第三十三話:天体観測にて、
「ねぇ、ノイズ。さっきから天体観測って言ってたのに、地面ばっかり見てるけど、何でなの?」
ノイズの、隣にマオは座りながら、そう聞いた。
ノイズも、今日の星空が綺麗なことは知っていた。学校の屋上から見える無数の星は、ノイズたちを照らすかのように、静かに光っていた。
「まぁまぁ、いいじゃねぇか。今日はまだ長いんだ。それに、明日はようやくの休日だ。どこか美味しいご飯を食べれる場所にでも行けばいいさ」
「それはさっきの質問の答えになってないよ! ごまかさないでよね」
ノイズとマオが言い合っている中、ウツイは、屋上に寝転がり、呆然と空を眺めていた。
「というか、まだ分かってないのか?」
「分かってないって、なにが?」
マオはノイズの言いたい事が分からず、険しい顔をして、じっくりと考える。
「やっぱり、分からないよ! 学校で誘拐をしたって事は分かったよ。でも、その後がないじゃないか!」
マオは、半ば諦めというよりも、逆ギレに近い形で、ノイズに対して文句を言った。
ノイズはため息をつきながらも、立ちながら柵の向こう側を見るのをやめて、真央の隣に座った。
「簡単だよ。本当に全部、学校の中で起きてたんだ」
「それって、つまり犯行場所もここで、監禁場所もここってこと?」
「そういうことだよ」
ノイズは、平然とそう答えた。マオは、ふーんと言いながら、ノイズと同じく柵の向こう側に見える校庭に視線を落とす。
「でも、本当にそうなの? 私まだ、屋上でアサさんを誘拐しただなんて信じてないんだよ?」
「実際、違う可能性もある。ただ、この屋上は人通りが少ない。辛うじて、一日に二人か三人が限界だろう。しかも、ここは下からだと、上の様子は何にも分からない。しかも、この柵は、鉄で作られていて、丈夫だから、この柵にアサの手を結んで、足を縛って、そのまま口を塞げば、しばらくここに放置できるだろう? その間だったら、いくらでもアリバイを作れるし。ここは都合がいい場所なんだよ」
ノイズが、そこまで言い終わると、柵の外を監視するのに疲れて、その場に寝転がった。
マオは、そんな中でも、柵の向こう側を見続けている。
「ねぇ、ノイズ。本当に、万が一本当にZクラスの中にアサさんを誘拐した犯人がいるとしたら、一体誰だと思う?」
マオが、そう尋ねても、ノイズは何も言わずにずっと空を眺めている。
「なぁ、マオ。真実っていうのはな、他人を傷つけるためだけに存在してるらしいんだ。でも、真実によって救われる命もあると思うんだ。つまり、これは選択の違いなんだ。だから。だから、僕は真実を求めるんだ」
「それは答えになってないよ。だって、それは誰が犯人なのか知ってるけど、私には伝えたくないって事でしょ? なんでなの? なんで隠そうとするの?」
マオの声色は悲しげだった。けれども、ノイズは綺麗な星空を眺めたまま、マオの質問には答えずにいた。
マオは、ぎゅっと柵を握りしめる。
「どうしても。どうしても、これだけは言っておきたかったんだ。私は、ノイズが困ってるならどんなこともしてあげられると思う。だって、友達だから。でもね、これだけは言っておきたいの。嘘とか、隠し事とかはしないようにしよう。それだけは守ってよ」
マオは、静かにそう告げた。ノイズはその言葉を真意をくみ取ることはできなかったが、その言葉に深い意味を込めているのは何となく理解できた。
「そうだな。隠し事はなしにしようか」
ノイズは、そう言うと、体を起こして、マオの横につく。
「犯人は多分、アンドだよ」
「……それって本当?」
「あぁ。あいつ以外いないよ。絶対に」
「なんで。どうして? そんなことする必要はないはずでしょ?」
「そうだな。そんなことはする必要がない。だから、どうしてそれをしたのか本人に聞けばいい」
ノイズは、冷たくそう言うと、柵の向こう側を指さした。
その先には、体育館に入っていこうとするアンドの姿があった。




