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想像以上に日本

向かいに座った子供は母親の膝の上で足をプラプラさせている。クロノも同じように足をプラプラさせている。


なるほど、クロノは子供だったんだな。そういや発想も子供だよな。勇者の二人は可哀想に・・・


「ねーねー、お兄ちゃん。お姉ちゃんは大人なのにどうしてお兄ちゃんの膝の上に座ってるの?」


「このお姉ちゃんはね、見た目は大人だけど中身が子供だからだよ」


「ちょっとぉ、誰が子供なのよっ」


「お前、向かいに座ってる子供と同じ事してんだろが」


今は向かいの子供と足をちょんちょんさせて遊んでいるところだ。


子供も楽しそうだから別にいいけど。


「お兄ちゃん達は外国の人?」


「そうだよ。ベリーカっていうところからきたんだよ」


「どうやって来たの?」


「ワープゲートっていうのを通って来るんだよ。ここまであっという間だよ」


「すっげぇっ。あとそれなに?」


「これはキックボードっていってね、乗り物なんだよ。道がガタガタじゃなくて綺麗な所でしか乗れないけどね」


と、そんな話を子供としていると、港街に入ったのかゴトゴトゴト感がなくなった。


「ねーねー、ここなら乗れるの?」


外を見てみると舗装された綺麗な道になっている。


「お婆さん、ここからずっとこんな道ですか?」


「そうじゃよ」


「次に馬車止まったらこれに乗せてあげようか?」


「いいのっ?」


「俺たちは終点まで行くけど僕はどこまで行くの?」


「一緒だよ」


「じゃあこれに乗って馬車の後ろ姿付いていくか?」


「うんっ」


「これっ、キルトっ。ご迷惑でしょっ」


「お母さん、ゆっくり走るから大丈夫ですよ。馬車の後ろを付いていくだけですから」


お婆さんの話によると、次の次が終点らしいから1区間だけだ。男の子ならこういうのに乗ってみたいだろう。


馬車が停まったので先に降りて男の子をひょいっと抱き抱えて下ろすとクロノも手を伸ばす。


「お前は馬車に乗ってろよ」


「早くっ」


仕方がないので、クロノも下ろす。子供が一番前で、クロノは定位置だ。


「落ちないようにここを持ってろよ」


「うんっ」


馬車が出発した後ちょっと待ってから出発。


チョイっと蹴るとスッと走るキックボード。海風を感じられて気持ちいいな。


子供は前をみたりこっちを見上げたりと嬉しそうだ。


キャッキャッ喜ぶ子供と後ろにクロノを乗せてスイスイ進む。



馬車のスピードが落ちたのでそろそろ終点だな。こちらも軽くブレーキを掛けて停まる準備をする。


馬車が停まり、お母さんと子供が降りて来ようとするので子供をひょいと抱き上げて下ろしてやる。


「まぁ、すいません」


「いやいや、荷物があると大変ですからね」


「母ちゃん、お兄ちゃんのこれ買ってよー」


「ダメです。なんでもすぐに欲しがるもんじゃありません」


お婆さんが降りるのを手伝ってると男の子がキックボードを欲しがる。


「僕、これ高いから子供のオモチャには買えないと思うぞ」


「す、すいません。ちなみにおいくらぐらいの物なんですか?」


「卸値で金貨2枚だから販売価格はどれぐらいだろうね?」


「そ、そんなにするんですかっ」


「これ魔道具なんですよ。こいつがあまり歩けないからこういうのが必要なんでね」


「はぁー、貴重な物に子供を乗せて頂いてありがとうございました」


「いえいえ」


「お兄ちゃんバイバーイ」


「おう、またな」


とここで別れてお婆さんの荷物を持つ。


「おや、すまないねぇ」


「おばあちゃんの店に行くからついでですよ」


と叶多はお婆さんの荷物を持って食堂に向かった。


「ここじゃよ」


着いた店はまさに食堂って感じだ。お品書きを見ると、お(つく)り定食、焼き魚定食、ミックスフライ定食、煮魚定食とそれぞれ単品があり、魚はその日取れたおまかせのようだ。お造りってのが刺身のことかな?


