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天才少年は魔法が使えないけれど、  作者: 阿田 雨
第一章
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第九話:名前にはそれなりの理由が、


 ウツイは、少し戸惑いながらも、マオに対して、


「おはようございます」


 と返事をする。すると、他の生徒もウツイたちを向いて、おはようと挨拶を返してきた。


 しかし、ノイズはなぜマオがここにいるのか分からず、その場で固まってしまった。


「あれ? ノイズは挨拶とかはしないの? さっきから固まったままだけど」


 すでにマオは、ノイズの事に気づいており、ノイズの方を見ながら、不思議そうな顔をしている。しかし、ノイズは何か言うわけでもなく、無視を決め込むのだった。


 黒板には席順が書かれた大きい紙が貼られていた。二人は黒板の方に近づいて、自分の席を確認する。そうして、確認し終えると、二人は自分の席に向かう。


 しかし、ノイズは少し嫌そうな顔をしていた。ウツイは何事もないように自分の席にすぐ座る。ノイズは何かの間違えではないのかと、自分の席に向かっていた足を止め、もう一度黒板に貼られた席順の紙を確認する。


 そうして、二度目の確認を終えると、大きくため息をついた。そうして自分の席に向かう。


 自分の荷物を机の横にかけ、席に座る。すると隣の席の生徒がそわそわしながら、こちらをにやにや見ていることに気づく。


「なんだよ? 何か顔についてるか?」


 ノイズがそう聞くと、隣の席の少女はにたにたしながら、


「さっきから、嫌そうな顔をしてるけど、何かあった? それとも、私と隣なのが嫌なの?」

 

 と、言ってきた。もちろん、隣の少女というのはマオのことである。ノイズは、まだ彼女との関係性に慣れておらず、話にくいのだった。


「……別にそういうわけじゃ」

「今の間は、完全に嫌そうな感じだったよ」

「いやいや、嫌いじゃないよ。マオの事は。ただ、ちょっと距離感が」

「距離感って何? 人と会話するときは距離が大事なの?」

「大事……大事だと思うよ」

「へぇ。それじゃあ、ノイズから離れて話しかければいい?」


 マオは、突然立ち上がり、ノイズと少し距離を離す。ノイズは何をしたいのか、よく分らなかったが、マオが結構純粋な子だということに気づく。


「ねぇ! これくらい離れればいい?」


 マオは、ノイズから三歩ほど離れて、クラス中に響くくらいの声で、ノイズに話しかける。ノイズは、めんどくさそうに立ち上がり、マオの方に近づき、マオの頭を優しくたたくと、


「そういうことじゃないだろ」


 と、冷静な顔で、マオにツッコミを入れるのだった。


 そうして、二人は自分の席まで戻ると、会話を再開するのだった。


「なぁ、マオ。Zクラスってどういう所なんだ? あまり、知らなくて」


 ノイズは、マオに向かって純粋な質問をするも、マオは怪訝そうな顔を浮かべている。


「もしかして、何も知らないの?」

「知らないも何も……。何かあったのか?」


 ノイズが、そう聞くと、マオは今まで見たことのないような深刻な面持ちをする。そんなマオに、ノイズは驚きながらも、マオの話に耳を傾ける。


「実はね、一年前に、この学校で殺人事件があったの。それで、たくさんの死傷者が出たの。その犯人が魔族の子でね。犯人の妹さんが、実はいじめられてたんだ。理由は、たしか、角が生えていて気持ち悪かったから、とかだったかな」

「それで、姉が怒りのあまり?」

「うん。妹さんは、あんまり魔法の才能もなかったし、非力だったから、反抗できなかったみたいで、自殺しちゃったの。それで怒った姉が学校に入ってきて、無差別に人を殺したの」

「そうだったのか……。でも、それと、Zクラスとは関係ないよな?」


 ノイズは、興味津々で聞いていたが、マオの顔はさっきからずっと浮かれない顔をしている。


「それで、学校側が、人間とは違う種族の子どもを、一律で問題児として扱うことにして、このZクラスに押し込むことにしたの。それが、このZクラスの正体だよ」

「そうだったのか」


 ノイズは、思ったよりも深い理由で、変な事を聞いてしまったと、反省する。マオも、この話はあまり好かないのか、話が終わっても、どこか悲しげである。


「なぁなぁ。いつものお前らしくないって。聞いた僕も悪いけど、マオが悲しむことはないんだからさ。そんなに落ち込むなよ」


 ノイズは精一杯、マオの事を励ますも、マオは話したことを後悔しているような素振りをするだけだった。


 その時だった、。ウツイが突然と、


「ちょっと待って」


 と言いながら、黒板の上の方を見る。ノイズはそれに反応して、


「何かあったのか?」


 と、尋ねると、ウツイはゆっくりと口を開く。


「何かおかしくない? 入学式が始まる時刻っていつだったけ?」


 ウツイはそう言いながら、黒板の上にある時計を指さす。その時刻は八時五十四分を示していた。


「確か、九時からだったはずだ」


 教室の前の席に座っている、竜人が眼鏡を上げながら冷静に答える。


「それなら、こんなに人が少ないのっておかしくないですかね?」


 ウツイの一言で、クラス全体が一瞬凍った。


「確かにそうですねぇ。なんで皆さん来ないんでしょうか?」


 窓側に座っている天使の翼を生やした少女が不思議そうな顔をしながら、そうつぶやく。


 ノイズは静かに立ち上がり、黒板の前にある教卓に向かう。そして、おもむろに教卓の中を漁っていく。すると、ある一枚の紙が見つかる。


 ノイズは半分に折られた紙を開き、書いている内容を読み上げる。


「教室に着いた者は、荷物を置いて、九時までに体育館に集合してください」


 ノイズは読み終えると、急いで時計を確認する。時計の針は八時五十五分を指していた。


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