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天才少年は魔法が使えないけれど、  作者: 阿田 雨
第一章
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第二十六話:頼みがあって、


 ドラコとの会話からしばらく経って、朝のホームルームが始まった。


 ノイズは、少しだけ、アサがいつも通りに学校にやってくるのを期待したが、そんな淡い期待はすぐに消えてなくなった。


 そして、ノイズの初めての授業も終わり、昼休みになった。


「ようやく終わったぁ」

「なんだよマオ。お疲れか?」

「そんな訳じゃないけど、まだまだ慣れないよ。あっ、もちろん楽しいけどね」


 ノイズは、隣の席に座っているマオに何気なく話しかけた。マオは、体を伸ばしながら、少しあくびをする。


「ところで、アサさんについては、何か考えてきたの?」

「もちろんだ。それじゃあ、マオに早速頼んでもいいか?」

「いいよ。なんでもするよ!」


 マオは、そう言いながら、自信満々に、胸の前で手を握りしめる。


「よし。じゃあ、街の人に聞き込みをして、アサが怪物になる前の日に、アサの事を見た人を探してきてほしい」

「えっ。それは大変だね」

「まぁまぁ。マオから他の人を誘ってみて」


 マオは、少し考えたのちに、元気よく頷いて、そのまま他のクラスメイトの所へと駆けていった。


 ノイズも、席から立ち上がると、今から食堂に向かおうとしていたケミスの席に向かった。


「よう、ケミス」


 ノイズは出来るだけ、気さくに話しかける。


「嫌でやんす」


 しかし、ケミスは何かを察したのか、すぐに否定の姿勢をとる。


「まだ要件も言ってないぞ。そんなに早く拒否をするなよ」

「絶対に面倒事でやんすよね。僕は面倒な事には手を突っ込まないと心に決めてるんでやんす」


 ケミスは、そう言いながら席を立とうとする。しかし、そんなケミスの肩を掴んで、ノイズは無理矢理、席に座らせる。


「分かった。学食をおごるよ。これでどう?」

「マオちゃんの裸の写真を三枚でやんす」

「しゃしん? なんだよそれ?」

「しょうがないでやんすね。ちょっと待つでやんす」


 ケミスはそう言うと、おもむろに机の横にかけてあった鞄を漁って、中から一つの機会を取り出した。そうして、自分の机にその機械を置くと、指をさしながら、


「このボタンを押すと、この画面の先に見えているものを写真というものとして保存できるでやんす」

「つまり、お前は、マオの裸を保存したいってこと?」


 ノイズが、不思議そうな顔で尋ねると、ケミスは少し顔を逸らす。


「そういうことではないでやんすね。今度の研究材料として、必要ってだけでやんす」

「そういうことじゃないか」


 ノイズが、冷静に詰めていくと、ケミスは急に叫びだした。


「分かったでやんすよ! 何をすればいいでやんすか?」

「……人間を竜人に変えてしまうような薬があるかどうかを探してほしいんだ」

「……そんなことでやんすか。分かったでやんす。明日までに探してくるでやんすよ」


 ケミスは、そう言うと席を立ちあがって食堂へ行こうと廊下に出ようとした。そうして、教室の扉の所まで行ったタイミングで後ろを振り返り、


「絶対に、昼ご飯を後でおごるでやんすよ」


 と言って、廊下へと出て行った。ノイズも、その後を追うように教室を出て行った。


 * * *


「ねぇねぇ。マオちゃんは何が好きなの?」

「私はね。……まぁ、何でも好きかな」


 マオは微妙な顔を浮かべながら、そう答えた。


 マオは、テンシとモノ、ウツイとグレンと一緒に食堂に来ていた。


「そうか! すごいな。好き嫌いがないのは良いことだよ。なぁ、ウツイ」

「……うん。すごいよ。マオちゃん」

「そうかなぁ。そんな褒められ事でもないよ」


 マオは、ドラコとウツイの視線を受けながら、自分の持ったスプーンを行き場もなく、皿に空いたところを何度もすくう。


「ところで、話って何なのかな?」


 テンシは、スプーンを置いて、自分の手を、膝の上に置く。そして、マオの方を見つめた。


 マオも、同じようにスプーンを皿の上に置き、口をもごもごとさせる。マオは、自分を落ち着かせるために、息を大きく吸って、


「みんなに協力してほしいことがあるんだ。嫌なら、嫌って言ってくれていいんだけど。えっと。アサさんを探すのを手伝ってほしいの」


 マオは、精一杯の声を出して、みんなにお願いをする。マオはそこまで言って、自分の足が静かに震えていたのに気づいた。


 みんなは、少しお互いの事を見つめあうと、グレンは吹きだして、


「そんなことなら、みんな協力するよ。そうだよな、ウツイ」

「えっ。……うん。だって私たちクラスメイトだもんね」


 ウツイが、静かにそう言うと、マオの目には涙が浮かんでいた。


 テンシは、そんな様子を見て慌てながら、


「泣かないでよ。私たちは、マオちゃんの泣いてるところじゃなくて、笑顔を見たくて協力するんだから。ね?」

「そうですね。テンシちゃんの言う通りです。私とマオさんの接点は少ないですけど。だからといって、手放すわけじゃないんですよ」


 テンシとモノがそう言って、マオをなだめるも、マオはしばらく泣いていた。



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