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第1話 調査報告

ダンジョン調査から戻った翌日の朝、目を覚ますとラナは寝室にいなかった。


文字念話にラナからの伝言が残っていた。


『元気の出る朝食を用意しておきます』


こ、これは!? 今晩も頑張りなさいという意味なのか!


ラナは驚くほど夜は積極的になっていた。私の夜の体力もそれに十分応えられている。


そっち系のスキルは特に生えていないけどなぁ?


疑問に思いながらも食堂に向かう。

食堂にはクレアが既にいたが、ラナはご機嫌で朝食の仕切りをしている。


はぁ~、なんでハロルド様とレベッカ夫人、アリスお嬢様までテーブルに着いているんだ?


「おはようございます」


「おお、朝早くからすまんのぉ。ダンジョンの調査結果も早く聞きたいし、相談も山盛りじゃ。エルマイスター領はアタルの話を聞かないと何もできなくなったぞ。ワハハハハ!」


冗談にも聞こえないし、笑い事じゃないと思うけど……。


「私もアタルさんに確認したいことがあるわ」


なぜかレベッカ夫人の顔が、獲物を狙う肉食獣に見える。


「旦那様、こちらにどうぞ!」


ラナが私の座る席の椅子を引いて待っている。


なんか肌が艶々しているぅ~。


自分の生命力を、ラナに吸い取られたのではないかと、少し不安になる。


ま、まあ、妻が元気なら良いよね!


自分の体に問題はないし、昨晩は最高だったから何も問題ないはずだ。


エルマイスター家からこの屋敷に移っても、朝食の雰囲気はあまり変わらない気がする。



   ◇   ◇   ◇   ◇



朝食が終わると、ハロルド様とセバスさんだけ一緒に会議室に移動する。


レベッカ夫人はクレアと話があると言ってこちらには参加しなかった。


「それで結果はどうじゃった!」


メイドがお茶の準備をして会議室を出て行くと、待ちかねたようにハロルド様が質問してくる。


「ええ、塩は採取できそうですよ」


「なんと、それは朗報じゃ! あとはどれぐらいの量を確保できるかじゃな」


ハロルド様は喜んでいて、セバスさんも嬉しそうにしている。


「でも、後は必要な量を安定して確保できるかの検証が必要だと思います。それに塩を確保するのに必要な費用コストも問題ですが、予想以上に費用コストは掛からないと思います」


まあ、魔道具で塩は抽出できるし、魔道具も10台ぐらいは大賢者の遺産を利用して低価格で提供しても問題ない。


費用コストで必要なのは人件費だろうなぁ?


「そうじゃのぅ。必要な量が全て確保できるのが理想じゃが、半分でも確保できればのぉ」


「それに塩が確保できましても、費用が掛かり過ぎては意味がありません」


セバスさんの言うとおりだ。その辺の概算を出して、費用対効果も検討しないとダメだよね。


「それで聞きたいのですが、エルマイスター領ではどれぐらいの塩が必要なのですか?」


「どれくらいじゃったかのぉ。多い時で100ぐらいは領で購入していたが、今は30ほどだと記憶しているがのぉ」


えっ、たったそれだけ? あっ、もしかして月単位なのか? 単位が違う?


「それは1年で必要な量ですか?」


「そうです。1年で30トラム程を領で購入しています」


おふう、数年分を採取しちゃった!


今回の調査で採取した塩は300トラム近い。3~10年分の塩が確保されたことになる。


叡智アプリで地球のインターネットを調べてみる。

詳細は分からないが、日本で食用や加工用で消費される塩は年間でおおよそで80万トンとネットに情報があった。


エルマイスター領の人口は10万人もいない気がする。10万人として単純に考えれば700トラムぐらい必要だが、日本は塩分が多すぎるから、もっと少なくて済むはずだ。


この世界で食事が美味しくないと感じたのは、塩を節約していたからではないだろうか?


