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苦いものは叶多に

叶多はお土産を持って火酒を作ってるザイルの所へ。


「おう、相変わらず仲いいなお前ら。もうこの前の酒売れたのか?」


「今日はお土産持って来たんだよ。ハポネってとこの酒を2酒類。こっちがスッキリ系、こっちが少し甘い系。米で作ったワインって感じかな」


「米のワイン?」


「火酒より弱いけど旨かったからお土産に買ってきたんだ。他所の酒飲んでみるのもいいだろ?あとこれはつまみ。この酒に合うと思うから試して」


「そうか、悪いな仕入れて貰ってる立場なのによ」


「そんな事いわないでよ。ザイルが初めに俺を信用してくれたから商売が回りだしたんだから」


「そうか、そういってくれるならありがたく頂こう。ありがとうよワシを廃業させんでくれて」


「廃業なんてさせないよ。火酒は引っ張りだこの稼ぎ頭なんだから」


「おう、これからもバンバン売ってくれ」


「売るけど、ちょっと商売に使う時間を減らそうと思って」


「ん?何か他にやるのか?」


「強くなろうと思って。魔王を倒せるぐらいに」


「そうか、そっちの道へ進むか」


「うん、魔王がいつ覚醒するかわからないからなるべく早めに倒したいと思ってね」


「なら、ワシが武器家を紹介してやろう。気難しいやつで気に入った奴にしか売らん変わり者じゃが、腕はいい」


「俺、この短剣も借り物だし使ったことないんだけど」


「なら尚更じゃ。腕の未熟さを武器の性能で補え。ワシの紹介ならなんとかしよるじゃろ。それなりに高く付くがな」


「わかった。また改めて来るからその時にお願いする。ありがとうね」


「頑張れよ」


「うんっ」



次はドグの所へ。


「おー、異国の酒か。そいつぁ楽しみだ。つまみも早速いただくぜ」


「あとさ、2人乗り用のキックボード在庫ある?」


「あるぞ。1台でいいか?」


と購入して、次はエスタートのギルドへ。


「あっカナタさん。お帰りなさいっ」


シンシアはいらっしゃいじゃなくていつもお帰りなさいと言ってくれる。ここは俺にとっても始まりの地なのだ。


「旅行に行って来てね、お土産持ってきたんだよ。トーマスいる?」


「旅行かぁ。いいなぁ」


「冬になったらトーマスとかも連れて一緒に行こうか?」


「連れてってくれるんですかっ」


「他にドワーフの職人とかも一緒だと思うけど。冬になったら蟹が食べられるんだって。大きなお風呂とかもあるらしいよ。そこから海も見えるし。雪も積もるって」


「蟹?」


「食べたことない?俺はめっちゃ好きなんだよね。今回も魚めちゃくちゃ食べてきたし」


「わぁー、早く冬にならないかなぁ」


「楽しみだね」


「はいっ。じゃギルマス呼んできますねっ」


「じゃ、食堂にいるから」


と、食堂には酒、味噌、昆布、ワカメとかもっていく。


「わぁ、カナタくんありがとう」


「商品で使ってくれてもいいし、自分で食べてもいいし。好きに使って。次から商品で使うなら仕入れてね」


「昆布とかワカメってどうやって使うのかしら?」


ということで、干物を焼いて味噌汁を作っていく。味噌汁は昆布のみ、鰹のみ、昆布と鰹の両方の3種類。具は全部ワカメのみだ。


「あー、なるほど。この昆布で出汁を取ったら味に深みが出るのね」


「昆布出汁は色々と使えるよ。鰹節もね。こうやって出汁をとった後も食べられるんだよ。こうやって小さく切って、醤油と砂糖でじっくり煮てやるといいよ」


「今度やってみるわ。あとこの干物と米のお酒美味しいわっ!」


「でしょ?俺達も旅行でさんざん飲んだよ。干物もたくさんあるから、職員の人達に作ってあげて」


「わかったわ。ありがとうね」


と、そんな話をしているとトーマスがやって来た。


「旨そうなもん食ってるな」


「ギルマスも食べるかしら?」