「クロノはどれにする?俺はお造り定食だな」


「えー、どれが美味しいと思う?」


「ミックスフライなら間違いないと思うぞ」


「じゃあそれ」


という事で注文。煮魚も気になるけど、また明日も来ればいいしな。


運ばれて来たお造り定食は刺身の盛り合わせだ。やった!


しかもご飯と味噌汁、漬物付き。これはこの国で味噌を買って帰らねば。


なんの魚かわからないけど、白身からいこう。


パクっ。うん、甘味があって美味しい。脂はほとんどないけど凄く新鮮だ。次はアジかなこれ?生姜が乗せてあるからな。うはっ、モチモチで脂ノリノリでうまーっ。


クロノもタルタルソースを付けて魚のフライをウマウマと食べている。


「ねぇ、カナタ。生の魚って美味しいの?」


「好き嫌いはあるけどね。いまお前が食ってるフライとこれは同じ魚だと思うぞ。食べ比べてみるか?」


と、チョイと醤油を付けて口の中に入れてやる。


もにゅもにゅ


「あ、美味しいかも」


「だろ?」


「そっちは何?」


「なんだろうね?俺の所と魚の呼び方違うかもしれないし、切り身になってたら何か分かんないよ」


口を開けるクロノ。


「お前、ワサビ食えるか?さっきのは生姜だったけど、この緑のは辛いというか鼻にツンと来るぞ」


「付けた方が美味しいの?」


「俺はな。苦手な人もいるからほんの少しだけ付けてやろうか?」


と、ワサビをちょっぴり付けてから醤油をちょんちょんと。それから口に入れてやる。


「んっ んふーーっ」


あれでもダメか・・・


「あ、でも美味しいかも」


これ、本物のワサビだからめちゃくちゃ旨いしな。チューブのワサビとは別物だ。次はイカ食べ・・・。


またクチを開けるクロノにイカも食べさせる。


「何これ?変わった歯ごたえね」


「俺の所じゃイカって呼んでたよ」


「でも甘くて美味しい♪」


「その丸いフライがこれだと思うぞ」


とクロノがフライを食べてる間に自分もイカ刺を食べる。旨いねぇ。


またこっちを向いて口を開けるクロノ。


「どれがいいんだ?」


「まだ食べてないやつ」


これはブリかな?


