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言ってやれ

「カナタ、唐揚げっての作れるか?」


「え?食堂で作んの?そんなの迷惑じゃん」


「構わんだろ。なぁーっ、ちょっくら厨房使って構わんよな?」


「いいわよー」


「シンシアに聞いてな、酒にも合うらしいじゃねーか?」


「まぁ、酒のつまみの定番だけどね」


という事で食堂で唐揚げを作らされる。


向こうではカーーーッとかトーマスの声が聞こえてきた。火酒を飲んでるのだろう。なんかガヤガヤしてるし、他のハンター達も集まって来てるんだろな。唐揚げも大量に必要かもしれん。


せっせ、せっせ。クロノも食うかな?結局あの時食わなかったけど、嫌いなのか?それならもう一品作るか。


「ここにある食材使っていい?」


「いいわよ。支払いはギルマスに付けとくから」


といわれたので簡単グラタンを作っていく。食材的にはベーコンとじゃがいも、アスパラとかしか無理だな。今度シーフードを仕入れに行くか。そのうちマップで海の近くの国を探そう。


グラタンをオーブンに入れて、唐揚げを揚げていく。大鍋だから揚げるの楽チンだ。一応、クロノの分をよけておいて、いらないと言えば自分で食べよう。


「カナタっ、旨いぞこれ」


「良かった。火酒は氷と水とかで割った方がいいんじゃない?そこにレモンとか絞ったら唐揚げと合うと思うよ」


CMでそんな飲み方してたような気がする。


トーマスと話をしようと思ってたけど、ハンター達と盛り上がってんな。先にクロノに唐揚げとグラタン持って行くか。


お盆に乗せて宿舎の部屋へ。


コンコン


「なんか用?」


「唐揚げとグラタンを作ったけど食うか?」


「い、いらないっ」


「そっか。なら自分で食うわ。後な、もうここにはほとんど来ないから、いちいち俺が帰って来たか聞きにいかなくていいぞ。次に来るの時は神器を取り返した時だ。まぁ、死ぬかも知れんから、魔王の所に行くときは先に報告しておくけど。じゃな」


「なっ、何よそれっ!」


「何って、神器が気になってんだろ?もし俺が死んだら誰か強い奴にワープのスキル付けて頼め。これから強そうなハンターを探しておくから。魔王の所にいく前にそれを伝えるから心配すんな」


「あ、あんたが居なくなったら私はどうすんのよっ」


「だから、俺みたいに戦闘能力が無い奴じゃなしに戦える奴の方がいいだろ?それか今俺からスキルを外して他の奴に付けるか?それなら今やってる仕事の関係者に報告しないとダメだから一週間ぐらい待ってくれ」


「何勝手なこと言ってるのよっ。あんたが私を守りなさいよっ」


「だから俺には無理だと言ってるだろ?よく思い出してみろ。勇者と一緒に逃げた時にあいつらがいなかったら逃げる事も出来なかったんだぞ」


「つ、強くなればいいじゃないっ」


「あのな、俺はこの世界ではひ弱なんだよ。それにこんな戦闘するよような世界でも生きて来てない。ここの世界の人でも無理そうな事が出来るわけないだろっ」


「な、何年掛かっても何十年掛かってもいいじゃないっ」


「それでも無理だ。俺がお前にしてやれることはなんとか神器を取り返す努力をするだけだ。しかし、それすら無理かもしれん。命を掛けてもな」


ボロボロっ


「だから何で泣くんだっ。俺はもう訳がわかんないんだよっ。これ以上俺に何しろって言うんだよっ」


「わ、私を守ってよ・・・」


「だから、それはしてやりたくても無理だと言ってるだろうが」


ヒック ヒック


うわぁぁぁぁん


もう、どうしろっていうんだよ・・・


「カナタ」


「あ、トーマス」


「すまん、盗み聞きする気はなかったんだがな、大声だったもんで・・・」


「あ、ごめん、廊下で大きな声出して」


「いや、ちょっと女神さんもいいか?」


「何よっ?」


ぐすぐすっ


「ちょっと食堂に来てくれ。もう皆は帰したから、そこで飯を食いながら話そう。それ、女神さんの為に作ったんだろ?」


「まぁ、そうだけど、いらないって言われちゃったけどね」


「女神さんも意地張ってないでありがたく食べた方がいいぞ」


「意地なんて張ってないわよっ」


「いつまでもそんな事を言ってると本当にカナタは戻って来なくなるぞ。他の国に家を借りたらしいからな」


「えっ?嘘っ・・・」


「本当だ。なぁ、カナタ」


「あぁ」


「本当に帰って来ないつもりだったの・・・」


「さっきそう言ったろ?」


ぐすぐすっ


「カナタ、女神さんを連れて来い。ちゃんと話せ」


トーマスは真面目な顔をしてそう言うので叶多とクロノは後ろを付いて行った。



「クロノ、どうすんだ?本当にいらないのか?それとも食べるなら焼き直してやるけど」


「・・・食べる」


グラタンの上のチーズを剥がして新しいチーズを乗せて焼き直し。唐揚げも揚げ直した。



「ほら、熱いからがっつくなよ」


「解ってるわよっ」


ふーふーして食べるクロノ。



「で、カナタ。お前は今何をやって、これからどうするつもりなんだ?」


「今やってるのは安いところで仕入れて高いところで売る。そういう仕事。この半月で金貨20枚ぐらい稼いだ」


「そんなにかっ?」


「朝から晩まで延々と注文を聞いて働いてるらね、もう少し落ち着いたらゴーレンのギルドでハンター達の運び屋をやるつもり。そこで腕が立って信頼出来そうな奴を見極める。クロノが気に入ればそいつに任せてもいいし、嫌なら俺の護衛を頼めそうな奴を探す。遠距離攻撃が出来るやつだな。金はそいつらを雇う為のものだ」


