女の子はお金が掛かる
「毎度あり、旦那」
ドグにニヤニヤしながらハンター証を返される。それで皆支払いをしたら俺の事を旦那様と呼んだのか・・・
世の中には色々な結婚があり、呼び方がある。
恋愛結婚
見合結婚
契約結婚
政略結婚
出来ちゃった結婚etc・・・
俺の場合はいつの間にか結婚とかになるのだろうか。
恋愛経験無しの上、結婚相手が人ですらない。これ、もとの世界に戻ったらバツイチとかになるのだろうか?
しかし、これで養う義務が出来たのかもしれない。
「あのさぁ、魔道具で洗濯してくれる機械とか売って無いかな?あとは防犯の魔道具とか」
「あー、そういうのはここでは作ってないな。所謂生活魔道具ってやつだろ?」
「そうそう」
「ハテーン王国って所に行くとあると思うぞ。もしくはアッキバ王国か。アッキバの方が安いかもしれん。お前ならどこでも行けんだろ」
「アッキバだね。ありがとう。そこに行ってみるよ。夕方に荷車取りに来るね」
「おう、また荷車売って来てくれ」
「了解!」
マップでアッキバを探す。
お、あった、あった。ここだな。
「どこに行くの?」
「アッキバって国だよ」
とゲートを指定して移動。そこそこ距離があるので受け取ったキックボードを試してみる。
「エイっ」
バビョンっ
ゴスッ
強く蹴り過ぎたのかキックボードだけ飛んでいって叶多は盛大にスッ転んでしまった。
「キャハハハッ何やってんのよっ」
クロノは人の不幸が好きなようだ。
「うるさいっ。まだ慣れてないんだよっ」
と、慌てて飛んでったキックボードを取りにいって、今度はそっとけってみる。
すぃーーーっ!
うぉぉぉぉ、めっちゃ楽だ。
すぃー すぃー
やだ、楽しい。亜空間はでこぼこが無いし、めちゃくちゃ滑らかに走るキックボード。それ右回りっ 左回りっ
「ちょっとー、私にもかしてよぉ」
「そっと蹴れよ」
「わかってるわよっ」
ゴスッ
「うはははははっ」
盛大に転んだクロノを笑い返してやる。
「何笑ってんのよっ」
「お前も笑ったじゃないかっ」
「もういいっ」
また拗ねるクロノ。
で、キックボードを返してもらって乗ろうとするとクロノが俺におぶさって来る。
「何だよ?」
「いっけーっ!カナタ号!」
はぁ、クロノの分も追加で頼んだけど、不要だったかも。
クロノに掴まらせて背中に男のロマンを感じながらスイスイッと出口までたどり着いた。めっちゃ不安定で怖い。これ、2人乗り用に改造して貰うかな。後ろにクロノを立たせる所を作ってもらった方がいいな。
取りあえずアッキバに行ってすぐにドグの所に折り返す。
「まだ出来てねぇぞ」
「いや、ごめん。さっきのキックボードを2人乗りに改造してくれる?後ろにこいつが立てる所を付けて欲しいんだよ」
「何だ、お前らラブラブだな」
「こいつどん臭くて乗れなかったんだよ」
「はっ、そういうことにしといてやるわ。それなら追加のキャンセルしてそれを改造してやろうか?」
「いや、これの2人乗りよりこっちの方がコンパクトになるだろうから、これはこのまま使うよ」
「そうか、もう少し大きくなるついでに車輪を大きくしてゴム製にしといてやろうか?それなら乗れる所増えるだろ」
「じゃ、それでお願い。追加代金は?」
「これぐらいまけといてやるよ」
「ありがとう。今度珍しい物を見付けたらお土産に買ってくるよ」
「おう、なら酒のつまみになるものを頼むぜ」
「了解」
と、再びアッキバへ。
また背中に男のロマンを感じながら移動。これ、クロノに胸が背中に当たってると言えばどうするだろうか?
また変態呼ばわりされるだろうな・・・。黙ってよ。
初めは恥ずかしくてどうしようかと思ってが、やはり叶多も男の子。だんだんと嬉しいが勝っていくのであった。
アッキバに到着して、門でハンター証を見せて中に入ると繁華街が目の前に広がる。ごちゃごちゃしてるけれど活気のある街だ。
「ねーねー、カナタ、あれ何?」
「俺も初めて来るんだぞ。何があるか・・・」
おう、ゲーセンみたいじゃんかよ。しかもレトロなゲーセン。ピンボールとかスマートボールみたいな物からクレーンゲームみたいなものまである。
「あれは遊ぶ所だな」
「行こっ 行こっ。カナタそこ行こっ」
とクロノに手を引っ張られてゲーセンに。
「これどうやんの?」
「玉が落ちてくるから、このボタンを押して落ちて来た玉を弾いて落とさないようにするんだよ。で、玉があちこちに当たって点数入るんだ」
えーっと・・・
「この点数を越えたら景品もらえるみたいだぞ。やってみるか?」
「うん♪」
1回銅貨1枚。
ガション
このっ このっとクロノは必死にボタンを押していく。常に左右同時にボタンを押すし、どん臭いからあっという間に終了。
「なんなのよこれーっ」
「下手っぴだからすぐに終わるんだよ」
と交代してやってみると叶多もあっという間に終了。
「キャハハハッ。カナタも下手っぴじゃない」
「う、うるさいっ」
イメージでは出来てたのに・・・
次はミニバスケみたいな奴だ。
「えいっ えいっ えいっ」
テインテインと弾かれてちっとも入らないクロノ。
「よしっ、次は俺だっ」
バシュ バシュ バシュ バシュ
叶多は体育でもバスケは得意だったのだ。バレー部だったけど、隣でやってるバスケ部とよく遊びで3ポンイントとかやっていたのだ。
パンパカパーンとファンファーレが鳴り、ゴトンと景品が出て来た。あまり可愛くない熊のぬいぐるみだ。
「キャーーっカナタすっごーい♪」
とクロノがキャッキャはしゃいで腕を組んでくる。
叶多はドキドキした。楽しそうに笑うクロノは本当にあのくそ女だろうか?
