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初めてクエスト

酒をベリーカの家に置いてハポネの漁港へ。


なんか騒然としてるけど何かあったのかな?


「おいっ、早くしろっ」


そんな男達の叫び声と子供の鳴き声が聞こえてくる。


「どうかしたんですか?」


「なんだお前らはっ」


殺気だつ日に焼けたいかつい男達。多分ここの漁師達だ。


「今日ここで昆布を売ってもらう事になってたんだけど」


「それどころじゃねえっ」


と怒鳴られた。



皆が集結しているところに行ってみる。これはただ事ではなさそうだ。


「早く持ってこいっ」


「父ちゃんっ 父ちゃーん」


血だらけの男に泣きすがる子供。そしてその男にポーションをかける漁師連中。


「ドンガっ?」


血塗れの男はキルトのお父さんのドンガだっ


「どけてくれっ」


漁師達が使ってたのは下級ポーション。それでは効き目が薄いようだ。


中級ポーションをかけ、様子を見てもう一本追加。そこでドンガは意識を取り戻す。


「どうしたっ?何があった?」


「か、カナタ・・・だっけか」


「そうだ。今日昆布とか取りにくる約束だったろ?」


「悪ぃ、急用が出来ちまった。俺は行かなきゃならん」


立ち上がってフラつくドンガ。血を失ったからだろう。


「どこに行くんだよっ。そんな状態じゃ無理だっ」


「うるせぇっ、アイツが・・・アイツが拐われちまったんだよっ」


え?


「アイツって?」


「嫁のミラだ。くっそー、アイツらめっ、ブッ殺してやるっ」


あの奥さんが拐われた?


「な、何があったんだよっ」


ブッ殺しに行く前に水分を取れと水を持ってきてもらう。その間に事情を聞くと、昨晩お祭りでミラにちょっかいかけてきたチンピラと喧嘩になり、ぶちのめしたらしい。その後仲間に後を付けられたらしく、夜明けに家を襲撃されて奥さんを連れていかれたらしい。そう説明するドンガからは殺気が溢れだしている。


