一緒にいると暖かい
「おう、紹介すんぜ。こいつが俺の相棒、ナタリーだ。で、コイツらが別のパーティのメンバーでな。まぁ、たいてい一緒に活動してるんだ」
と、フランクがメンバーを紹介してくれる。
フランク/剣士
ナタリー/短剣(女性)
テトラ/大剣(盾役)
ニック/斥候
リズ/魔法使い(女性)
エルメス/ヒーラー(女性)
メンバーはこんな感じだった。全員Bランクらしい。
「こいつが前に話してた商人兼ハンターのカナタ。かわい子ちゃんは奥さんのクロノだ」
「どうも。Cランクハンターのカナタです。嫁のクロノは登録だけしたFランクです」
「ん?カナタ、お前この前会った時はFランクって言ってただろが?」
「賊討伐した時にほとんどが国の賞金首だったみたいで、一気に上がったんだよ。依頼受けてクエスト達成したの4回だけだよ」
「マジかよ。そんな一気に上がるなんてどんな奴らだったんだ?」
「よく知らないけど、依頼料と懸賞金で金貨150枚貰ったからね」
「かぁーっ、ツイてんなお前。そんなお宝クエスト見つけるとはよ」
「たまたま知り合いの奥さんがそいつらに拐われてね、取り返しにいった時に不意打ちで倒しただけだよ」
と、そんな話をして、どこに運んで何を荷物として持って帰るのか聞いてみる。
(デスボアが溜まってる場所を見付けたんだ。でよ、倒しても持って帰れんの1匹とかだろ?もっと持って帰りてぇんだよ)
「何で小声なの?」
「しっ、他の奴らに聞こえんだろが」
「デスボアならうじゃうじゃいるところあるよ」
「は?どこだそれ?」
「魔族領」
「そんな恐ろしいとこ行けるかっ」
やっぱりそうなんだ。
フランクは周りを見回して地図を出す。
「ここまでどれぐらい掛かる?」
自分でもマップを出して位置を確認。
「ここなら多分10mぐらいになるよ」
「マジかよ?」
「多分ね」
「一日に何回使える?」
「別に何回でも使えるよ」
「そっ、そんなわけないじゃないっ」
と叫んだのは魔法使いのリズ。ボーイッシュな女の子だ。
「いや、本当。もしかしたら制限あるのかもしれないけど、それに引っ掛かったことないよ」
「転移魔法って膨大な魔力を使うのよ。そんなに何回も使えるわけないじゃないっ」
「魔法じゃないからじゃない?」
「え?」
「俺、魔法使えないし」
「あなた能力者なの?」
「何それ?クロノ知ってる?」
「知らない」
「能力者っていうのは選ばれた存在の事を言うのよ。例えば勇者とかね」
「あー、そういうことか。なら俺は能力者だね」
「マジで?」
「マジだよ」
「お前らカナタは合格でいいか?」
「それが本当なら願ったり叶ったりよ」
「これいつ行くの?」
「すぐにでも行きたいんだがな」
「じゃ、明日にしてくれる?荷車買わないと」
「は?お前持ってんだろが?」
「あれは食品とか酒とか運ぶやつだからね。魔物の死骸とか賊の首とか運ぶわけにはいかないよ」
「別にいいじゃねーか。酒も樽に入ってんだろ?」
「ダメだよ。血の匂いも付くし。それに生首運ぶのに必要だと思ってたから別にいいよ」
「なんだ、お前は賊討伐メインで依頼受けるつもりか?」
「メインじゃないけど、依頼出てたら受けると思う。あいつら魔物よりタチが悪いから殲滅する必要がある」
「ここで魔物狩りやってた方が儲かるぞ?そんなに懸賞金が掛かってるやつばかりとは限らんからな」
「まぁ、とある人からそう言われてね。俺もそうだよなと思うからいいんだよ。金は商売でも儲かるし」
「そうか。まあそれぞれのスタイルだからな」
「了解。じゃぁ、明日朝イチにここでいい?」
「いいぞ」
「あと報酬は?」
「全員で山分けだ」
「俺は運ぶだけだよ?」
「いや、すぐにその場に行けて、倒したもの全部持って帰れるんだ。山分けは当然だ」
「わかった。クロノはカウントしなくていいよ。こいつ何も出来ないから」
「それなら、ここで待ってた方がいいんじゃねぇか?」
「べた惚れしてるから片時も離したくないんだよ」
「けっ、やっぱお前が惚れてんじゃねーか」
「そうだね。毎日ドキドキしてるよ」
と、冗談めかしておいた。
ドワーフの国に移動してドグの所へ。
「お、仕入れか?」
「いや、人用の荷車を追加で買いに来たんだ」
「ん、前のは調子悪いのか?」
「いや、魔物の死体とか討伐した賊の生首を運ぶ専用の奴を買おうかと思って」
「わざわざ分けるのか?」
「血の匂いの付いた荷車で食品や酒とか運びたくないんだよ」
「随分と生真面目だな。そんなの気にする奴はおらんだろ?物が血塗れとかなら別だがな」
「俺が嫌なんだよ。あの血の匂いってやつが」
「ほー、そんなもんか。なら在庫があるから持ってけ。女神さんの椅子はどうする?」
「いや、血の匂いが付いた所にクロノを乗せたくないからいいよ」
「んー、ならちょっと待て。いい方法を考えてやる」
と、荷車を工房に持って行った。ドグはクロノが歩きたがらないの知ってるからな
従業員の人にお茶を出してもらって店で待つ。
「これでどうだ?」
と持って来てくれたのは荷車を引く所にクロノが立つ為のステップが付いていた。