「これ、いるか?」
「うんっ♪」
クロノはぬいぐるみを持って喜んだ。
次はクレーンゲーム、エアホッケーみたいな物を楽しみ遊んだ。
「じゃ、次はねぇ」
俺も楽しいけど、先に買う物を買わねば。
「クロノ、ちょっと休憩がてら飯でも食って買うもの買おうぜ」
「えーーっ」
「いいから。お前の物を買いに来たんだぞ」
と、ファストフードみたいな店に入り、フライドポテトとサンドイッチ、ジュースのセットを頼む。
クロノはフライドポテトを気に入ったようで機嫌が直った。
デートってこんな感じなのだろうか?叶多は女の子とこうやって遊ぶのが初めてだったので思いの外楽しかった。
一番大きな魔道具店に入り、ドライヤーを購入することに。洗濯機は全自動のは無く2槽式って奴だ。それでも銀貨30枚とか高い。ドライヤーは銀貨3枚だったので購入するけど、洗濯機は荷車が無いと持って帰れないからな。防犯の魔道具はアッキバではドアに取り付ける簡易タイプしかないらしい。これはハテーン王国にも行かないとダメだな。
「明日荷車持ってこのドライヤーと洗濯機買いに来るけど、洗濯機は2台買ったらまけてくれたりする?」
「同時にお買い上げくださるのですか?」
「まけてくれるならね」
「では、2台で銀貨60枚のところ55枚にさせて頂きます」
「なーんだ、他の店なら50枚って言われたから悪いけどそっちで買うわ」
「ど、どこのお店ですかっ」
「それは言わない約束だからね。アッキバで一番安く売りますって言ってたけど」
「むむむっ、あの店ですね。じゃ、こちらも50枚にさせて貰いますっ」
「あ、ごめん。俺も商人ライセンス持っててね、商売してると義理とか大事にしないとダメなんだよ。だから同じ値段なら先に50枚って言ってくれた所で買わないと申し訳ないから。頑張ってくれたのにごめんね」
「むむむむむっ。では49枚でっ」
「大丈夫?そんなに引いて?」
「うちはアッキバで最大手。あの店には負ける訳にはいかないのですっ」
「わかった。ならその心意気を勝ってここで買うか。ドライヤーもまけてくれるよね?」
と、ドライヤーも銀貨2枚にまけてもらった。高校生の時には値切ることなんてしなかったけど、こっちで商売するようになってこういうのが平気になったのだ。
「じゃ、お金だけ払って行くよ。商品は明日取りにくるから。あ、ドライヤーだけ今日持って帰るね。支払いは身分証でいい?」
「はい勿論でございます。お届けも出来ますが」
「頑張ってまけてくれたから配達はいいよ。うちは遠いしね」
「ありがとうございます。ではこちらに身分証を」
魔道具にピッとすると・・・
「やはり新婚様でございましたか。いやぁ、お美しい奥様で羨ましい限りでございます。他の魔道具はお揃いでございますか?」
「他の?」
「はい、こちらは魔道具だけでなく、新生活の為のものが色々と揃ってございまして・・・」
「ベッドとかある?あと寝具とかも」
「勿論でございます。ささ、どうぞどうぞ」
と、違うフロアに案内されてベッドや寝具を見ていく。
「カナタっ、これにしよっ、このベッドがいいっ」
「さすが奥様、お目が高い」
クロノが欲しいと言ったベッドはダブルベッドだ。
「お前なぁ、こんなの買ったら寝室に入るかどうかわかんないぞ」
と言ってるのにボヨンボヨンとベッドに飛び乗っている。おいっ、パンチラすんぞっ。
値段は金貨1枚と銀貨20枚。高ぇ・・・
どうぞ寝てみて下さいと言われて寝転んでみるとさすがに寝心地がよい。クロノもすっかりお気に入りだ。
「・・・あと寝具見せてくれる?タオルとかも」
とあれよあれよという間に出費がかさんでいく。3面鏡やらライトのスタンド、掃除機とかも。冷蔵庫も勧められたけどそれはあると断った。ドライヤーと洗濯機他全部ひっくるめて金貨2枚で決定。差額をお支払して買い物終了。本当に届け無くて大丈夫かと確認されたけど、積込だけお願いした。
女の子と暮らすってお金掛かるんだなと叶多は実感していた。