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第33話 ぽよんがぁ!

階段から降りて来たラナさんは、自信に満ちた表情で笑顔を見せる。


下着とインナーでこんなにも変わるのかぁ!


さすがに下着で降りて来る事はなかったが、体のラインがスッキリとして別人のようなスタイルに見える。


「「「すごいっ!!!」」」


護衛の女性たちはそう叫ぶとラナさんに駆け寄って行く。


み、見えないじゃん!


群がる女性たちでラナさんの姿が良く見えなくなり、もっと見たいと思う気持ちでイライラする。


「見えなくなった~」


ミュウも残念そうに呟き、キティは悲しそうに尻尾が垂れ下がっている。


残念だが今は諦めるしかない。女性たちがラナさんの事を褒めながら、次々と質問をしている。


「すごくスタイルが良くなってますよ~。そんなに下着といんなあ?を付けると変わるんですね」


「ええ、着てみて私も驚いたのですが、これまでのコルセットは頑丈に出来ているのですが、やはりそれ自体の影響で自然なラインが出にくかったんですが、インナーだと厚みもないから、自然なラインが出るのではないでしょうか」


何かラナさんが誇らしげに話してる。


「でも、そんなのでウエスト部分がコルセットより細く見えるのぉ。苦しんじゃない?」


「それがコルセットより苦しくないですね。インナー全体で締め付けているので、締め付けられていることを感じるぐらいですよ。それに、肌触りが良いので、もっと着ていたくなるぐらいですねぇ」


「あとなんで胸がそんなに大きくなったの。どう考えても一回りは大きく見えるけど?」


うん、作った俺も聞いてみたい。


「インナーで胸が持ち上げられている感じですかね。それに胸を左右から押される感じがします。ほら、殿方にアピールするときに、腕で胸を寄せて大きく見せるじゃないですかぁ。それをインナーが常にしてくれていると感じですね」


そんな事を私は考えていないぞ!!!


正確な胸の位置や形が良く分からないから、胸を固定して締め付けながら、胸が大きい人は肩が凝ると聞いたから、支えると言うか持ち上げると言うか……。


とにかくワザとじゃなーーーい!


「「「うらやましい!」」」


何気に私を見て言うんじゃない。


「肌触りがとても良いので、まるでアタル様に優しく抱きしめて貰ってる感じですわ。ホホホホッ!」


「「「アタル様に優しく……」」」


そこぉぉぉ、そんな表現をするなぁーーー!


クレアさんが跳び付くように、にじり寄って来る。


「なんで私は抱きしめてくれないのですかぁ?」


抱きしめてないからぁーーー!


「だ、抱きしめていませんから。イ、インナーを作っただけですぅ」


「では私には作ってくれないのですか!」


そんなこと言われてもぉ~。


「つ、作るつもりですよ。ただ、私も初めて作ったので、ラナさんに着心地を確認してから……」


「アタル様の初めて……」


そこぉーーーーー! 表現を考えてくれぇ~。


な、なんで、クレアさんも悔しそうに涙をぉ~!


「それに下着もピッタリで、お尻がキュッとアタル様に持ち上げられた感じなんですよねぇ~」


やめろーーー! 変な風に名前を使わないでぇ~!


「「「お尻を……」」」


くっ、言い訳を考えるんだぁーーー!


「ク、クレアさんは危険の伴う仕事ですから、安全に配慮したインナーを考えようかと。できれば防具や制服もまとめて作ろうかなぁ~と思って……」


「本当ですか!?」


おっ、何とか誤魔化せそうだ。


「も、もちろんです。クレアさんが怪我をしたら悲しいですから」


おお、満面の笑みぃ~。


「私達の分は無いのですか?」


「もちろん、護衛をして下さる皆さんの分も用意しますよ!」


あっ、しまったーーー!


クレアさんがまた悔しそうな表情に。


部下の安全より、独占欲なのかぁ!?


「も、もちろん、隊長のクレアさんは特別製ですけどねぇ」


ほぅ~、な、何とかなったぁ。


クレアさんの機嫌も直り、他の女性たちも嬉しそうにしている。


ラナさんが思惑ありげに微笑んでいるのが怖い!


もしかして、こうなる事を予想して女性たちを煽ったのだろうか?