「おうっ。シンシアもこっちこい。土産食うぞ」



「美味しいっ」


「カナタ、どこに行ってたんだ?」


「ハポネって国だよ」


「どんな所だ?」


「島国でね。行ってたのは猟師町とかだよ。魚がめちゃくちゃ美味しくてね。そこの酒とめちゃくちゃ合うんだよ。トーマスも仕事が終わったら飲んでよ」


「いや、今飲む」


と仕事中にも関わらず干物でいっぱいやるトーマス。


「お、こりゃいかん。飲み過ぎるな。早めに仕事片付けるから絶対に残しとけよ」


「ハイハイ。大丈夫よカナタくんが大量に持ってきてくれたから」


そんな話をしている隙にシンシアがこそっと酒を飲もうとしてトーマスに小突かれていた。


「トーマス、ちょっと相談があるんだけど」


「なら部屋で話すか。シンシア、飲むなよ」


「ちょっとぐらいいいでしょ」


「ダメだ。俺の分が減る」


と冗談めかしていうが、シンシアはまだまだ未成年だからな。



「ほう、賞金首を殺した後からねぇ。まぁ、戦いと縁が無かったカナタなら当然だな」


「克服出来るかな?」


「頭でああいうやつらは死んで当然と解っててもそうなるなら、慣れるか、無理かのどちらかだ。ダメな奴はずっとダメだからな」


「無理かな?」


「早く結論付けたいなら、思いっきり返り血を浴びてどうなるかだな。まぁ、こいつは賭けだから勧めはせん。下手したら返り血を浴びたときに心が壊れる」


「俺は一番心配なのは俺が動けなくなってクロノを守れない事なんだ。常に動じない心ってどうやって鍛えればいいかな?」


「戦いに女神さんを連れていくつもりか?」


「出来れば安全な場所で待ってて欲しいけど」


「女神さん、カナタが討伐に向かう時にはここにいろ。女神さんが付いてたらカナタまで危ない。俺がカナタの替わりをしてやる」


「わかった。私が一緒だとカナタが危ないのよね」


「そうだ。カナタには実践経験が圧倒的に少ない。女神さんを守りながら戦うなんて自殺行為だからな」


「わかった」


「あと、カナタは誰かとパーティーを組め」


「俺、ハンターに知り合いいないよ」


「ここの奴等は無意味だからな。例えばゴーレンである程度活躍出来てる奴とかだな。まぁ、あそこは最低Cランクは必要だからそこに上がるまではここで賊か弱い魔物討伐をしてランクを上げろ」


「わかった」


「武器はどうする?その短剣をそのままくれてやってもいいんだがな」


「火酒作ってるドワーフの職人が武器職人を紹介してくれるんだって。腕の無さはいい武器で補えって」


「そりゃ理あるな。どんな武器にするんだ?」


「全くわかんない」


「チンピラはどうやって倒した?」


「転移スキル。ワープゲートにはめて殺した」


「前に言ってたやつだな。よし、どんな具合か見せてくれ。俺も行くから女神さんを連れて来てもいいぞ」


「わかった」


「なら盗賊討伐やるか。お前がどんな症状が出るか見といた方がいいしな」


「あ、クロノが居ると出ないと思う」


「は?どういうことだ?」


「血の臭いがしてきたときも、クロノの匂いを嗅ぐと収まるし、悪夢も見ない。震えが来てもクロノがいると止まるんだ」


「お前、女神さんの匂いを嗅いでんのか?」


「う、うん」


「変態だな」


「うるさいなっ」


「まぁ、それで収まるなら女神さんが身に付けてたものをもっとけ」


パンツ握って寝てたとは言えない。クロノも言わないでという目をしている。


「じゃ、明後日また来るよ。盗賊討伐の依頼って今出てるの?」


「おう、ちょうどいいのが出てるからな。明後日決行でいいな」


「わかった」


「早めに仕事終わらせるから、ここで飯食ってけよ。で、宿舎に泊まれ。今なにやってるか聞かせてくれよ」


「わかった」


というとこで食堂でだし巻きオムレツとかの準備をしていく。四角いフライパンとかどっかで作ってくれるかな?