「どうやるつもりだ?」


「魔王が持ってる神器の前にワープして奪う。その時に遠距離攻撃して貰って援護。その隙にワープで逃げるつもり」


「そんな事が可能なのか?」


「タイミングがズレたり、魔王に感づかれたら死ぬだろうね」


「なんでそんな危ないことすんのよっ」


「お前を元の世界に帰してやるためだろ?」


「べ、別にそこまで帰らなくていいわよっ


「あのなぁ、お前が元の所に帰らないと魔王も倒せないし、俺も帰れないだろうが」


「別に倒せなくていいわよっ」


「はぁ?何言ってんだお前。勇者召喚したのも魔王を倒す為だろ」


「それはそうだけど、今すぐ倒せなくてもいいのっ」


「は?」


「まだ大丈夫なのっ」


やっぱり何を言っているのかまったくわからん。


「何が大丈夫なんだよ?」


「覚醒するまであと100年ぐらいはあるから大丈夫なのっ」


100年・・・。その間に倒せればいいってことか。


「しかし、俺は困るぞ。あんまり長く帰れないと勉強したの忘れるからな」


「大丈夫だと思う・・・」


「ん?大丈夫って何がだ?」


「大丈夫なのっ」


何が大丈夫なのかさっぱりわからん。


「カナタ、こことかベリーカとかの街中なら何かあっても逃げるぐらい出来るか?」


「まぁ、街中ならね。その代わり四六時中一緒にいないダメになる。こいつは多分魔物とか賊みたいな奴を呼び寄せるような存在なんだと思う」


「神様だからか?」


「多分ね。敵対するようなやつは何か感じるんじゃないかな。人間の悪いやつはなぜかわからんけど」


「ジェイソンはたまたまじゃないのか?」


「うーん、それはまだわからないけどね、魔物はクロノに気付いたらクロノしか狙わなかったからね」


「そうか・・・。なら魔族領みたいな強い魔物がいる所以外行かなきゃ大丈夫だろ。後は夜に外に出なきゃいい」


「魔物は夜しか出ないってこと?」


「向こうから襲ってくるのはな。魔族領やその近くは別だろうが、人間が多くいる所では魔物より賊の方が多い。他の国は日暮から朝まで門が閉まってるだろ?」


直接中に入ってるからよく知らないけど、そういう仕組みなんだな。


「で、カナタは街から街に移動してるから外に出てねぇだろ?」


「今はね」


「なら、女神さん連れてってやれ。お前がいない時の女神さんみてたら壊れんじゃないかと心配なんだよ」


「へ、へんなこと言わないでよ」


「なら、女神さんここでずっと留守番してるか?カナタは忙しいんだろ?」


「あぁ。行く先々であれは手に入るか?とか、これ売れるかとか聞かれるからね」


「ということだ。一緒に居なくても大丈夫なら、カナタも急ぐ必要がないならすぐに魔王の所に行く必要はない。それなら今みたいに必死に働き続ける必要もないから、週一ぐらい戻って来れるだろ。女神さんもそれでいいならここに居ればいい」


「べ、別にカナタが帰って来なくても問題ないわよ」


トーマスはそう言ったクロノにはぁっとため息を付く。


「そっか。ならトーマス。悪いけどクロノをここに置いてやって。宿舎代は俺が払うから。金貨10枚あったら飯とかもしばらく問題ないよね?」


「あぁ、ずっとここの飯で良ければ10年年くらいは大丈夫だが・・・」


「クロノ、お前のハンター証には金貨2枚入ってるからおやつとか服とかそれで買え。生活費は今言った通りトーマスに金貨渡しておくから」


「な、何よそれ・・・」


「この金はお前の為に稼いでる金だ。まだ時間があるならこれぐらいは使っても問題ない。トーマス、Sランクのパーティーを雇うのにどれぐらい金が必要かわかる?」


「魔族領の護衛なんていったら、一人あたり金貨300枚とか請求されてもおかしくないぞ」


最低でそれぐらいってことか。6人雇ったとして金貨1800枚以上ってことか。そんなに貯められるだろうか?まぁ、貯めるしかないけど。


「わかった。取りあえずそれを貯めるまで稼ぎながら強い奴探すわ。Sじゃなくても強い奴いるかもしれんからな」


「わ、私を置いていくつもりなのっ」


「お前がここに居て大丈夫ならその方がいいだろ。お前を連れていくなら四六時中一緒にいないとダメになる。ワープするとはいえ、毎日毎日歩きっぱなしだし、急いでる時は走ったりする。ずっとお前の面倒みてられないんだよっ」


ぐすっ ぐすっ


「だから何で泣くんだよっ。別に俺が帰って来なくても、居なくても平気なんだろうが」


・・・

・・・・

・・・・・


「カナタ、お前が折れろ」


「は?トーマス、それどういう意味?」


「俺と一緒に来て下さいって言ってやれ」


「なんでだよ?」


「いいからっ!」


「だから何でだよっ」


「あの部屋は相部屋だ。ずっと女神さん一人で使わす訳にはいかん。二人分金払うって言ってもダメだぞ。他の奴も同じ事を言い出したら収拾つかんからな」


「さっきはいいって・・・」


「お前と相部屋なら使わせてやる。そうでなければダメだ。だから一緒に来て下さいって言えっ」


叶多はなぜトーマスがいきなりそんな事を言い出したのかさっぱりわからなかった。

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