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気になってるらしい

「ガーハッハッハ。どうじゃ旨かろう」


ゴフッゴフッゴフッ


「こんなの喉が焼けるわっ」


「それがいいんじゃろが」


旨いとは思わないが、親父が飲んでたのと味がぜんぜん違うな。これキツイだけの酒だよな?


「これの原料は麦?」


「そうじゃよくわかったの」


「トウモロコシも酒にするんだよね?」


「ほう、物知りじゃの」


確か麦がウイスキーでトウモロコシがバーボンだっけか。こんな透明に近い色じゃなかったよな?


あれ、樽を焦がすんだっけか?


「なぁ、ザイル、これどんな樽に詰めてるの?」


酒屋のドワーフはザイルという名前だ


「普通の木の樽じゃが」


「樽の内側を焦がしたりモルトを乾燥させるのに泥炭で燻したりすると作り手によって味の差が出て面白いのにね」


「なんじゃと?」


「これ、蒸留して樽に詰めてあるだけだよね?俺もそんなに詳しい訳じゃないけど、確かウイスキーとかバーボンってそんな風に作るから、産地とか作り手によって味が違うんだったと思うんだけど」


「なぜ、蒸留の事を知っておる?これはドワーフ秘伝の酒じゃぞ」


「えっ?そうなの?」


「カナタ、貴様いったいなにものじゃ?」


あー、ま、いっか。


「違う世界からここに連れてこられたんだよ。魔王討伐の手伝いをするために」


「ま、まさか勇者か・・・」


「いや、俺には戦闘能力無いから、女神を運ぶ為だけに連れて来られたんだ。でも失敗しちゃってね。勇者達はどこかに飛ばされちゃったし、女神の神器は魔王の所にいっちゃったしで手詰まりなんだよ。だから、その神器を取り返さないとダメなんだよね」


「あの話は本当じゃったんじゃな」


「そうだよ」


「女神様は無事なのか?」


「ちゃんと連れて帰って来たから大丈夫。今はエスタートのハンターギルドにいるよ。あそこが一番安全らしいから」


「おぉ、エスタートか。確かにあそこは魔族領から一番離れておるからな。魔物も少ないし良い場所らしいな」


やっぱりそうなんだな。


「で、坊主は女神様の代わりに神器とやらを取り返すために今金を稼いでおるのか?」


「始めたばっかりだけどね。女神はクロノっていうんだけど、ここにいる間は何にも出来ないただの人と変わらないから。神器は俺が取り返さないとあいつも自分の所に帰れないし、俺も帰れないんだよ」