「どうじゃ、1年間で10トラムぐらいは確保できそうか?」


「えっとぉ~、………今回の調査で300トラム採取しちゃった。てへっ!」


いやぁ、そんなに睨まないで下さいよぉ~。


30歳手前の男の「てへっ」はまだ許されると思う。だって「ペロ」はやらなかったんだから許して欲しい。


「アタル、儂は真面目に聞いておるのじゃ。300キラム確保できたということか?」


「魔道具で塩を抽出したところ、1日で約300トラム確保できました。これが見本のダンジョン塩1号です」


真面目に話さないと、ハロルド様が怒りそうだから事務的に答え、ストレージから塩を皿に山盛りにして机の上にだす。


「アタル様、300キラムではなく300トラムなのですね?」


セバスさんが念を押すように尋ねてくる。


「はい、キラムではなくトラムです。何でしたらエルマイスター家の屋敷の庭に、塩を敷き詰めて見せましょうか?」


軽い冗談を言ったつもりだが、ハロルド様に睨まれる。


2人は皿の塩を手に取り手の平に乗せて確認して、最後に舐めて確認した。


「変な匂いもしないし、味がまろやかで美味しい塩ですね」


おお、ダンジョン塩0号を出さなくて良かった。


あっ、でも感想は聞いてみたいかも。


「本当にこれが300トラムじゃと……」


ハロルド様が独り言のように呟く。


部屋の中は一切の音が無くなってしまったような静けさになった。


「クックック、ワハハハハハ!」


突然、ハロルド様は静かに笑い始め、途中から大声で笑いだした。


「エルマイスター領も国も変わるぞ!」


ハロルド魔王が世界征服に目覚めたかぁ!


ハロルド様の悪そうな笑顔が、魔王降臨に錯覚させられた。


「これで国は安泰じゃ! 民も安心して生活できるぞ!」


良い事?を言っているはずなのに、なんで、どす黒いオーラを発して話すんだ!


「当面のエルマイスター領は大丈夫ですが、国の為と言うなら、まずは安定して確保できるのを確認しないとなりません」


セバスさんが冷静にハロルド様を諌めてくれた。


「おお、そうじゃな。それに費用も考えないとなるまい。アタル、確認は出来そうか?」


「それを相談したいと考えていました。私の作った魔道具『塩抽出魔導ポンプ1号』を3台用意しますので、長期で稼働させて検証する必要があると思います。

そして塩が含まれる量が減ったら、『塩抽出魔導ポンプ1号』を1日1時間稼働させて、塩が含まれる量が戻るか確認します」


「それは、どの程度の塩を安定して採取できるか調べるということですね? ですが海のように永遠に抽出できるとしたらどうしますか?」


セバスさんの質問はもっともだし、私も最初は大した量は確保できないと考えていた。しかし、あのダンジョン海を見てしまうと……。


「魔道具の数を増やして国の100年分ぐらい確保しますかね。

まあ、そこまでしなくとも、ある程度安定して採取できるのが確認できたら、他の階層やダンジョンも調査して、他でも採取できる場所があれば、安心して運用できるんじゃありませんか?

海とは違いダンジョンだとどうなるかも分かりませんし」


2人は驚いた顔をしている。


「そうじゃのぅ。国の事を考えるなら国王陛下と相談せねばなるまい。まあ、検証は必要じゃが、アタルが1ヶ月近くダンジョンに入るのも問題じゃのぉ」


「それに塩の採取については、当面は伏せておいた方が宜しいかと」


何か政治的な判断があるようだ。


「ああ、それなら少し提案があります」


「なんじゃ、上手く誤魔化すような方法があるのか?」


「え~と、誤魔化す訳ではなくて、ついでにダンジョンを活用する提案ですかね?」


「どういう事じゃ?」


ハロルド様だけでなくセバスさんも不思議そうに私を見てくる。


「公的ギルドに探索部を作ると言うか、公的探索ギルドを創りませんか?」


私は公的ギルドの今後の未来について提案を始めるのだった。


今後は毎日18時だけの投稿にになりますのよろしくお願いします。


私の別の作品『研修から始まる異世界転生』もよろしくお願いします!



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