第二十話:嵐の前の、
そうして、テストは終わり、クラスメイトは帰宅を始めていた。
しかし、ノイズは、机に突っ伏したまま、一度も身動きせずに止まっていた。
「完全に死んじゃった」
マオは、そんなノイズを見ながら、心配そうな顔をしている。
結局、あの後、ノイズは今回のテスト形式に対応した作戦が考えられず、テストに惨敗した。
ノイズは、あの時の、試験官の少しあざ笑うような、けれど笑ってはいけないから、頑張ってこらえた末に出てきた、あの笑い声が、脳みそにこびりついていた。
「すまないな。少しだけいいか?」
そんな二人の後ろから、アサが申し訳なさそうに話しかける。
「これが、君の記録用紙だ。ずっと私が持っていたからな。最後に、君のシャトルランのスコアを書けば、完成するはずだ」
アサはそう言いながら、記録用紙をノイズに手渡そうとするも、ノイズは未だに動いていない。
「ごめんね、アサさん。私が代わりに受け取っておくよ」
マオはそう言って、アサから紙を受け取る。マオは、ノイズのスコアをまじまじと見ていく。
「なんか、全体的に低いね」
マオが、ぼそっと呟く。すると、ノイズは少し頭を浮かすと、そのまま勢いよく、机に頭をぶつける。
そんなノイズの姿を見たマオは、手を前にして、顔を横に振って、
「冗談だよ。冗談だって」
マオは、ノイズをなだめる。そうすると、ノイズはおもむろに顔を上げて、
「それなら、マオの成績表を見せろよ」
「えっ。別にいいよ」
マオは、そう言いながら、成績表をノイズに見せる。そうして、ノイズは、まじまじとそれを見つめる。読み終わると、マオの机の上に乱暴に置くと、また机に突っ伏してしまうのだった。
「そんな絶望することないって。ねぇ。元気出してよ」
「そうだ。早く元気を出せ」
すると、突然後ろからドラコがやってきて、ノイズに話しかける。マオが、不思議そうな顔をしながら、ドラコの方を見ていると、ドラコは、急にノイズの襟をつかんで、体を上げる。
「このまま、くよくよし続けて、この後の補習を逃れるつもりなのだろう? 安心しろ。私も一緒に付き添ってやる。しっかり、しごいてやるぞ」
ノイズは、あの試験官が、得点が基準に満たしていないとかで、この後補習が行う、と言っていたことを、はっきりと覚えていた。だから、このまま机に突っ伏して、逃れる予定だったのだ。
しかし、それをドラコに見透かされていた。ノイズは慌てて、体を振り回すも、ドラコが手を離す素振りは一切なかった。
「いやだ! 補習とかいやだ! 補習とかしても、魔法が使えるようになったら、それは奇跡なんだ! 今日は、読みたい本があったのに! 時間たっぷりあると思ったのに! というか、なんでドラコが一緒なんだ!」
「いやか? 私も暇ではないんだ。一瞬で終わらせるか、それとも私の貴重な時間を使って、お魔をじっくりと痛めつけるのどっちがいいか、選ばせていいぞ」
「それは答えになってない! しかも、どっち選んでも、やばそうじゃないか! いやだ! いやだ!」
ノイズは、騒ぎ立てるも、ドラコの力の前には無力で、そのまま引っ張られるのであった。
* * *
その夜。ノイズは、机に座って、できるだけ集中して本を読んでいた。しかし、どこもかしも痛みが走り、あまり集中できていなかった。
「大変そうだね」
窓枠に手をかけながら、フードを深く被った少女は、ノイズを嘲笑していた。
「そうだな。というか、勝手に入ってくんなよ」
ノイズは気だるげに、少女に向かって言い放つ。しかし、ノイズはずっと本を読んでいる。
「まあ、私も今日は疲れちゃったよ。そういえば、明日も早く学校に行くの?」
「えっ? 急にそんなことを聞くなんて、どうかしたのか?」
「いや、なんでもない。ただ、少しだけ気になってね。それじゃあ、お休み」
ノイズは、気になって、少女のいる窓を振り返る。しかし、すでに機械仕掛けの神を名乗る少女の姿はどこにもいなかった。
「急にやってきて、それだけ言って去るとか、自由人過ぎるだろ」
ノイズは、ぶつぶつ文句を言いながらも、少女の発言が、何だったのかを考察するのだった。