「女神様の為に働いておるのか・・・」


「いや、自分の為だよ」


その後、うろ覚えというか漫画で得た酒の知識をザイルに伝えておいた。酒は少しだけしか飲まないようにしておいたのはいうまでもない。


翌日、魔道荷車を販売しているドワーフを紹介してもらう。ザイルに借りているのが金貨10枚。馬がひく大型タイプは金貨30枚。自分には手が出ない金額だ。


「ほう、値段を聞いてきてくれと言われたのか?」


「これ、凄いよね。あんな大量の荷物が軽々だよ」


「そうだろう、そうだろう」


フフンと得意気な顔だ。


「じゃ、欲しい人が居たら買うかどうか聞いて来るよ」


「なら、売れたら2割手数料を払ってやろう」


「え?そんなにくれるの?」


「あぁ、人用のとデカいの一台ずつ売ったらお前もこれを買えるだろ?」


「よしっ頑張って売ってくるよ。でさ、こんなのって作れる?」


と折り畳み式のキックボードを絵に描いて説明する。


「作れるがこんなに車輪が小さいと道なんて走れんだろ?」


「まぁ、走るところは限定するから大丈夫。もし作れたらいくらぐらいになる?」


「そうだな、まけてやって金貨1枚ってところだな」


キックボードが金貨1枚か。めっちゃ高いな。が、ここに無いものをオリジナルで一から作るとこれぐらいになるのかもしれん。


「わかった。お金貯まったら発注しにくるよ」


「おう」


でベーリカに火酒を持って移動。


「おー、カナタ。待ってたぞ!」


「えっと、100本あるけど何本必要?」


「全部だ」


「え?」


「ほれ、金貨1枚」


「えっ?えっ?」


と驚いている間にそれぞれが荷車から酒を持っていった。あっという間の完売だ。


荷車をザイルに返しに行く前にこの荷車が欲しい人を聞いてみる。


「これと同じのが金貨10枚、馬が引く大型のが金貨30枚だって」


「そうか、やっぱり高ぇな」


「そうだね。でも俺はお金を貯めてこれを買うつもりなんだ。あんなたくさんのトウモロコシを俺でも運べたんだからね」


「そうだよなぁ。あれ馬が引く量だろ?それを軽々と人が引けるなんて驚きだよな」


皆が考えるそうなので取りあえず荷車をザイルに返しに行き、またベリーカに戻る。そして好きに使えと言ってくれた空き家に案内してくれた。



夜になり宴会を開いてくれる。

バーベキューで焼き肉食べ放題だ。


大勢が集まってそれぞれが火酒を飲んでかーーーーっ!と楽しそうだ。男連中ばっかりだと思ってたら奥様方や娘さん達まで集まって来た。


俺は肉に夢中だ。久々のバーベキューは楽しい。


「ねぇ、あんたどっから来たの?」


ポニーテールの女の子が話しかけて来た。俺の黒髪が珍しいみたいだ。


「エスタートだよ」


「えええっ!あんな遠くから来たの?」


「そうだよ。これからここで仕入れて色々な所に売りに行くつもりなんだ」


「あんたいくつ?」


「ん?17歳だよ」


「えっ?とっくに成人してんの?わたしと一緒ぐらいかと思った」


「きみ何歳?」


「14歳よ」


中2・・・


「なんでぇ、カナタ成人してたのか、ほら飲め飲めっ」


「お父さん、私にもちょっと頂戴よ」


「おまえにはまだ早いっ。それにこんな上等の酒を飲ませられるかっ」


「ケチッ」


「ごめん、俺飲めないんだよ。このジュースで十分だよ」


「なんだよ、男の癖に酒飲め無いのか?」


「いやまぁね・・・」


と言いつつも無理やり飲まされそうになったので、オレンジジュースで割って飲んだ。これが結構旨い。


調子に乗って飲んだ叶多はバーベキューの楽しさもあり、一気にテンションが上がる。


「わーっはっはっは」


「お、調子出てきたじゃねーか。ほれ飲め飲め」


そして皆で輪になって踊ったりして騒ぐ。めっちゃ楽しい。ここにクロノを連れて来てやれば機嫌が直るだろうか?


そしてどんどん飲まされていく叶多はフラフラになっていた。


「おーい、カナタが潰れちまったぞ、誰か送ってやれ」


「だいひょうぶ だいひょうぶ 酔ってなんかヒックいないから」


カナタは男連中に担がれて家に運ばれていったのであった。



ーエスタートギルドー


「カナタは?」


「帰って来てませんよ」


「いつになったら帰って来るのよっ」


「知りませんよっ。私が聞きたいぐらいですよっ。いい加減ご飯食べるなり何なりしてください。倒れますよっ」


「いらない」


「おい、女神さんって飯食わなくても大丈夫なのか?」


「どうでしょうね。ご機嫌はずっと斜めですけど、元気は元気みたいですよ」


「しかし、カナタの奴、しばらくってどれぐらい帰って来ないつもりなんだ?」


「どうでしょうね。もう帰って来ないとかないですよね?」


「あぁ、金はすぐに返すといってたが、稼げなくても銀貨10枚ぽっちじゃすぐに足りなくなるだろうから、2週間ぐらいしたら戻って来るとは思うけどよ。女神さんの方が持たないんじゃないか?」


