってやつ?」
「違うっ。多分、他の人にはなにも匂いしないからこれ」
というとパッと奪い取って匂いを嗅ぐリズ。
「こ、これあんたの匂い?」
「え?」
と奪い帰してフンフンするけどわからない。
リズは近寄って叶多の首元に顔を近付ける。
「なっ、なんだよっ」
「スカーフと同じだからそれ。あんたの匂いしかしないよ」
そう言われてスンスンするも微かにクロノの甘い匂いしかしない。これ、俺の匂いなのか?
「なぁ、リズ、俺って甘い匂いした?」
「あ、甘い匂いなんてしてねぇっ」
「リズ、お前何赤くなってんだ?」
「うるせぇっ。お前はとっとと食えっ」
お前もさっさと食えとニックに言い返されるリズ。
「カナタ、フランクから聞いたが、お前凄い殺気を放つらしいな。フランクとナタリーが引いたぐらいだから相当だろう?」
「なんか昨日の俺、怖かったらしいね。自分ではよくわかんないんだけどね」
とテトラに答える。
「私もどんなのか見て見たいな。今度、賊討伐を受注したら一緒に行こうよ」
「まだいるの?」
「あんな奴らウジャウジャ居るって。待ち伏せする奴ら以外にも、村とか襲って殺しや女拐ったりする奴らもいるんだから」
と、リズが言った時に叶多の殺気がブワッと膨れ上がる。
「いいよ、そいつら殲滅しに行こう」
「えっ、あ、う、うん」
こうして年内はちょくちょくゴーレンに来ることを約束して、叶多はエスタートのギルドへと向かった。
「おいリズ、何ぼーっとしてんだよ?」
「えっ、あ、うん」
「リズ、人の旦那に惚れちゃダメよ」
「ほ、惚れてなんかねぇっ」
「カナタさん、お帰りなさいっ」
「ただいまシアちゃん」
「クロノはどう?」
「エリナさんがご飯持って行った後はずっと部屋ですよ」
「ありがとうね。様子を見て連れて帰るよ」
コンコンッ
「お、お帰りっ」
「ただいま。まだ顔が赤いぞ。大丈夫か?」
「だ、大丈夫」
「じゃ、帰ろっか。おぶさる?」
「あ、歩けるから大丈夫」
まだダメそうだな・・・。
と二人はシンシアとエリナに挨拶してベリーカに戻る。
「なんか食べたい物はあるか?」
「な、何でもいい」
ということでなので、ご飯と簡単なおかずにしておいた。
「じゃあもう寝ろ。明日からどうする?しばらくエスタートにいるか?」
「ど、どうしようかな」
「まぁ、後2〜3日したら向こうで生活になるから行っとけ。着替とか用意しとけよ」
クロノがギクシャクしたまま3日が過ぎ、リフォーム工事が入ったので二人はエスタートにしばらく住むことになった。
「じゃ、行ってくる」
と、エスタートに来てから叶多は一人で仕事に行く。あちこちで嫁さんは?と聞かれるので体調がねと答えると、必ずおめでたか?となる。
「いやぁ、違うと思うよ」
違うも何も、そんなわけあるはずがない。というか俺、無意識でそんな事をして覚えてないとかじゃないだろうな?
ゴーレンに納品に行くとフランク達とリズ達がいた。
「カナタ、これ受けたぞ」
内容は神出鬼没の盗賊団。村を襲ってるやつだ。
「どこに出るの?」
とフランクとテトラが地図を広げ、今まで襲われた村とその日付を教えてくれる。
「この動きからするとアジトはここか、ここらへんだと思うんだがな」
「わかった。今から行く?」
「いいのか?」
「すぐに着替えて戻ってくるよ」
と、カナタはエスタートの宿舎に戻り着替えた。
「ハンター業務?」
「あぁ、フランク達を目的地に連れて行ってくる」
あれから叶多はクロノにあまり近寄らない。クロノも気恥かしくて叶多にくっつきにいかない。そんな日々が続いた後にハンター業務に行くという。
「いっ、一緒に行こうかな」
「いや、ここで待ってて」
と、叶多は言い残してすぐに消えて行った。
クロノは凄く寂しい気持ちに襲われる。叶多があまり自分に構わなくなったのは、自分が叶多に近付かないのに気付いたからだろう。
「お待たせ」
「よし、じゃここから頼む」
と言われた場所にワープ。
「ちっ、外れだな」
賊が潜みそうな所を探すも何も痕跡が無いので次へ移動、そして次へと移動していく。
「読み違えか。こりゃ見当付かねぇぞ」
「村を襲う時は馬かなんか使うのかな?」
「多分な」
「アジトを持たずに移動し続けてるとかは?」
「いや、女拐ってるから拠点はあるはずだ」
叶多は自分のマップを出して、フランク達の地図と見比べる。
あ、フランク達は何もないことになってるけど村がある。これは・・・
「ここって村かなんかある?」
「小さい村だと地図に載ってなかったりするからな」
「ここに行ってみよ」
と移動して、周りから様子を探る。
「普通の村だな」
確かに見た目は普通の村だけど・・・
「村って子供はあまりいないの?」
「あ、言われてみれば、確かに子供が少ねぇな。しかし、たまたまって事もあるからなぁ」
「潜入しようか?」
「潜入?」
「もうすぐ日が暮れるだろ?泊めてくれるか聞きに行こう。それで反応見たら?」
「そうだな。じゃ向こうの道に移動してそこから徒歩で行こう」
7人パーティは徒歩で地図にない村に向かって歩く。
「すいません、クエストの途中なんですけど、今晩ここに泊まらせてもらえませんか?」
「おや、ハンターさんたちかね。ご苦労さん。おもてなしは出来んが、泊まっていくぐらいなら構わんぞ」
拍子抜けするぐらいあっさりと受け入れてくれた村人。
そして納屋を借りてそこに泊まることに。
「ここ普通の村かな?」
「いや、多分当たりだ。この規模の村にしては馬が多すぎる」
村の規模と馬の数とか知らんからな、俺。
「どうすんの?」
「馬に乗られると厄介だな。それと賊と被害者の区別が付かん。万が一普通の村なら俺達が加害者になるしな」
「夜遅くに寝たフリして俺が様子を見てこようか?ここが賊の村なら俺達を見張ってるだろう?なら俺がワープで調べに行くのが都合がいい」
「わかった。一人で無茶すんなよ」
「了解」
叶多は人目に付かない家の裏にワープして様子を探る事にした。