「連れて行かれた場所はわかるのか?」


「探すしかねえっ」


「わかった。代わりに俺が助けに行くから待っててくれ」


「は?何言ってんだてめぇ。よそ者の癖にここの地理とか知らんだろうがっ」


「それは問題ない。あとキルトはどこだ?」


「え? キルトっ!キルトっ!おいおいっ、お前らキルトを知らなねぇかっ」


これは奥さんだけでなく、キルトも連れ去られた可能性が高いな。


「クロノ、ここで待っとけ」


「一緒に行く」


「危ないぞ」


「でも行く」


クロノも怒っているような感じだ。


「ドンガ、必ず連れ戻す」


「お、お前何を言って・・・、俺が行くって言ってるだろうがっ」


「立って歩いてみて」


「おうっ」


と立ち上がって歩こうとするとフラフラっと倒れるドンガ。


「ポーションで傷は治ったけど、血が足りないんだよ。頼むから俺に任せてくれ」


「商人のお前に何が出来るんだっ。そんなひょろっこい身体してやがる癖に」


「これでも一応ハンター証も持っててね、ギルドにチンピラ集団の討伐依頼が出てるんだ。多分そいつらだろ?ついでに狩ってくるわ」


「なんだと?」


「ワープ、ミラ!」


ブオン


「俺の後に付いて来ないでね。下手したら閉じ込められるから」


そう言った叶多はクロノと共に消えていった。



出口から顔を出すとどこかの部屋の中だ。


血の臭いと女性の泣き声がしている。


「クロノ出ろっ」


慌ててゲートから出ると血塗れの子供を抱き抱えて泣いているミラが居た。


「キルトっ!大丈夫かっ」


生きてるか死んでるかわからないキルト。上級ポーションを振りかける。


「う、うう・・・」


良かった生きてる。


「お母さんは無事ですかっ」


「あなたは・・・」


良かった、服は血塗れだけど事後の様子では無さそうだ。


「きゃぁぁぁっ」


突如響くクロノの叫び声。

しまったっ。


「なんだてめぇらはっ」


クロノの腕を掴んだチンピラに叶多はブチ切れる。


「触んなっ!」


叶多はチンピラに体当たりしてクロノを抱え込む。相手はまだ剣を抜いていないから多少殴られても構わない。


ガタイの良いチンピラは叶多の体当たりに少しよろめいただけで、叶多を蹴り飛ばした。叶多はクロノを抱き締めたままぶっ飛びチンピラと距離が出来る。


ゴフッ


蹴られた叶多は血反吐を吐きながら大きなワープゲートを部屋に出した。そこへずぼっと落ちるチンピラは上半身だけ出した状態になった。


「うわっ。なんだこれはっ」


「カナタっ カナタっ大丈夫っ」


「ゴフッ ゴフッ し、心配すんな。お前は腕痛くないか?」


大丈夫と言ったクロノの腕は赤く腫れていた。


(あいつ殺すっ)


「お兄ちゃんっ。助けに来てくれたのっ」


「キルトっ。もう大丈夫なのか?」


「うん、もうどこも痛くない」


「そうか、良かった。お母さんも無事?」


「は、はい。でも私の為にキルトが・・・」


連れ去られる時にキルトは母親を守る為にチンピラどもに掛かっていって殴る蹴るの暴行を受けたが母親から離れなかったらしい。


「よくやった。お前は母ちゃんをちゃんと守ったんだな」


「当たり前だ!そうだ、父ちゃん、父ちゃんは?」


「無事だぞ。ただ血をたくさん失っててな。歩ける状態じゃないから代わりに俺が来たんだ」


後ろではぎゃーぎゃーチンピラが喚いていて、その声を聞き付けた他のチンピラどもも次々とゲートに落ちていく。助けようとしては落ち、俺達に掛かって来ようとしては落ちていく。