「なんかちょっと可哀想になってはきましたよね。ここで皆にちやほやされたら機嫌直りませんかね?」


「いや、また変なヤツが来ても困るしな」


「そうですね・・・」




翌朝、叶多は気持ちが悪くて目が覚める。


「うげぇ、気持ちが悪い」


トイレでオロロロとしながら、ここはどこだ?と記憶をたぐる。


あ、ベーリカの家か。昨日酒飲んだんだ。段々と記憶が戻って来る。


そして水を飲んではオロロロ、水を飲んではオロロロとしてようやく気持ち悪いのが収まってきた。頭がガンガン痛むのでベッドでうんうん唸ってると誰かがやって来た。


「はい・・・」


泥の様な顔で扉を開けるとそこにはポニーテールの女の子が居た。


「あ、あのどちら様ですか?」


「ひっどーい、覚えてないのっ?」


「ごめん、なんか記憶があやふやで・・・」


「私はリンダ。まぁ、カナタは私の事をずっとクロノって呼んでたけど」


「え?」


「私の事を女神だーっとか言い出してその後ずっとクロノって呼んでたのよ。そんなに私が女神に見えたの?」


「お、俺なんか変な事を言った・・・?」


「ずっと守ってやれなくてすまんとか、俺が絶対になんとかしてやるからとか言ってたけどなんのこと?」


「あー、ごめん。俺そんな事を言ってたのか・・・」


リンダという少女は父親の仕事の手伝いに行く前に俺の様子を見てこいと言われて来てくれたらしい。


「心配かけてごめんね。飲み慣れない酒飲んでみっともないところ見せちゃったね」


段々と記憶が甦ってくる。この娘は14歳の娘だ。飲む前に話しかけてきてくれたんだっけ。その後記憶がない・・・



二日酔いでしょとなにやらスープを作ってくれるようだ。気持ち悪いからと言ったけど、何かお腹にいれないとダメと言われて座らされた。


作ってくれたのは干肉に溶き卵と唐辛子だろうか?少しピリ辛のスープだった。とても美味しい。


「リンダさん、料理上手だね。すごく美味しいよ」


「そう?良かった。お父さんも二日酔いの時はこれしか飲まないの。弱いくせに酒好きだからさ」


そう言ってニコっと笑うリンダはとてもチャーミングだ。


「で、クロノって女神と同じ名前の人?」


ブーーーっ


「きゃあっ!」


「ご、こめんっ。俺そんなに何回もクロノの事話してた?」


「機嫌直って良かったとかから始まって、私にお肉食べさせてくれて、守る力がなくてすまんと謝り出して、それから俺が絶対になんとかするってのを繰り返してたよ。恋人?」


「いや、知り合い・・・」


「知り合いってだけ?」


「まぁね。ただ、あいつの大事な物を取り返さないといけなくてね。それは俺にしか出来そうにないからそんか事を言ってたんだと思う」


「へぇ、ただの知り合いの大事な物をねぇ」


「まぁ、それが無いと俺も困るから自分の為だよ」


「ふーん。じゃ、恋人じゃ無いのよね?」


「それは違うよ」


「じゃあ、今日晩御飯作りに来てあげよっか?」


「あ、ごめん、あちこちに行商に出るから帰ってくるかどうかわかんないし、自分でも作れるから大丈夫だよ。お気遣いありがとう」


「ふーん。女の子の好意を断るんだ」


「いや、女の子が男の家に晩御飯とか作りに来ちゃダメだよ」


「私は彼氏もいないし、カナタも恋人いないんでしょ?問題ないじゃない」


「いや、お父さんも心配するでしょうが」


「お父さんはあいつは出世するから今のうちに唾付けとけだって」


そう言ってクスクス笑うリンダ。


「いや、その、俺はお金を貯めたらやることあるから、その・・・誰かと付き合うとか・・・」


「ぶーーっ」


「ご、ごめんねっ」


叶多は不思議だった。元の世界で女の子からアプローチなんてされた事は無いが、ここに来てから妙にモテてる気がする。もしかした召喚された影響なのだろうか?強い男がモテると聞いたけど、強さなんて無いからな俺。


しかし、酔ってこの娘にクロノと間違えてそんな話したのか。自分でも気付かないうちに気になってるのかもしれん。取りあえず銀貨10枚はもう返せるから火酒を利子代わりに買って一度戻ろう。



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