第三十八話:会議で煽るのは、
「ノイズずるいよ! 私も運動会出たかったよぉ」
マオは、机に突っ伏して、さっきから泣きわめいている。今は昼休みの時間だ。昼ご飯も食堂で済ませて、教室に帰ってきたところであった。そして、帰ってきてすぐに、このような状態になってしまたのであった。
「泣くなよ。僕が代わりに出るからさ。ね? 泣くのはもう止めにしようよ」
「代わりにって、私が出なきゃ意味ないじゃん。うわーん」
マオは運動会に出られなかったことが、どうしても悔しいようで、何度なだめても、泣き止むことはなかった。
「どうしたんだ?」
後ろから、ドラコが眼鏡を上げながら、不思議そうな顔をしながら、マオの事を見ている。
「さっきから、運動会に出られない事が嫌みたいで、泣いてるんだよ」
「そうか。そういうときもあるだろう。私も出られなくて、少しばかりは悔しい」
口ではそう言っているが、ドラコの顔からは、悔しそうな雰囲気はなく、声色も全く興味がないのが分かる。
「しかし、運動会というのは、種目に参加すること自体以外にも必要な役割があるだろう?」
「なにそれ! 何があるの?」
マオは、一瞬にして泣き止み、ドラコの方を振り返った。ドラコは眼鏡一度上げると、
「簡単だ。応援だ」
「応援!?」
「そうだ。我々の熱意を、協議をしているノイズやウツイたちに届ける。それが応援だ。応援というのは素晴らしいもので、応援のあるなしでは、勝率にも影響がある」
「本当に! それはすごいね! さっそく図書館に行って、応援について勉強しなきゃ!」
マオは、そう言うと、席を立ちあがり、気合いの入った顔で、教室を飛び出していく。
その様子を眺めながら、ドラコは一瞬微笑み、
「単純だな。ノイズも、そろそろ人間の使い方を覚えた方がいいぞ」
「人間の使い方じゃなくて、操り方だろ」
「そうやって捉えることも可能だな」
そう言うと、ドラコは自分の席に向かって歩き出した。ノイズは、ドラコの恐ろしさに気づくのであった。
そんなことがありながらも、順調に授業は進んでいき、すぐに放課後になった。
「はぁ。引き受けたはいいけど、やっぱり面倒だなぁ」
ノイズはため息まじりで、階段を上がっていく。
「ここの空気感あんまり好きじゃないんだよなぁ」
会議の会場である五階まで上がってくると、そう言いながら、廊下にたまっている生徒たちを眺めながら、ノイズは嫌そうにそう言った。
そして一年一組までやってくると、そのままクラスの中へと入っていく。
すでに他の生徒はきちんと座っていて、ノイズは自分が遅刻していることをそこで初めて知る。
「Zクラスの方ですね。初日から、遅刻とは本当に最低ですね」
前にいる司会を務めている生徒から罵声を浴び、他の生徒もくすくすと笑っている。
ノイズは、急いで席に座ろうと、空いている席を探すが、教室を見渡しても、空いている席はないようであった。
「言い忘れていましたが、雑魚……。失礼しました。Zクラスの方に座席の用意はないので、後ろに立っていてください」
司会がそう言うと、他の生徒は、こちらを見ながら笑っている。憐みの視線がノイズの方に集まってくる。
ノイズは今すぐにでも、この場を去ろうかとも考えたが、ここまできたら、笑いものにでも、何でもなってやると思い立ち、生徒たちの後ろに立った。
「はぁ。それでは、会議の方を始めます。よろしくおねがいします」
司会がそう言って会議は始まった。
会議といっても、何か話し合うということではなく、連絡事項等々を伝えられる場であったので、会議は淡々と進んでいき、最後に質問を受け付けることになった。
すると、一人の生徒が手を挙げた。司会が指名し、その生徒は立ち上がると、ノイズの方を指さして、
「なんで、Zクラスの方が出場するのでしょうか? 彼らは問題児の集まりです。運動会出たとしても、何か迷惑を被るのはこちらなのですよ。正気ですか?」
その生徒は、真面目な口調でそう言った。司会の人は、少し笑いそうになるも、すぐに平静を装い、
「確かにその意見あるでしょう。しかし、今回のZクラスの方々は厳しい制限を設けています。ですので安心してください。まぁ、それもあって弱いチームになってしまうので、見世物になってしまうという懸念点はありますが」
司会の人は、遠回しにノイズの事を馬鹿にする。さすがのノイズも鼻についたのか、負けじと手を挙げる。
しかし、司会の人はそれを無視して会議を終わらせにかかろうとする。
「それでは、質問は以上ですね。それでは、これで終わりとさ……」
「ちょっと待てよ」
ノイズは苛立った口調で、司会に向かってそう言った。司会はため息をつきながらも、
「なんでしょうか? どうでもいいことなら、答えませんよ」
と、めんどくさそうにノイズに向かってそう言った。
「Zクラスは今回の運動会を優勝しても問題はないんだよな?」
ノイズが、挑発するようにそう言うと、司会は笑いながら、
「もちろんです。勝てるのであれば」
と、ノイズに挑発し返す。ここで、ノイズの心の炎は燃えあがっていた。




