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天才少年は魔法が使えないけれど、  作者: 阿田 雨
第一章
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第三十二話:全ての可能性を、


 ノイズは、紙とペンを握りしめながら、屋上へと続く扉の前までやってきた。


 扉を開けて、そのまま柵の方まで、急いで近づいていく。


 柵の外には、校庭で遊んでいる生徒たちを確認することができた。ノイズは、その様子をじっと観察するかのように見ていた。


「急に走らないでよ」


 そう言いながら、マオが屋上の扉から体を出す。その後ろにはウツイもいる。


 二人は、ノイズのいるところへと、ゆっくりと近づいていく。


「どうしたんですか、ノイズさん? そんなに慌てて」


 ウツイが、不思議そうに聞くも、ノイズは答える訳でもなく、ずっと柵の向こう側を眺めていた。


 しばらくすると、ノイズは床に座り、紙とペンを使って、何かを計算し始めた。


 マオは、どんな計算をしているのか知りたくなって、その紙を覗いているが、最初の三文を読んだところで、頭を抱えている。


 ウツイは、その様子を見ながら、


「もしかして、魔力量の計算ですか? しかも、精密な」


 と、自信なさげに質問する。ノイズは、ペンを走らせながら、


「そうだよ」


 と軽く返事をする。ウツイは、そんな簡単に言うノイズに対して、驚きを隠せないようで、信じられないという顔をしている。


 しかし、マオにはその凄さが分かっていないようで、


「なんで、ウツイさんはそんなに驚いてるの?」


 と、何気なくウツイに尋ねる。


「別に、求めようと思えば、簡単に求まるんだけど、それを正確な値で取ろうとしたときは、複雑というか、この学校で習わない範囲の事を活用しないといけないんだ。というよりも、ほぼ普通の人には不可能なんだよ。もちろん、私にだってできないよ」

「そうなんだ。へぇ」


 ウツイが、マオに説明するも、やっぱり凄さが伝わっていないようだった。けれど、ノイズが必死に計算するところを、興味深そうに見ていた。


 そして、ノイズのペンが止まる。


「できた。求められた」

 ノイズは、そう言いながら、ペンを紙の上にそっと置いた。


「そういうえば、さっきからノイズは何を計算してたの?」

「あぁ。それは、簡単だよ。いろいろな可能性を潰そうと思って」


 ノイズは、そう言いながらゆっくりと立ち上がると、柵に手をかける。


「さっきはアサは誘拐されたと仮定したけど、もしそれが真相ならば、犯人はどうやって誘拐したのかが一番の問題だった」

「それは、さっきも聞いたよ! でも、街中で情報がなかったから、どこで誘拐されたか分からないって嘆いてたよね」

「簡単な事だったんだ。誘拐された場所は、もっと根本的な場所。ここだったんだ」


 ノイズは、きっぱりとそう言った。ウツイは、その言葉が信じられないようで、


「そんな大胆な犯行だったんですか?」


 と、ノイズに質問する。ノイズは、頭を少しかくと、


「正直なところ、それ以外はないように思う。もし、ここが誘拐現場だとすれば、そこからの選択肢はいろいろある。そのために計算したんだ。まず、空を飛んでどこかへと行く。これはないと思う。まず、空に浮いた人間は思っている以上に、目立つ。まだ、生徒たちには聞いてないけど、聞いたら誰か知っているようなバレバレな犯行を犯人はしないだろう」

「確かに! 言われてみればそうかもしれない。それなら透明になればいいんじゃない? 自分の体を透明化する魔法があったよね?」

「その可能性も考えた。けど、冷静に考えてほしいんだ。透明魔法は一回使えば、それがずっと続く訳じゃないだろう? あれは、一回使った後も、体内の魔力をしようして、その状態を保っているわけだ。それを空中に飛行しながら、なおかつアサを担ぎながら。その魔力量は、ウツイでも数秒間できるかどうかぐらいだった」


 ノイズとマオが白熱した議論をしている中、ウツイが割り込むように、


「それなら、どうやって、どこにアサさんを連れて行くんでしょうか? そこまで考えられてるんですよね?」

「一応な。全ては学校で完結するんだ」

「それって、つまり……」

「え? ウツイさんは分かったの? 私、全然分からないんだけど」


 ウツイとノイズは納得したような顔で見つめあっているが、マオは何のことだかピンときていないようだった。


「よし! 今日は天体観測するぞ!」


 ノイズはそう言いながら、自分の拳を天に突き上げた。


「……おー」


 ウツイもそれに続いて、自信なさげに自分の手を突き上げる。マオは、よく分っていないようだが、


「分かんないけど、頑張ろう!」


 と言いながら、元気よく手を突き上げるのだった。

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