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天才少年は魔法が使えないけれど、  作者: 阿田 雨
第一章
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第七話:クラス分けは大事といえば大事


「はぁ」


魔法学校の新入生となるノイズはため息と共に朝を迎えた。学生寮の部屋の窓からは嫌でも起きろと言わんばかりの朝日が入ってきている。


 ノイズはゆっくりと、ベッドから体を起こし、学校に行く準備を始める。まず、洗面台に向かい、顔を洗う。冷たい水が顔全体にかかり、眠気が完全にどこかへと飛んでいく。そして、自分が夢の中にいるのではないことを自覚する。


 着替えも終えると、昨日準備をすませた学生カバンを持ち、部屋を出ていく。


 他の学生はまだ寝ているような雰囲気が廊下からはした。もしくは自分がとんでもないぐらいの遅刻をしている可能性のどちらかである。そんな風なことを考えながらノイズは、学生寮の外に出る。


 学生寮から学校までは歩いて十五分ぐらいかかる。歩く時間はそれほど多くないものの、学校の前にあるゆるやかな坂が結構な長さがあるので、ノイズにとっては、少し面倒くさいのである。


 学生寮は、街の中にあり、街とこの学生寮を隔てるように、高い塀で囲まれている。そのため、学生寮から感じられなかった、人の気配が、寮の外を出ると一気に感じられた。


 ノイズはそのまま歩いていくと、さっきまで歩いていた街路から、人気の少ない場所に出る。左の方を見ると、丘の上に、学校の塀が見える。


 そして、ノイズは、ゆるやかな坂を上っていく。


 そんな時、急にノイズは、目の前の人が気になった。なぜなら、それは人と呼ぶには少し形が違っていた。背中からは翼が。そして、しっぽも生えている。


 ノイズは、少し先の方にいる奇妙な人、竜人と呼ぶべきものなのだろうか。それに気を取られていた。


「あんな、人間じゃないやつも、魔法学校に通うのか」


 そんな風にノイズは驚きながらも、じろじろ見るのはおかしいと思い、できるだけ坂に咲いていた散りかけの桜を見ていた。そのまま坂を上っていくと、ルズコート魔法学校の姿が見えてきた。


 ノイズは魔法学校を見ても、あまり気が乗らなかった。あれから、部屋に置いてあった本は全て読み込んできたが、ここに入ってくることになった学生たちと、自分の実力差が分からなかったので、自分の知識が極端に劣っていたらと思うと、不安で押しつぶされそうになる。


 ノイズは学校の校門の前で足を止めた。学校の校門をじっくりと眺め、次に校舎の方に視線を向ける。その校舎が、前に見た時よりも、大きくなっているような気がした。それとも、ノイズが小さくなってしまったのだろうか。


 ノイズはそう思いながらも、意を決して、校門を抜けて、学校の敷地に入っていく。


 まず学校に入ってやるべきことは、自分のクラスがいったい何なのかを確認することである。


 ノイズは周りをきょろきょろと見ながら、下駄箱の方に向かう。教室にあった地図を頼りに、道をたどっていく。そうして、しばらく歩くと、校舎の入口が見えてきた。すでに入口にはクラス分けの紙が貼られていて、ある程度の人がその紙を囲い、自分のクラスを確認していた。


 ノイズはその人たちがある程度いなくなるのを少し遠くの方で見ていた。なんだかその集団は騒がしく、一喜一憂する場面もあった。だが、ノイズからしてみれば、友達なんてものはだれ一人としていないので、どこか疎外感を感じずにはいられなかった。


 そうして、ある程度の人がいなくなったので、ノイズは自分のどこのクラスなのかを確認し始めた。まず一組を確認する。しかし、そこには自分の名前はなかった。次に二組、三組と確認するが、そこにも名前はなく、最後に四組を確認する。


「四組かぁ……」


 ノイズは緊張が少しほぐれたのか、そんな言葉が口から漏れてしまう。そして、紙の上から下までじっくりと見るが、そこにも自分の名前は書かれていなかった。


 ノイズは、自分がどこかで自分の名前を見落としてしまったと思い、また最初の一組から四組まで確認するが、その中に自分の名前はなかった。


 ノイズは焦りながら、もう一度確認し直そうとすると、入口の横から人が流れてきているのに気づく。つまり、他の人はこの前の紙を確認する前に校舎の横の何かを確認してから、こちらに来ているのである。


 ノイズは急いで、人の流れをたどっていく。入口を横切ると、そこにはもう一枚紙が貼ってあった。紙の周りには人混みができていた。ノイズはそんなのお構いなしに、割り込んで入っていく。そうして、紙の一番上の部分を見ると、そこにはZ組生徒一覧表と書かれていた。


 ノイズはZ組が何なのかは知らなかった。しかし、名前の響きからも、とても危険そうな雰囲気を醸し出しているのは感じ取れる。


 ノイズは、そんな訳がないと、心に言い聞かせながらも、ゆっくりと紙の上から名前を確認していく。


「アンド、アクマ、モノ……」


 ノイズは震えた小声で、無意識に、そこに書かれた名前を読み上げながら、下に読んでいく。


「ウツイ、マキ……」


 そして、一番最後の前まで読み上げ終わり、最後の一人の名前を読み上げる。


「ノイズ」


 そこにはしっかりと自分の名前が書かれていた。


 この瞬間、ノイズの学校生活を穏便に過ごす計画は音を立てて崩れ去っていった。


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