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天才少年は魔法が使えないけれど、  作者: 阿田 雨
第一章
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第二十五話:会話を、


 次の日、ノイズは誰よりも早く教室にいた。自分の机の上で肘をつきながら、物思いにふけていた。


 次の瞬間、教室の扉が開かれ、ドラコが入って来た。


「早いな。そんなに私と話したいか?」

「……まぁ、そんな感じだよ」


 ノイズは、ドラコの方を見る訳でもなく、どこか遠い所を見ていた。


「これは何となくだが、お前はもう全部分かってる気がしてるんだよ。気のせいか?」

「気のせいだ」


 ドラコも、ノイズには目もくれず、自分の席に座ると、そのまま鞄から勉強道具をとりだす。


「それなら、何でもないよ。……それで、少し僕の話を聞いてくれないかな?」


 それを聞くと、ドラコがはノートを開こうとした手を止めて、ノートをそっと閉じ、後ろを振り向く。


「聞いてやる。なんだ?」


 ドラコは、眼鏡を上げながら、少し興味深そうにノイズを見つめる。


「一瞬だけ、アサが自分の意志で竜人になったのかと思ったんだ。でもやっぱりそれは違う気がする。そうじゃないと思うんだ。正直な話をすれば、彼女は自らそうなった可能性が高いような気がする。もし、誰かが彼女を怪物にしてしまうことを考えたのなら、こんな短い期間での犯行はありえないから、まずクラスメイトを犯人から除外、そうなると外部の犯人ということになる。そうなれば、アサの親戚だったり、知り合いだったりが恨みを持って行動したことになる。でも、そうすればわざわざ学校まで登校させる必要がない。そんなことするなら、真っ先に自分たちが疑われることになる。なら、誘拐事件とか、行方不明とか、そういうものに偽装した方がよっぽど賢いだろうしな」


 ノイズがそこまで言うと、ドラコは眼鏡を上げ、


「つまり、君はこう言いたいんだな。クラスメイトが犯人という仮定そのものが違うと」


 と、冷静に告げる。そして、ノイズも静かにうなずく。


「もし、自分でそういった薬を投与したか、魔法を自分にかけて、登校した。でも、薬の量か、使用する魔法を間違えてしまったかで暴走して、そのまま逃走した、とかの線もあるにはあると思う。でも、それが違うとしたら、残るのは、このクラスメイトが犯人ということだけだと思うんだ」


 ノイズは、ただ自分の考えをドラコに伝えた。ドラコは、そこまで聞き終わると、大きくため息をついた。


「君はアサ自らが竜人に変わった可能性はないと言い切ったな。根拠はなんだ?」


 ドラコは、険しい顔をしながら、眼鏡を上げる。


「アサにそこまでの動機があると思うか? なぜそんなことをする必要があったのか、僕には全く分からない。疑う理由はそれだけで十分じゃないか?」


 ノイズが、そう言うと、ドラコは一瞬怪訝そうな顔をする。そして、次の瞬間には大声で笑っていた。目には少し涙がにじんでいる。ノイズは、そんな様子を不思議そうな顔で見つめる。


「いやいや、失礼した。そんなに真面目そうな顔をしているから、芯の通った根拠を提示してくれるのかと思ったら、人間の心情を理由にするとは……。少々、浅はかすぎるものだから。笑いすぎてしまった。いやはや、笑いすぎて涙が出てきたのは初めてだ」


 ドラコは、そう言いながら、自分の手で涙を拭う。


「何がおかしいんだよ?」


 ノイズは、少しいらだっているのか、貧乏ゆすりをしている。


 ドラコは、笑いが落ち着いてくると、真剣な顔でノイズの顔に視線を向ける。


「それでは君に一つ質問をしようか。人はなぜ人を殺すと思う?」

「それは、例えばその人間を恨んでいるとか、他にも、自分の大切な物を守る為とか。とにかく、理由ならいくらでもあるだろ」


 ノイズがきっぱり言い放つと、ドラコは首を横に振る。


「違うな。もっと単純だ。それは殺したくなったからだ。そこにはそれだけしかない。そういうものは、後から付け足されていくものに過ぎない。結局、人が人を殺すときは、単純化していけば、そこにはむき出しの殺意しか残っていない。つまりだ。人間の行動理由は、複雑な物ではなく、もっと簡単なものなんだ。人は殺したいから殺し、薬を飲んでみたくなったから飲むんだ。分かるか? ノイズ?」

「つまりドラコは、アサがそんなことをしてもおかしい事ではないってこと? それが君の言いたかったことかい?」


 ドラコは、一瞬だけ微笑むと、そのまま前を向きなおして、ノートを開き、自習を始めるのだった。


「ここからは、君の仕事だろう? 私も君には期待している。だから、一つだけ有益な情報を教えてやる。君の列の一番前にいるマキは、アサの家の居場所を知っている。可能性は一つでも潰しておいた方がいいだろう?」


 ドラコは、ノイズの方を見る訳でもなく、ただノートに向かって呟く。


 ノイズは今、ドラコがどんな顔をしながら、その発言をしたのかは分からなかった。


「ありがとうな。相談に乗ってくれて」


 次の瞬間、教室の扉が開いて、テンシが中に入ってくる、隣にはモノも一緒にいる。


「みんな、おはよう!」


 テンシの元気いっぱいな声が教室中に響きわたるのだった。



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