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天才少年は魔法が使えないけれど、  作者: 阿田 雨
第二章
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第三十七話:どうしても出たくはないが、


「これから運動会の時期だよ! ノイズ!」


 マオは、朝からノイズに対してテンション高めに、語り掛ける。ノイズは、面倒くさそうに、


「そうかよ。僕は、楽しみじゃないけど」


 と、冷たく返すのであった。すると、マオは立ち上がって、ノイズの机に手を置いて、自分の顔をノイズの顔の前まで近づける。


「なんで? どうしてなの?」

「あんまり運動は好きじゃないんだよ。マオと一回だけ走ったこともあったけど、あれっきりだろ?」

「まぁ、確かにそうだけど……。楽しかったでしょ?」

「楽しくなかったから、あれっきりなんだろ。というか近すぎるって、ちょっと離れてくれよ」


 ノイズはそう言いながら、マオの体を押して、自分との距離を離す。


 あの事件から、Zクラスは案外にも、普通だった。特に変わったところといえば、アンドの机はそのままで、彼の席が埋まることはなくなったことぐらいだろう。


 アサも、自分の体に慣れてきたようだった。というよりも、ドラコがいろいろと人間と生活するときにどういう体の使い方をすればいいのかを教えてくれたみたいで、そのおかげで、今ではクラスにも、日常生活の中にも、溶け込んでいる。


 すると、教室の扉が開き、ティーチ先生が教室の中に入ってくる。


「おはようございます」


 テンシがそれに気づいて、ティーチ先生に挨拶をする。すぐに、他のクラスメイトも挨拶をする。


「みんな、おはよう!」


 ティーチ先生の元気な声で、クラスの雰囲気は完成される。ノイズは一か月このクラスでの生活を通して、そう感じていた。


 ティーチ先生は、重そうな荷物を持ちながら、ゆっくりと黒板の前にやってきて、教卓の上に荷物を置いた。


 そして、深呼吸を一回すると、


「それじゃあ、朝の学活を始めるよ。みんな座ってね」


 と、いつもの定型文で、クラスを鎮める。そして、朝の学活が始まった。


「それじゃあ、みんないるね。今日は、離さないといけないことがあって、運動会の事なんだけど」

「運動会ですか!」


 マオは、いきなり立ち上がった。さぞ楽しみにしていたのだろう。マオは我に返り、恥ずかしさのあまり顔を赤らめながら、席に座った。


「楽しみにしてるところ申し訳ないんだけど、いろいろ学校側で協議した結果、うちのクラスでは、今から言う生徒しか出られないことになったの」

「えっ! そんな!」


 マオは再び立ち上がった。今度は、恥ずかしいという思いはないのか、残念そうな顔をしたまま立ち尽くしている。


「ごめんね、マオちゃん。私のクラスって人間じゃない人も多いから、平等じゃないって話になってね。ただ、出ないって訳にもいかないでしょう? だから決められた生徒だけ出席することになったの」

「魔法が使えてる時点で、平等ではないだろ」


 ノイズは誰にも聞こえないほど、小さく呟いた。ティーチ先生は、申し訳なさそうに、マオに対して謝っている。


「それじゃあ、発表するね。運動会に出てもらうのは、ノイズ君とケミス君、ドッグ君、ネクロちゃん、ウツイちゃんの五名になります」

「ちょっと、ちょっと先生待ってくださいよ」


 ノイズは、マオに続いて立ち上がる。何か言いたげのようだった。


「どうかしたの?」

「どうかしたのって、先生待ってくださいよ。運動会を五人で回すんですか? グレンとかは?」

「グレン君の体力テストの結果を見たら、出したらダメだよなってなるよ?」

「マキとかは? 多分ですけど、人間以外はダメでしょう? なら……」

「親御さんから、出させるなって言われてるの」

「そんなことってありなんですか。……それならマオはどうなんですか?」

「マオちゃんもグレン君と同じ理由かなぁ」


 ティーチ先生は、本当の事を言いにくそうな顔をしながら、ノイズに説明をした。


 ノイズはただグレンなどに自分の枠を譲って、運動会に出たくないだけなのだが、そのわがままは通じないようだった。


「それと、ノイズ君には申し訳ないんだけど、今日の放課後、運動会について、クラス代表が集まる会議があるんだよね。それに出てくれないかな?」

「それこそ他に……」


 ノイズはそう言いかけたものの、他の生徒が代表になったらを思い浮かべる。


 ケミスは代表者になっても、引っ込み思案だから、あまりクラスメイトを引っ張っていけないだろう。


 ドッグは無口だから、リーダーとしては不適だろうし、ケミスに至っては論外だ。


 ネクロは、あまりどういう生徒か知らないが、いつもクラスでは静かで、大人しい人という印象が強い。代表者会議で、何か言われてそのまま流される未来も見えなくはない。


 ノイズは、考えがまとまると、


「やります。絶対に」


 と即答するのだった。



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