「うん、これも美味しい」


自分も食べるとブリとは違うような気がするけどこれも旨い。


クロノは次何にしようかなと俺の刺身を物色して、アジがいいという。


生姜を乗せて醤油をつけて口の中へ。


「新婚さんはどこでも熱々じゃのう」


ハッ。俺は何を人前でやってんだ。


口を開けるクロノに何の疑問も無しに食べさせていた事に自分でも驚く。


「ク、クロノ、食べたい物があったら自分で食べろっ」


「だって、そんなの使えないもん」


あっ・・・。


俺は箸を使っていた。クロノはフォークだ。


「お前さんは箸も上手に使うの。元々はこの国の出身かえ?」


「ま、まぁ似たようなところです。ここの魚美味しいですねぇ」


「そうじゃろそうじゃろ。夜明けの漁で取れた魚を昼には出すんじゃ。大きな魚は夜か翌日までおいてから出すのじゃよ。また違った旨さがあるでの」


なるほど、熟成ってやつか。


「クロノ、刺身追加するか?」


「うんっ」


「おばあちゃん、造りの単品でも注文出来る?」


「構わんよ」


「クロノ、どれにする?盛り合わせでもいいぞ」


「じゃ、この白いの」


イカか。


「おばあちゃん、イカ?だけでもいい?」


「イカじゃね、はいよ」


イカは同じか。


出てきたイカ刺をクロノはフォークで刺したり掬おうとするがちゅるんちゅるんと逃げてなかなか食べられずにご機嫌が斜めになっていく。


「ほら」


叶多はバカっプルと見られるのを覚悟してクロノに食べさせるのであった。



「おばあちゃん、ご馳走でした。美味しかったです」


「なんのなんの。こちらこそご馳走様じゃ」


定食は全部銅貨10枚、イカ刺単品は銅貨5枚。これだけ美味しくてこの値段は安い。明日も食べに来なければ。


叶多とクロノはキックボードに乗って漁港町を見て回る。乾物、味噌と醤油の店とかがあり、買うものリストにどんどん追加されていく。帰りに買わないとね。酒屋には日本酒が売っている。これも追加だな。


そして宿屋が並んでいるところに到着。海が見えそうな宿のフロントで、部屋に風呂が付いているか聞くと海を見ながら入れる風呂が付いてる部屋が空いているという。1泊2食付きで一人銀貨20枚。そこを2泊で銀貨80枚をお支払い。高い部屋だけどもうこの部屋しか空いてないらしいから仕方がない。


取りあえず部屋に案内して貰うと想像以上に見晴らしがいい。


「カナタ、ここベッドが無いけど寝室ってどこ?」


「多分、寝るときに布団を敷いてくれるんじゃないかな?」


部屋にはテーブルと座椅子、窓側には椅子と小さなテーブル。ベランダというか外に風呂があった。このハポネという国は想像以上に日本だ。黒髪の人はいないけどね。


クロノはテーブルの上に置いてあるお菓子をひょいパクひょいパクと全部食っていた。お饅頭だった気がする。


「ここで晩飯までゆっくりするか?」


「ううん、遊びに行きたい」


という事で徒歩でうろうろする事に。観光地なのかけっこう人が多いのでキックボードは危ないのだ。それに漁港街と

反対側に向かう坂道にはずらっと屋台が並んでいる。


「ねーねー、これなんのお店?」


お好み焼きとかイカ焼き、くじ引き、スマートボール、かき氷、お面、リンゴ飴、カルメラ焼きとか様々な屋台だ。クロノは見る度に欲しいと言っては買わされる。


「お前、そんなに食べてたら晩御飯食べられなくなるぞ?」


「へーき、へーき。あれは何するもの?」


「お面だよ。かぶるだけのもん・・・」


「これっ!」


クロノはすでに熊をディフォルしたお面を手に持っていた。


「旦那、銅貨15枚だ」


なんに使うんだよそれ?


それからもっと人が増えだし、浴衣姿の女の子達が増えて来た。元の世界より丈が短いけど浴衣なんだろうな。


「あの服着てみたーい」


「あんなのどこに売ってるかわからんし、俺は帯なんて結べんぞ」


「誰かに聞いてよ」


あーっ、もうっ。


「すいません」


と浴衣を着た二人の女の子に声を掛けてみる。


「は、はいっ」


「その浴衣って・・・」


「かっ、可愛いですか?」


「はい、とても可愛いですよ。で、どこで・・・」


「きゃーっ、どうしよ、私達ナンパされちゃったわよっ」


違うっ。


「いや、その浴衣はどこ・・・」


「どこに行きますかっ」


と、二人の女の子に両側の腕を組まれる。


「ちょっ、ちょっ、違うんだって。おいクロノっ、ちょっとこっちに来い。ナンパに間違われてんだよ・・・」


あれ?クロノはどこ行った?


「ご、ごめんね。連れがどっか行っちゃったから探さないと」


「えー、彼女いるのにナンパしたのっ?最低っー!」


べしっとバッグで叩かれる叶多。この世界ではモテ補正が掛かっているのだろう。あんな声の掛け方でナンパしたことになってしかも成功するとは・・・。


いや、そんな事よりクロノを探さなければ。


叶多は大きな声でクロノの名前を呼びながら探しに行くのであった。


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