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初めてだったんだからな

叶多は窓際の椅子に座ってドキドキしたままだ。もう死んでもおかしくはない。


これ、クロノが起きたらなんて説明しようか。まっ裸を見た所の話ではない。


どーしよっ どーしよっ


ふと買ってきた酒瓶を見ると空だ。あいつ拗ねて全部飲んだのか・・・


これは起きたら記憶が無くなっているかもしれない。が、酔ったあいつは本音を言ったのだろうか?


一人にしないでといったクロノの悲しそうな顔が叶多の心を締め付ける。


もしかして俺はクロノの事が好きなのだろうか?


それか単に女の子慣れしてないからドキドキするだけなのだろうか?これがもしシンシアやリンダに同じ事をされたらどうなる?


・・・

・・・・

・・・・・


ドキドキするだろうな。

俺ってば最低だな・・・


クロノの言った事をよく思い出せ。


・クロノと俺が一線を越えるとクロノは自分の世界に帰れなくなる。

→俺がいた世界の時間は動き出さない。が、当人達にはわからない。いまここにクロノが居ても世界に影響は出ていないと思われる。


・神器を取り返して元の世界に戻る。

→俺もこの世界の人も俺がここに居た事が無かった事になる。恐らくこの世界で俺がやった事の結果は残るが記憶が無くなるか他の記憶とすり替えられる。


これが事実なら俺は元の世界を取るかクロノを取るかの2択だ。


元の世界を取ったらクロノはまた一人になる。クロノが他の誰かを召喚して一緒に居てくれたらあいつの寂しさを解決してくれるかもしれない。元の世界に未練が無い奴なら問題なしだ。


叶多はクロノが他の誰かと楽しそうにしている事を想像して胸がキュッとなった事に自分では気付いてはいない。


あ、そうか、召喚した所の時間を止めないと寿命あるからずっとクロノといてやること出来ないじゃん。これは却下だな。却下と結論付けてなぜかほっとする叶多。


俺がクロノといることを選んだとしても魔王を100年以内に倒さねばならない。いや、100年と言うのはだいたいの期間。神達の時間感覚からしたら誤差が出る可能性が高い。大地震予測みたいなものだろう。いきなり明日覚醒してもおかしくはないのだ。そもそも魔王が覚醒したらどうなるのだろう?これは明日クロノに聞いてみよう。



「カナタっ カナターっ」


「どうした?」


寝ていたクロノがいきなり俺の名前を呼んだ。


「いやーーーっ、助けてカナターーっ」


「クロノっ、どうしたっ」


「あっ、カナタっ」


「どうした?」


「あいつがっ ジェイソンがっ。助けてカナタっ」


ぼろぼろっと泣いてしがみついてくるクロノ。


「大丈夫だ。大丈夫だっ。俺はここにいる」


「ぐすっ ぐすっ カナタ。私を一人にしないで・・・・」


「俺はここにいるから大丈夫だ」


そう言ってギュッと抱き締めるとクロノは安心したのかスースーと寝息を立てた。


怖い夢を見てたのか。昼間チンピラに絡まれたからな。


寝たクロノは叶多の手を握っている。


クロノの寝顔を見て叶多は決心する。俺は強くならないとダメだ。またあんな事があっても毎回上手く行くとは限らない。それに初めは強い奴を探してクロノを託そうかとも考えてたけど、自分でこいつを守ってやりたいと思う。


まぁ、俺は一生守ってやると宣言したみたいだし、こいつは俺の嫁さんだからな。



クロノを守れるように強くならねばと決心した叶多はチンピラとの出来事を思い出していた。自分が剣や魔法で魔王を倒すのは無理だろうけど、ワープの特殊な使い方をすれば魔王を倒せる可能性がある。というか勇者スキルが手に入らない今となっては俺しか倒せない気がする。


後はレベルが上がったら何に影響するかだ。基礎体力も上げておいた方がいいし、闘いにも慣れておいた方がいいな。


よし、この休みが終わったら、商売の量を減らして討伐依頼を受けてみるか。ランクを上げたら他の奴とパーティー組めるかもしれないしな。エスタートのやつらじゃダメだ。ゴーレンで戦っているやつぐらいじゃないと。それかトーマスがパーティー組んでくれないかな・・・



眠れそうにない叶多はワープゲートを出してはキャンセルを繰り返す。言葉に出さなくても思い描いたらワープゲートも出せるしキャンセルも出来る。


これ、落とし穴みたいにつかえないかな?


試しに床にワープゲートを出すと床に魔法陣が出た。


風呂場に移動して部屋の中を指定して床にワープゲートを出した。中に入ったら下に出口の魔法陣があるのだろうか?


まあ、落ちても大した距離ではない。

ひょいと飛び込むと足元だけ入って中に入れない。脚を抜こうとしても一端ゲートをくぐったら入口からは出られない。いくら頑張っても足が抜けないのだ。


ウソっ!


