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天才少年は魔法が使えないけれど、  作者: 阿田 雨
第二章
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第三十九話:相談したいことが、


 ノイズは、自分の部屋の反対側の扉をノックする。すると、マオの声がして、しばらく待つと、マオが扉を少しだけ開けて、顔を出す。


「何でしょうか? ってノイズじゃん。何かあったの?」


 マオは、珍しい客に対して、驚きながらも、心配そうな顔をして、ノイズを見ている。


「いや、大事な話ってわけじゃないんだ。ただ、少しだけ相談に乗ってくれないか?」


 ノイズが申し訳なそうに聞くと、マオはしばらく悩んだのちに、


「全然いいよ。それなら、私の部屋に入って」


 と笑顔で扉を開けて、ノイズをマオの部屋に招いた。


 マオの部屋は、ノイズ何もない部屋とは違って、可愛らしい印象を持たせるような部屋だった。床には、薄い桃色をした絨毯が敷かれていて、ベッドもそれに合わせるように明るい色をした毛布になっている。


「まぁ、狭いけど、そこに座ってよ。これクッションね」

「あぁ。……ありがとう」


 ノイズは、マオからベッドの上に置いてあった、少し大きめのクッションを、戸惑いながら受け取ると、それを絨毯の上に置いて、そこに座った。


 マオの部屋は、どことなくいい匂いで満たされていた。


「それで、相談ってなにかな?」


 マオはノイズの隣に座ると、興味津々で聞いて来た。ノイズは他人の部屋の空気感に慣れなていないのか、むずむずしている。


「あぁ、相談だよな。実は、運動会の会議で、司会の人を挑発してしまったというか、挑戦を申し込んでしまったというか……」

「なるほどね。司会の人が煽ってきたから、それに対抗する感じになっちゃたってことだね」

「そこまで言ってないのに分かるのか?」

「だって、ノイズの性格からそんな感じって分かるもん」


 マオは、当然のことのようにそう言った。ノイズは、自分の心を見透かされて、何だか恥ずかしくなりながらも、悩んでいる表情を浮かべている。


「実はな、そういう風になったのは、あまり本心ではないというか。僕は、別に運動会を頑張りたいわけじゃなかったんだけど」

「言いたいことは分かるよ。ノイズはクラスメイトが馬鹿にされたり、危険なことに巻き込まれてたりしたら、ほっとけない性格なんだよね。まだ、一か月しか過ごしてないけど、それはよく分かってるよ。でも別に運動が好きってわけじゃないから、悩んでるんだよね」


 マオは、ノイズに寄り添うように、優しい口調で、ノイズと話をする。ノイズは少し笑いがこぼれている。


「そっか。マオには全部お見通しなんだ。そっか。なぁ、僕はどうすればいいのかな?」

「それは……」


 ノイズは、マオの方を見るように、体ごと回転させる。マオも、それにこたえようとするも、すぐには答えが出ずに、ノイズの顔から逸らすように、窓の外の綺麗な星空を見ていた。


「……簡単だよ」


 小さく呟くと、マオは立ち上がって、


「私が応援する! そしたら、ノイズはめちゃめちゃ頑張る! これだけでしょ! 悩むことなんかないんだよ。全力を出し切れば、大体のことはどうにかなるんだよ!」


 と勢いに任せて大声で発言する。きっと、隣の部屋から注意されるのは分かっていたが、これだけは言っておくべきだとマオは感じた。


「そうだよな。そうだよな! 僕何で迷ってたんだろう。よし! そうとならば、明日から気合いだすぞ!」


 ノイズも、マオに続いて立ち上がる。ノイズとマオは少し見つめあった後、二人で笑いあった。


「というか気合いを出すなら、明日からじゃなくて今日からでしょ?」

「は?」

「よし! 今日から私の部屋に毎日来て、それで私がみっちりと教え込んであげる!」

「分かった!」


 ノイズは大きな声で返事をすると、そのまま急ぎ足で部屋を出ようとする。しかし、マオにはノイズの魂胆は見え見えなわけで、すぐにノイズはマオに首根っこを掴まれる。


「いやだ! 帰る! 頑張るのは当日だけでいいんだ!」


 ノイズは、足だけは機敏に動いているが、力が強すぎて、その手を振りほどくことができないでいた。


「そんなんだから、くよくよしちゃんうんだよ! 体と一緒に根性も鍛えてあげるよ!」


 マオの言葉には、完全に善意しか含まれていなかったが、ノイズはこの言葉が死刑を言い渡されているかのように感じられた。



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