「あ、あのこれはいったい・・・」


「賊討伐。お母さん達を助けるついでにやって帰るよ。俺のクロノに怖い目に合わせて傷を付けた罰だ。万死に値する」


「な、何を・・・」


「お母さん、キルト、クロノ。耳を塞いで目を閉じて」


3人は低い声でそう言った叶多に従う。


「キャンセル」


ぶっしゃぁぁぁっ


魔法陣が消えて首やら上半身だけがその場に残り、そこから血を吹いた。叫び声が聞こえるかと思ったら声は出ず、その場で少し口をパクパクして絶命した。


テレレレレッレッレ~♪


頭にファンファーレが鳴るが確認は後だ。


ドンガを指定してワープ。


「お、お兄ちゃん、これ何・・・」


ワープゲートに入ったキルトが聞いてくる。


「ん?ワープゲート。馬車の中でワープして来たって言ったろ?すぐ父ちゃんの所に返してやるからな」


「うわっーー!すっげぇ!。母ちゃん、これワープなんだって」


と、皆で少しだけ亜空間を歩いて漁港に戻る。


「先に出ろ。閉じ込められるぞ」


「父ちゃんっ」


「わっ、お前どこからっ」


「あなたっ」


「ミラっ!!!」


再開を喜び合うドンガ達。


「キルト、頼みがある」


「何でも聞くよっ」


「クロノをここで守っててくれないか?」


「女神様を?」


「そう。俺は今からギルドに行ってハンターを連れてあいつらを掃討してくる。まだいるはずだからな」


「わかった!俺、女神様を守るよっ」


「頼んだぞ。クロノ、少しの間キルトにここで守られててくれ」


「わ、わかった・・・。カナタ、口から血が・・・」


そういって、クロノが心配そうに手で叶多の血を拭う。


「ありがとうな。じゃ行ってくる」


と叶多はまた消えて行った。




「え?この依頼受けてくれるんですか?」


「あぁ、多分こいつらだとおもうけど、何人か始末した。残党を狩るのに誰か手伝ってくれるやついないか?」


「この時間は誰も・・・」


「俺が行ってやろう」


「あ、ギルマス」


「本当にアジト見つけたんだろうな?」


「ごちゃごちゃ言ってる時間がない。手伝ってくれるならすぐ一緒に来てくれ。残党が居たら着いた瞬間に戦闘になる」


「お前何を・・・」


「ワープっ。さ、俺に付いて来てくれ。あとお姉さん、少しの間ここ誰も近づけないで。下手したら亜空間に閉じ込められるから」


「は、ハイッ」


ハポネのギルマスも訳がわからず叶多に付いていく。


「こ、これは・・・」


「これが出口。これから先は奴等のアジトだから、気を付けて」


そう伝えてギルマスを外に出す。


「どっから入って来やがったてめぇ」


叶多もゲートから出るともう戦闘が始まりそうだ。


ギルマスがいるから大きなゲートは出せない。壁に背中を預けて一人ずつゲートに落として始末していく。


チンピラどもはいきなりごとんと生首だけになる仲間を見て恐怖に陥り、悲鳴を上げて逃げだ出そうとした。これでもう大丈夫。出口にゲートを出したら皆はまっていく。


「ギルマス、深追いしないで。落ちるよ」


と警告する。


「何をやってるんだ・・・?」


「さっきの空間に落としてる。で、その空間を消す。キャンセル」


ごとん


「そうすると空間に入ってる部分が消滅して首が残るんだ」


「な、なんだその能力・・・」


「魔王討伐の為の能力だよ。さ、外の残党を狩りに行こう」


外の残党も駆逐していく。ここは小さな無人島のようだったのでこの島いるやつらは全滅だ。


「こんな小島がアジトだったのか・・・。船も無しにどうやってここへ来てやがったんだ?」


「その辺の調査は任せるよ。俺は戻らないとダメだからもういいかな?」


「ここの首を持って帰るぞ。衛兵達にも確認させなきゃならん」


生首を触るのが嫌なのでギルマスにやってもらう。手伝えと言われたが俺だけ帰るからなと脅して断った。


上半身が残ってるやつは首より下を亜空間に捨てさせられたけど。


首を一ヶ所に集め、ギルドにゲートを繋げるとギルマスがぽいぽいとそこへ生首を放り込み、今度は亜空間からギルドの中にぽいぽいと投げていく。


「きゃぁぁぁっ」


いきなり目の間に生首が次から次へと飛び出てくるのに受付嬢が悲鳴を上げる。


ギルマスが生首を投げ終わ外に出ると受付嬢が泣いてギルマスに怒っていた。


「ギルドの受付がこんなことでグダグダ言うなっ」


「ギルマス、俺は一旦帰るけど次はいつ来たらいい?」


「ちょっと話がしたいから、今日の夜に来れねぇか?」


「了解。嫁さん連れてくるけどいいかな?」


「嫁?あ、ああ構わんが・・・」


「ギルマスは飲む人?」


「酒か?飲むぞ」


「なら、お土産持ってくるよ。じゃ後でね」


と叶多は漁港に戻った。


「カナタっ!お帰りっ」


そういう言って抱き付いてくるクロノ。恥ずかしいとかより素直に嬉しい。


「血生臭いのが移るぞ」


「そんなのしないから大丈夫」


「カ、カナタ。お前はいったい・・・」


「俺、魔王討伐するつもりだから、これは修行だよ。強くならないとダメだからね」


「カナタさん、ありがとうございました。使って頂いたポーション代は必ずお返しいたしますので」


「クロノ、何使ったかしゃべったの?」


「う、うん・・・。死んだかと思ったキルトが元気になったポーションはなんだと聞かれて・・・」


「キルト、クロノを守っててくれてありがとうな」


「うんっ、何んにもなかったよ」


「そっか、安心したよ。そういやクロノを守ってくれと依頼した依頼料決めてなかったな。お前と父ちゃんに使ったポーション代と差し引きでいいか?」


「いいよーっ!」


「といこうとで、お母さん、ポーション代と依頼料と相殺になったから返さなくていいですよ」


「そ、そんなっ」


「クロノは俺の命より大切なんですよ。それを守っててくれたキルトには当然の支払いです」


叶多は世界にとってクロノの方が大切だと言う意味で言ったのだが、すっかり馬鹿旦那発言と受け止められていた。


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