ヤバいヤバいヤバいヤバいっ。このまま時間が経ったら足チョンパされてしまうっ。


しゃがんでも入りきりそうにないので思いきって魔法陣に倒れこんだ。


真下にあると思った出口の魔法陣は目の前にあった。


自分の身体が全部入ったのを確認して出口をタッチ。


怖っわ、めっちゃ怖っわ。


あのまま亜空間に入りきれなかったら足が無くなってたな・・・。叶多は風呂まで移動して本当に良かったと思った。目の前にワープしてたらどえらいことになってたな。しかし、これで罠にはめたら確実に捕らえる事が出来る。それにキャンセルしたら足は奪えるので対魔物にはとても有効だ。


後はどれだけ離れた所に出せるかと瞬間的にワープの指定場所を指定出来るかだ。倒すだけなら深くに落としてキャンセルしたらいい。が、討伐依頼の証拠も残らないし、対魔王は神器を取り返さないと行けないから深さを想定してやらないと行けない。


あのチンピラが死んだとしたらキャンセルした結果だ。閉じ込めた場合は死なないと仮定する。勇者スキルがクロノに帰ってないということはそうらしいからな。元の世界に戻ったというのは仮定だから何かで実験した方がいいな。もしかしたら亜空間の中で時間が止まって閉じ込められたままという可能性も否定出来ない。


叶多は上空にワープゲートを出したり窓の外に向かってワープゲートを出してどこまで離れた距離に出せるか確かめていく。


結果、ゲートはどこにでも出せる。距離は5m程だ。ゲートの大きさも半径5mぐらい。これはかなり使える。大きく浅く作ってヤバそうならその中に飛び込めば、そいつらは入ってこれない。


よし、まずは倒し方を問わず、レベル上げをする。それで何が向上するか確認。もし体力やスピードとかの身体能力なら向上するなら限界まで上げてみる。ワープの能力に関することなら様子をみながらだな。


ここに来たときよりも体力も走るのも速くなった気がするのは毎日の荷運びで筋力が付いたからかレベルのせいかわからんからな。


全く眠れなかった叶多。元の世界を選ぶのかクロノを選ぶのかは魔王を倒した後だ。今は強くなってクロノを守りきるのが自分の役目だ。こいつになんかしてくる奴は魔物であろうと人間であろうと殲滅する。スースーと穏やかに眠るクロノ寝顔を見てそう心に誓う。これが俺の責任の取り方だからな。


夜明け前に風呂に入って、頭に水をかぶりしゃっきりとする。今更眠たくなってきてしまったのだ。


そして外が明るくなった頃にクロノが目を覚ます。


「もう起きてるの?」


「気持ち悪くないか?」


「どうして?」


「お前、これ全部飲んだろ?」


「あ、あははははっ。えっ」


ばっと浴衣の前を押さえるクロノ。

そして真っ赤になる。


ブ、ブラしてない・・・


「へ、変なことした?」


「した」


「えっ?」


「俺、初めてだったんだからな。お前は覚えてないのかよ?」


「えっ えっ えっ」


顔が燃え上がるぐらい真っ赤になるクロノ。


「もう結婚してんだから問題ないだろ?」


「そ、それは私を守る為の・・・」


「誰かに託すんじゃなく、自分でちゃんとお前を守れるようになる。だから俺、強くなるよ。この休みが終わったら仕事の量を減らして魔物討伐とかやってみるから。そして神器を取り返して魔王を倒す。それが俺の責任の取り方だ」


「私はカナタと・・・」


「嫌だったか?」


・・・

・・・・

・・・・・


「いっ、嫌じゃないけど・・・。私もう帰れないからカナタも帰れない・・・」


「お前が自分の世界に帰れなかったら時間と空間に影響出たり、寿命があったりするのか?」


「新しい事が出来ないだけだけど、カナタを帰してあげられなくなっちゃった。ぐすっ ぐすっ ご、ごめんね・・・。ちゃんと初めに言っとけば良かった・・・ぐすっ ぐすっ ごめんね」


「お前にパンツはかせただけで帰れなくなるのか?」


「え?」


「生まれ初めてだったんだぞ、人にパンツはかせるの」


「え?」


「お前酔っ払って風呂で寝て起きなかったんだよ。俺が全身拭いてパンツはかせて浴衣を着せたんだ。心臓破裂したらどうすんだよっ」


「私、カナタと・・・」


「お前は俺にまっ裸を見られてパンツはかされただけだ」


「わっ、私は先にお風呂入って出てきたじゃないっ。嘘言わないでっ」


「俺、風呂で酒飲んだんだよね。お前それをズルいとか言ってなかったか?」


「あっ・・・」


「お前、この酒どうして全部飲んだ?拗ねて飲んだんじゃないのか?」


「ちょっと思い出したか?俺が風呂入ってるところにバスタオルを巻いたお前が・・・」


「わーっ わーっ もう言わないでっ」


この前のお返しにもっと引っ張ってやろうかと思ったけど、俺を帰せなくなってごめんと泣いたクロノにはこれ以上いじわるする気が無くなってしまった。


「言っておくけど、俺とお前は裸で抱き合ったのは本当だからな」


「そっ、そんことしたのっ」


「お前が抱き付いて来たんだっ」


「嘘っ」


「お前、柔らかかったぞ」


バンっ


真っ赤になったクロノは枕を叶多に投げつけたのであった。


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