第十七話:告白
「もう、無理だ。十分。いや十五分休まないか?」
ノイズは、体育館の床に倒れこみ、死にかけの様子を呈していた。
「まだ、反復横跳びと上体起こしが終わったばかりだ。ここで休んでいると、他の者の迷惑になる。早く、長座体前屈に移るぞ」
アサは、そんな様子のノイズはおかまいなく、そのまま長座体前屈をする場所まで移動していく。
ノイズは、体を無理矢理起こし、その後を追うも、全身に、すでに激痛がはしっていた。
二人は長座体前屈を行う場所までやって来た。最初は、アサから行うことになっている。
アサは、体育館の壁にぴったりと背中をつけ、目の前の箱に手をしっかりとつけると、そのままゆっくりと前屈をしていく。
「えっと。六十二センチね」
箱の隣にある定規を見ながら、ノイズは記録用紙にメモをしていく。
「というか、すごいな。さっきも、上体起こし三十八回とかだったし、怪物かよ」
「そんなことはないだろう。誰にだってできるはずさ」
「誰にもできないよ。僕は多分いくら経っても無理だろうよ」
「そんなことはないだろう。君にも、いつかできる日が来るはずだ」
アサは、そう言いながら、二回目の計測を行う。
「次は、六十一センチね」
ノイズはそう呟きながら、必死にメモを取っていると、
「なぁ。ノイズ。いやノイズ君のほうがいいか?」
「ノイズでいいよ」
ノイズは、アサが終わり、すぐに交代しようとるも、アサは何か言いたげに、ノイズに話しかける。
「しながらでもいいんだ。少しだけ私のどうでもいい話を聞いてはくれないか?」
ノイズは、妙に深刻な顔を浮かべているアサが、少し心配になるが、
「あぁ。いいよ。俺は何も言わないから、何を言っても大丈夫だぞ」
と、背筋を体育館の壁にそって伸ばしながら、言うのだった。
「私は、人を殺したことがあるんだ」
ノイズは一瞬体が止まるが、そのまま前屈をする。精一杯、自分の力を振り絞りながら、箱を押していく。
「二十九センチだ」
「なぁ、なんでそれを僕に言ったんだ?」
ノイズは、体を元に戻しながら、そう聞くのだった。
「君になら。いや、君だけに告げようと思ったんだ。クラスメイトの中で唯一、君になら、打ち明けてもいいと感じたから」
「それは理由になってないぞ。何一つとして、僕に話した理由にはなってない」
ノイズは、背中を体育館の壁に預けながら、アサの顔を見つめながら、そう言った。
アサは少し困ったような顔をして、
「本当にただの直感なんだ。だから気にしないでほしい......。これも理由になってないよな? うーん。なんと言うべきなんだろうか?」
「それを聞かれても、困るよ。まぁ、なんとなくは分かったよ」
ノイズは、それだけ言って、ゆっくりと、体を伸ばしていく。
「ただ、それだけなんだ。君に何かをしてもらいたい訳でもないんだ。ただ、私の罪を覚えてくれおいて欲しかったんだ。すまないな。急にこんな話をするなんて。私も君のように疲れてるのかもしれないな」
「まぁ、そうかもしれないな。ところで、終わったけど、何センチだった?」
「二十二センチだ」
アサは、さっきまでの深刻そうな顔はすでにしていなかった。
「早く、外に出ようか。次は、立ち幅跳びだ」
アサはそう言って、そのまま体育館の入口に向かっていった。ノイズも慌てて立ち上がり、その後を追うのだった。