「クロノ、なんか食べたいものあるか?」


「まだ食べたことないもの作って」


食べたことないものか。中華とか作ってなかったな。酢豚とかでいいか。材料全部あるし。


「カナタくん、これなぁに?」


「酢豚って料理。豚でも鶏のササミとか使ってもいいし、肉を細かく刻んで肉団子とかにしてもいいよ」


と、ちゃっちゃっちゃと作っていく。クロノが待ってるからだし巻きオムレツを先に出してやるか。日本酒のつまみになるだろう。


「これ、オムレツよね、具は入れないのかしら?」


「このまま食べるんだけど、ネギとか大葉とか入れてもいいよ」


シンシアも来たみたいので、取り合いにならないように一人前ずつ作っていく。


「あら、美味しいわね」


「ちゃんとした料理が出来るまでのおつまみだね。さっきの酒と合うと思うよ」


他のハンター達らの注文をさばきながらつまんでは飲んでいくお姉さん。見事だな。


お、トーマスも来たから酢豚作って持って行こう。


ハンター達はクロノとシンシアをチラチラ見ているがトーマスがいるから声を掛けられない。新人っぽいのが近付こうとしたら止められていた。


「クロノ、これ食ったことないだろ」


「これなに?」


「酢豚。お前酸っぱいの好きだろ?」


プスッとフォークで刺して食べるクロノ。


「うん、甘くて酸っぱくて美味しい♪」


「どれどれ、おっ、これ旨ぇな。おいビールくれ」


「カナタさん、これも美味しいですっ。さっきの玉子も」


「シアちゃんは嫌いなものないんだったっけ?」


「はいっ」


「嘘つけっ。ならこの緑の食ってみろ」


「た、食べれますよっ」


めっちゃ嫌そうな顔をして食べるシンシア。


「次はニンジンもな」


「お、美味しいですよっ」


「シアちゃん、嫌いなもの無理して食べなくていいよ」


ふと見るとクロノも肉と玉ねぎしか食べてないじゃん。


「カナタ、シンシアは子供だからなこういうの苦手なんだよ」


「好き嫌いのある野菜だからね」


「ピーマンとか旨ぇのによ」


「トーマスはピーマン好きなんだ」


「あぁ、ニンジンはどっちでもいいけど、ピーマンは好きだぞ」


「いつもどうやって食べてるんだ?」


「焼くだけだが?」


「じゃ、ちょっと待ってて。酒のつまみになるように作って来てやるよ」


叶多が作ったのはピーマンの揚げ浸しと胡麻油と醤油で炒めたものだ。揚げ浸しは日本酒、胡麻油醤油炒めはビール。親父が好きだったやつだ。


「おっ、こりゃ旨い。先にビールに合うこっちだな」


胡麻油醤油炒めは食欲をそそる匂いがする。クロノはプスッとトーマスの皿のピーマンにフォークを刺して一口かじり、残りを俺の口の前に持ってくる。


「かじったらちゃんと食えよ」


「美味しそうな匂いしたけど苦かったんだもん」


そういうのでそれを食べる叶多。


「カナタさん、女神様にあーんして貰ってる・・・」


「ちっ、違うよ。こいつの食べ残しなんて捨てる事になるだろ。食べ物は粗末にしちゃダメなんだからね」


「カナタさん、女神様の食べかけを食べるの?」


「まぁ、クロノ食いかけぐらい平気だよ」


この前はりんご飴のリンゴだけ食わされたしな。


シンシアもトーマスの皿からピーマンを取って一口かじり、叶多の前に持って行こうとしてトーマスに食われた。


シンシアはプイッとむくれたが正直助かった。もうハンター達の視線が刺さってるのだ。


クロノはその間せっせと酢豚の肉だけを食っていた。

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