第六話:唐突に、
ノイズは、扉を閉めた後、大きくため息をついた。結局、ノイズとマオはあれからしばらく会話をした。しかし、その内容は、マオが一方的に旅の苦労話をするもので、ノイズは途中飽き飽きしながら、退屈そうに聞いていた。
そんな様子を見たマオは少し不機嫌になり、また明日来る、と言って自分の部屋に戻っていってしまうのだった。
会話も終わり、ノイズは疲れていたので、少し眠ろうと、自分のベッドへ向かった。部屋の通路を抜けて、ベッドの方に視線を向けると、そこには一人の少女がぽつんと座っていた。
「遅かったじゃん。そんなに話が盛り上がっちゃってた?」
ノイズは驚きのあまり、唖然とした顔を浮かべている。その少女は、今日は学校でもないのに、生徒服を着ていて、なぜか狐のお面をつけている。
「なんで入ってきてるの? というか、どこから入って来たんだ?」
「まぁまぁ、そんなに慌てないでよ。私とは、ちゃんと前に会ってるんだよ? 覚えてる?」
ノイズは、その場で少し考えると、一人の少女の姿が思い浮かぶ。
「もしかして、あの貧乏神?」
「あぁ。そういえば、そういう設定だったけ?」
「確か、そうじゃなかったか?」
「いやぁ。何だか慣れないなぁ。その言い方、機械仕掛けの神とか、そういうかっこいい名前にしてって言ったんじゃん」
少女の顔は分からなかったが、どこか困っているような感じだった。そして、ノイズはベッドの所まで近寄り、少女の隣に座った。
「あら。もしかして、私に気がある?」
「全くないよ。ただ、こっちも疲れてるんだ。……というかまだ質問に答えてもらってないぞ」
「なぜ、この部屋に入って来たかでしょ? そんなの挨拶に決まってるでしょ」
少女は、さも当然の事かのように言い切る。しかし、ノイズは納得できていないようで、少し頭をかくと、
「挨拶なら、扉から入ってきなよ。というかどうやって入って来たの?」
と、少女に聞くのだった。そして、少女はすぐに、
「それは、もちろん転移魔法だよ」
と答える。しかし、ノイズはまだ納得できていないのか、
「……その転移魔法ってのは、一体何なんだよ?」
ノイズが、そう尋ねた。すると、少女は突然、笑い声を発する。
「そんなの、教える訳ないじゃん。知りたかったら、知識をつけるのね」
「知識をつけるために聞いてるんだろ?」
「そういうのは本を読んで学ぶの。とりあえず、本棚にいくつか本を置いといたから、あれは絶対に覚えておいてね」
「えっ。そんなのあったか?」
「まぁまぁ。それじゃあ、また会おう」
少女は一方的な会話を終わらせると、指を鳴らした。そうして、入学試験の時と同じように姿が一瞬にして消えた。
そうして少女がいなくなると、ノイズはそのまま本棚に向かった。すると、そこにはなかったはずの本が大量に並んでいた。
「あいつが、選んだやつか」
ノイズは一冊の本を手に取った。表紙には、魔法学の歴史と書かれている。その本は、とても分厚く、片手では持てないほどだった。それらが、後数十冊並んでいる。
ノイズは、それを持って机に座ると、すぐにその本を開いて、読み始めるのだった。
それから本を読み始めて、時間が経った。それに気づいたのは、隣から何だか騒がしい音がしたからだった。
ノイズは、窓の外を、椅子に座ったまま確認する。すでに、外は真っ暗だった。机の上の方に掛けてある時計は、すでに二時を指していた。
しかし、ノイズはまだ本を読んでいたかった。できれば、この一冊は読み終わりたかった。しかし、隣からの騒音によって、完全に集中力が切れてしまった。もう一度、読もうとするも、騒音の方に意識を取られる。
するとノイズは、何かを思い立ったかのように、急に立ち上がり、そのまま部屋を飛び出す。
そして、ノイズは隣の部屋の前までやってくると、そのまま強く扉を叩いた。
ノイズが、しばらく待っていると、扉が開き、中から人が出てきた。
「申し訳ないけどね、少しうるさいよ! 静かにしてくれな……」
ノイズが、そこまで口に出すと、勢いがなくなった。なぜなら、隣にはマオが住んでいるものだと思っていたからだった。しかし、そこから出てきたのは、ノイズよりも身長はずっと高く、すらりとした体をしている男が出てきたからだった。その男は眼鏡をかけていて、こちらをにらんでいるわけではないが、顔がとても怖い。
ノイズは、それに完全に怖気ついてしまい、その場に立ち尽くす。
「すいません。もう少し静かにしますので」
男は冷静にそう言いながら、扉をゆっくりと閉めた。
ノイズは、隣の方に視線を向けると、名札があり、そこにはドックと書かれていた。
ノイズは一瞬殺されるのかと思ったが、穏便に済み、心の中で一安心する。そして、ノイズは首を傾げながら、自分の部屋に戻ろうとしたときに、ふと、自分の部屋の前にある部屋に近づいた。
そして、名札を確認すると、そこにはマオと書かれていた。
「隣って、こっちの事かぁ……」
そう言って、ノイズはすぐに部屋に戻ると、そのままベッドに行き、就寝するのだった。