第二十七話:あなたの、
ノイズは、学校の屋上に来ていた。鉄格子の外側では、魔法学校の生徒たちが校庭で遊んでいる姿が見える。
「こんなところで何をしてるの?」
ノイズは、後ろから突然話しかけられて、急いで振り返る。
そこには、フードを深く被った、魔法学校の生徒がいた。
「なんだ。貧乏神じゃないか」
「だから、機械仕掛けの神だって言ってるでしょ。確かに貧乏神でもいいとは言ったけどさ、いいかげん覚えてくれていいんじゃない?」
「分かったよ。マキ」
ノイズが、息を吸うかのようにそう言うと、少女は時が止まったかのように動かなくなってしまった。
「……まだ、私と話したことないよね?」
「今ので、自分はマキっていてるようなものだろ」
「あっ。いや……」
少女は、未だにフードは被ったままだが、困惑しているのは確かだった。そして、少女はフードの上から頭に手を置いて、少し悩んだのち、
「私に手伝ってほしいことがあるんでしょう?」
「まだ機械仕掛けの神っていう設定でいくのか?」
「設定じゃないもん! 本当だもん!」
少女の顔は、ノイズからは見えなかったが、今にも泣きそうになっているのは声から判断できた。
ノイズは、ため息をつきながら、
「分かったよ。機械仕掛け。お前の協力が必要なんだ。学校が終わったら、校門で待ってるから、来てくれ」
と、真剣な顔で頼み込んだ。すると、少女はさっきまでの態度を改めて、
「分かった。早く行けるようにする」
と、ミステリアスな雰囲気を漂わせながら、指を鳴らすと、そのまま姿をくらますのだった。
* * *
そうして、学校が終わり、ノイズは校門の前に静かに立っていた。
歩いている生徒を眺めながら、ノイズは考えていた。そんな時だった。
「待ったかな?」
機械仕掛けの神は、ノイズの隣に、急に現れた。
「待ったとかの次元じゃないだろ。どんだけ待たせるんだよ。もうほとんどの人が帰ってたぞ」
「そうだった? まぁ、いいじゃない。それじゃあ、アサの家に案内すればいいんだよね?」
「まだそんな事言ってないけど、そんな感じだ。頼むぞ」
そして、ノイズはあまり気分が上がらなかったが、機械仕掛けの神と共に学校の坂を下っていった。
アサの家は、寮の先をずっと歩いていき、少し人通りが少なくなった通路を右に曲がって、そこから少しだけ歩いた場所にあった。
家は、いかにも普通で、隣に並んでいる家と何ら変わりはなかった。
「ここのはずだよ」
ノイズは、最初信じられなかったが、機械仕掛けは目の前にある家をアサの家だと断言する。
「なるほどな。とりあえず、行ってみるか」
ノイズは、少し緊張していたが、そんなことを考えるのはすぐにやめて、扉の前に立った。
そして、扉の横にあった呼び鈴を鳴らす。鳴らしてから、しばらく待つと、扉の奥から、一人の女性が現れた。
「何でしょうか?」
目の前の女性はただならない気配が溢れていた。今まで会った事のないほど妖美な雰囲気をまとっている。
「すいません、僕たちはルーズコート魔法学校の生徒なんですが、あなたの娘さんであるアサさんの同級生なんです。それで、昨日からアサさんの行方が分からなくなってしまって。それで、こちらに帰ってきていないのか知りたくて」
ノイズは、勇気を振り絞って、目の前の女性に説明する。
女性の目は、人を見下すような、信頼していないようなそんな目をしていた。
「うちの娘は帰ってきていません。それで十分ですか?」
女性はそう言って、すぐに扉を閉めようとした。しかし、ノイズは扉を強く掴んだ。
「待ってください」
女性は、表情を変化させることなく、ただノイズの事を見ていた。
「何でしょうか?」
「あなたの娘さんは人を殺しことがあるんでしょう?」
ノイズが、そう言うと、女性は眉をひそめた。そして、
「何のことかさっぱりです。そんなのは戯言でしょう」
と、きっぱり言うのだった。ノイズは、ここまできて引き下がる訳にはいかなかったので、頭をフル回転させる。
「いや、戯言なんかじゃないでしょう? あなたの娘さんは確かにそう言いましたよ。もし戯言ならば、あなたの愛した娘さんは気の狂った人間ということになると思いますよ」
「そうですか? まぁ、それならそうでいいですよ。もう面倒なの……」
再び女性は、扉を閉めようとするが、ノイズはまた強く扉を掴んだ。そして、その手を離さないように、最大の力をこめた。
「このままなら、あなたの娘さんは帰ってきませんよ」
ノイズは、強く言い放った。そして、すぐに息を整えて、
「僕たちなら確実に見つけだします。だから、あなたの持っている情報をください」
玄関から見える、通路の横に飾ってある写真に、ノイズは熱い視線をを向けていた。