何とか落ち着きを取り戻し、ラナさんが再びお茶を用意してくれ、テーブルでお茶を飲み始める。


女性たちは下着とインナーの事で盛り上がっているが、私はミュウとキティを膝に乗せ、抱きしめて落ち込んでいた。


女性との経験値が低すぎるぅ~。


ボッチだった自分には、仕事の会話以外で女性と話したのは……、買い物ぐらい?


考えるほどに落ち込んでしまう。


仕事なら……、あれっ、なんか忘れてない!?


そうだぁ、料理人について相談するはずだったぁ!


しかし、今の女子トークに割って入る勇気はない!


ヘタレと言われようが仕方ないじゃないかぁ!


「アタル、大丈夫?」


ミュウが心配そうに聞いて来る。キティも心配そうに私を見上げている。


癒してくれるのは、お前達だけだぁーーーーー!


少し強めに二人を抱きしめると、二人も抱きしめ返してくれるのだった。



少しするとノッカーの音がしたので人が来たようだ。ラナさんが女子トークを止めて扉に行く。


外の様子を確認して扉をすぐに開く。


「お、お義姉さん綺麗になったぁ!」


栗色の髪のまだ十代に見える少女は、ラナさんを見ると口に手を当て叫ぶように言う。


「やはり恋をする女性は綺麗になるのねぇ」


恋に夢見る少女のように、目を輝かせながらラナさんを見つめる。


「変な事言ってないで、ご挨拶に来たのでしょ!」


ご挨拶? 誰に?


様子を見ていた護衛の人達は奥のテーブルに移動する。


ラナさんが少女を連れて俺の所まで来て、彼女を紹介してくれる。


「弟の妻で、義理の妹となるメアベルです。まだお腹は大きくなっていませんが、弟の子を身籠っています」


だから少しダボっとした服を着ているのかぁ。


特に太っている訳でもないのに、この世界では珍しいと思っていたが……。


し、しかし、若すぎない!?


「メアベルです。アタル様には主人を連れ帰って頂いただけではなく、お金まで譲って頂いて、さらに住まいや仕事までお世話して頂けるそうで、本当にありがとうございます」


先程までの夢見る少女から、しっかりした幼妻に大変身したぁ。


ラナさんが相手だと、本当の妹のように甘えていたのかな?


しかし、お金って……、あっ、ポーション代金の一部を遺族に渡してくれと言った気がする。


「アタルです。ラナさんに全部押し付けて申し訳ないと思っていましたので、少しでもラナさんを手伝ってくれると、私も安心です。しかし、お腹の子が最優先ですので、絶対に無理をしないで下さいね」


そう話すとメアベルさんは嬉しそうに言う。


「本当にお義姉さんの言う通り、アタル様は優しい殿方なんですねぇ。私も何とか主人の跡継ぎの男の子を生むために、無理のない範囲で精一杯頑張ります!」


元気いっぱいで話すメアベルさんは、見た目は幼い感じだが、上手くやってくれそうだ。


「でも、男の子で良かったですねぇ。跡継ぎは男の子じゃないとダメなんですよね?」


なぜか静寂に包まれる。


あれ、なんかしちゃった?


メアベルさんが周りの様子を気遣って話をする。


「へへっ、まだ男の子なのかはわからないんですが、絶対に男の子を生みたいと思ってます」


「あれっ、でも、男の子ですよね。だって、あっ!」


色々あったので、念のため彼女のステータスを鑑定で見たのだが、妊娠(男)と出ていたので、性別鑑定の魔法とかで確認したのかと勘違いしたのだ。


「アタル様、それは本当でしょうか!?」


ラナさんがレベッカ夫人みたいに詰め寄って来たぁ。


あっ、ぽよんだぁ!


ち、違う、そうじゃない!


「ご、ごめんなさい。念のため鑑定したら、妊娠(男)と……」


そう話すとラナさんは私に縋りついて泣き始める。


「わ~ん、良かったぁ」


いつものラナさんと違い、普通の女の子のように泣く姿を可愛いと思う。


「お義姉さん、元気な男の子を絶対に産むからぁ。わ~ん」


メアベルさんがそう言うと、二人で抱き合って泣き始める。


あぁ~、ぽよんがぁ~!


その場にいる私を除く全員が、抱き合って泣く二人を温かい目で見守るのだった。


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