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天才少年は魔法が使えないけれど、  作者: 阿田 雨
第一章
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第四話:奇跡は期待してないときの方が、


「ただいま」


 ノイズは、体をふらつかせながらも、無事に家に帰ってきた。片道三時間もかかるだけあって、体力にそこそこの自信があるノイズでも、この道のりは骨が折れる。


「おかえり。遅かったから、心配したんだよ」


 ノイズの母親は、ノイズの帰りを待っていたのか、すぐに玄関にきて、ノイズを抱きしめる。そして、ノイズの頬に手を当てて、ノイズの顔を見つめる。


「元気なさそうだね。にゅうがくしけんで何かあったの?」

「お母さん。入学試験って何か知ってた?」


 ノイズが少し不機嫌そうな顔をしながら、母親に尋ねる。母親は、不思議そうな顔を浮かべながらも、少し考えて、


「あれでしょう? 入学するときに、何が必要かを聞くものでしょう? お母さんもね、それぐらいは知ってるのよ」


 と、誇らしげに答えるのだった。ノイズは、内心呆れながらも、それを顔に出さないように、少しほほ笑む。


「そうだね。そういえば、一番近い所を受けさせたって言ってたけど、どんな名前だったか覚えてる?」

「あれでしょう? ルーズコート学校でしょ? あそこなら、誰でも受かるって。でも、ルースコート魔法学校っていう、学校と間違えやすいから気を付けてねって、お父さんが色々調べてくれたのよ」


 母親は、いつもの優しい笑顔で、ノイズの質問に答えてくれたのだった。しかし、ノイズはその笑顔が、まるで人殺しでもした悪魔のように見えてきたのだった。


 そんな出来事があってから、しばらくすると、ノイズの家にルーズコート魔法学校からの封筒が届いていた。


 結局、ノイズは、母親に入学試験がどういうものかを説明しただけで、間違えてルースコート学校ではなく、ルーズコート魔法学校を受験したことは言えないでいた。母親が、傷つきやすい性格な事は、ノイズはよく理解していた。


 あの後、ノイズは、父親だけには真実をこっそり教えたが、父親は、それを知ってから、しばらく呆れて動けなくなっていた。また、ノイズは父親から、ルーズコート魔法学校は、国内でも最難関と言われている学校で、入れるのは金持ちの子どもが、魔法の才能が秀でている者ぐらいしか入る事のできない学校ということも教えてもらうのだった。


 それを聞いたノイズは、自分は確実に落ちていることを確信するのだった。またいつもの日常に戻るだけで、何も変わらない。


 しかし、一つ気になる事がある。それはあの少女の存在だった。教室の中で、たった一人で、窓の外を眺めていた、あの少女だ。結局、彼女が何者なのか。それだけが気がかりだった。


 そんなことを考えながら、ノイズは封筒の封を開け、中の書類を手に取る。最初に取った紙には、合否判定書と書かれてあった。これで、不合格であれば、彼女が誰だったかなんて気にならなくなるだろう。ノイズは、軽い気持ちで、その紙を見る。


「なんか合格してるんだけど」


ノイズは目を擦り、もう一度、その書類に目を通す。


「やっぱり、合格してるよなぁ……」


 ノイズは驚きを隠せないでいた。絶対に落ちているものだと、ノイズは確信していた。だからこそ、今日は不合格の通知を受け取るはずだったのだ。しかし、そこには合格の文字が書いており、封筒の中にはそれ以外に、入学の手続きをする書類などが入っていた。


 ノイズの父親は、母親の体を抱きかかえて、喜んでいた。しかし、母親は、なぜ父親が、そんなにも喜んでいるのか理解できていなく、困惑している。


 ノイズは他にも中に入っている書類を確認すると、その中には成績表があった。ノイズはそれを急いで確認する。


「筆記試験、百点。実技試験、ゼロ点」


 ノイズは、あの解答用紙を思い出す。確か、解答するところの横に文字が書いてあったはず。それを合計すると、多分だが、百という文字が現れたはず。つまり、自分はあのテストの問題をすべて正解しているわけである。


「嘘だろ」


 ノイズは、その成績表をまだ信じられずにいるのだった。

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