荷車を引いてそのステップに足が当たらないように調整して完成。クロノは俺の肩に捕まって立つスタイルだ。ステップに乗ると前が見えるように俺の頭をより高くなる。足を開いて乗る必要があるが、ハンター活動の時はズボンを履かせるので問題ないな。
「うわー、目線が上になるっ♪」
クロノも喜んでいるからこれでいいな。
「ありがとうドグ。全部でいくら?」
「金貨8枚だ。ステップはサービスしといてやる」
「いつもありがとうね」
「いや、お前のお陰で潤ってるからな。また頼んだぞ」
了解と告げてザイルの所で酒樽を10仕入れ。またストックしておかないと。
それを持って帰って、5つ乗せてベリーカの酒場へ。
「お、全部置いてってくれ」
「そんなに出てるの?」
「気温下がって来たからな。火酒はこれからもっと売れるぞ」
「他の酒も仕入れてみる?」
「どんな酒だ?」
「強さはワインと同じぐらいかな。ここの人の口に合うかどうかわからないけど、俺は好きなんだよ。スッキリ系と甘口系が合ってね。魚料理とかに合うよ」
「いくらだ?」
「その酒の方が仕入れは高いんだけど、ややこしいから火酒と々値段でいいよ」
「どこの酒だ?」
「ハポネって所の酒。多分他に流通してないと思う」
「ほう、それなら希少価値高そうだな。サンプルあるか?」
「なら戻って取ってくるよ」
「それ常連に飲ませてみて反応みるわ。あ、あとその荷車なんだけどよ、そこそこ問い合わせあんだよ。馬で引くでかいのもあんだろ?」
「あるよ」
「お前に取り次いでやろうにもタイミング合わねーから商業ギルドに窓口になってもらったらどうだ?」
「そんな事出来るの?」
「手数料取られっけどな。金の受け渡しと納品したら預かってくれるから楽だと思うぞ」
「そうなんだ。いい情報ありがとう」
「いや、また珍しい酒あったら持ってきてくれ」
ということなので商業ギルドに移動。
手数料は1台あたり売値の5%。どんな物かサンプルが合ったほうがいいと言われたのでまたドグの所へ。
「ほう、なるほどな。なら両方持ってけ」
「これ色々な人に弄くられるからもう売物にならないよ」
「構わん。後で中古で出してもいい。数が出るならその方がいいからな。大型に小型を乗せといてやる」
と言われてそのまま持ち帰り。家に寄って日本酒の瓶を持ってまずは商業ギルドに。職員に手伝ってもらって小型を降ろす。
「ではお預かり致しますね。大体月に一回お越しになるということで宜しいですか?」
「はい。それでお願いします」
次は飲み屋に行ってハポネ酒を渡す。
「ほう、旨いな」
「ハポネは海に囲まれててね、海の魚とよくあうんだよ。後は醤油や味噌味とか」
「海の魚は仕入れられるか?」
「その時にあるかどうかわかんないけど。それに魚の種類を決められると無理かな。後は鮮度の問題だね。クーラーがあるといいんだけど」
「クーラー?」
「魚を冷してとくものだよ」
「なら、冷蔵の魔道具使えばいいんじゃないか?運搬用のあるぞ」
と業務用の店を紹介してもらい、購入した。個人で使うのも。
帰りにゴーレンの食堂に収める野菜と小麦を購入して終わり。
「はぁ。働いたね。昼飯食うの忘れてたよ。どっかに食べにいく?」
「フライドポテトがいいな」
「また揚げ物?」
「んー、じゃがいもが食べたい」
ということで、外食でなく家で肉ジャガを作る。これだけだと少し寂しいので半熟卵をいれた。
「うんうん、甘くて美味しい」
と日本酒をクピクピ飲む。テレビもスマホもないから食事の時は自然と会話が増える。元の世界では親父に飯の時ぐらいスマホ見るなって毎日怒られてたな。
そんな事を思ってるとクロノがニコニコしながら聞いてくる。
「カナタ、私の事を一時も手放したくないの?」
今日ずっと機嫌が良かったのはこれか。
「お前を一人にしておいたら魔物とか良からぬ奴が寄ってくるからな」
「心配?」
「当たり前だろ?お前は自分の身を守れないんだから
「んふふふふ」
「もう酔ってるだろ?」
「酔ってないよ」
「嘘つけっ。あ、これからハンター業務に行くときはズボンと歩きやすい方の靴だぞ」
「えー、可愛くない」
「他のメンバーもいるんだ。パンチラしたりポヨンしたら見られるぞ」
「それはイヤ」
「だったらハンター用の服だからな」
クロノは肉ジャガのお代わりと甘口の日本酒でご機嫌だ。それはいいけど、そのフォークの持ち方なんとかして欲しい。よくあんなので食べられるよな?
眠くなる前に風呂に行かせる。今日寝てたら一緒に入ってやるからなと言っておく。もしそんな事になったら間違いを起こすかもしれないからしないけど。
その心配をよそにちゃんと出て来たから自分も風呂に。
はぁ、そろそろ風呂の工事だな。あの風呂楽しみだよなぁ。
と、今日は血の匂いもしないのでご機嫌で風呂から上がるとクロノが俺のベッドで寝ている。
あーっもうっ。
叶多は寝室に連れて行こうかと思ったがそのまま一緒に寝ることにした。昨日寝てないから寝れそうだし。
クロノは俺が暖かいと言ったが、俺もクロノがいると暖かいのだ。