第32話 訓練施設の建設
指輪やペンダントを渡すと、大賢者区画の開発に集中することにした。
ハロルド様からは、何度か密偵の調査が順調に進んでいると話は聞いたが、政治的な話には関わり合いになりたくないので、深くは聞かないようにする。
訓練施設は地下1階地上三階の建物で、地上は口型の真ん中が広場になっている造りにした。
地下には空間拡張の付与をして、更に広くなるようにする。
大きな訓練場と小さな高魔力訓練場を作り、所々でステータスを確認できる場所も用意する。
更衣室を作りロッカーを設置して、鍵は魔力を流すだけで鍵がかかり、同じ魔力紋の人間か管理者か作成者しか開けないようにする。
更衣室の横には男女とも大浴場を用意した。
大浴場は大賢者にある魔道具を参考にしたが、24時間いつでも入れるようにして、小浄化の効果を付与した浄化槽で、お湯を循環させることでいつでも綺麗な風呂に入れるようにする。
さすがに漂う魔力だけでは、必要な魔力は賄えないので、地下通路を利用して大賢者の屋敷から魔力を引き込むことを考える。
大賢者の屋敷の地下には、倉庫のような部屋が並んでいたが、さらに調査すると真ん中の倉庫から、下に続く階段を発見した。
階段を降りると厳重な結界をした扉があったが、簡単に解除して中に入る。
その部屋は更に濃密な魔力で溢れかえっており、中央には巨大な魔石と思われる石が台座に据え付けられて輝いていた。
鑑定してみると高位のドラゴンの魔石のようで、周りの魔法陣を調べると、溢れ出す魔力をこの魔石に蓄えていたようだ。
消費量が少なくなったことで、すでに魔力は限界まで蓄えられ、リミッターで魔力を吸収しないようになっているので、部屋に魔力が溢れかえり、更には外まで魔力が溢れてしまったんだろう。
台座からは細いミスリルの糸が屋敷の隅々まで繋がっている。
しかし、濃すぎる魔力で何か所もミスリルの糸は切れており、修復してもすぐに切れてしまう。
スライム溶液でパイプを作り、魔力を遮断する効果を付与して、台座に流す魔力を調整すればミスリルの糸は切れなくなったが、今の大賢者屋敷では壁の中のミスリル糸をパイプで包めないので、どちらにしてもミスリルの糸が切れそうなので断念する。
魔力濃度が下がらないと、大賢者屋敷はあまり手を入れられないなぁ?
取りあえず訓練施設へ魔力を引き込むため、パイプとミスリルの糸を使って地下通路沿いに魔力を引き込むことには成功する。
引き込んだ魔力は高魔力訓練所やお風呂だけでなく、キッチンや中の様々な照明なども含めて利用できるように張り廻す。
地下は大体完成したので地上の開発に進む。建物や窓は出来ているが、それ以外は何も出来ていないので、順番に作って行く。
内壁沿いの部分には女性宿舎にして、2階と3階は個室や2人部屋、4人部屋など用意して、百人以上が住めるようにする。
通いも多いだろうし、それほど必要ないかなぁ?
空間拡張で更に広くできるが、無駄になる可能性もあるので、実質120名ほどまでにする。
1階は食堂と台所、食材倉庫にする。
食材倉庫は空間拡張と状態保存の棚を大量に設置して、食材の備蓄も出来るようにした。
台所は大賢者の屋敷の魔道具を更に進化させ、地球の家電を参考に作り設置した。
暫定で30セット分だけ木製の食器を用意する。
状態保存を付与した収納の魔道具を複数設置して、作った料理を収納しておけば、欲しい料理を自由に取り出せるだろう。
木のトレーも用意して、精算所も作っておく。
うん、社員食堂が出来上がりだな。
そこで、ひとつ心配な事に気が付く。
料理人が必要だぁ!
クレアさんも含め護衛の人達は、串焼きを焼くぐらいなら問題無いが、待機所で料理を作ろうとした時に感じたのは、護衛は頼めるが料理は頼めないという事だ。
休憩しながらラナさんに相談しようかぁ。
待機所に戻るとミュウとキティが走り寄って来て、ミュウは抱きついて来て、キティはすぐに肩まで登って来た。
幼い二人に好かれるのは、妹の美優に懐かれていた頃を思い出すので、単純に嬉しい。
そのままテーブルまで行くと椅子に座ると、ラナさんがお茶を用意してくれる。
ストレージからから服を取り出して、抱きついたままのミュウとキティに見せる。
「二人の服を作ったから、一度着てくれるかい?」
二人は嬉しそうに新品の服を見ている。
何故かラナさんがキティ用の下着を手にもって何やらブツブツ話している。
「こんなに小さい……、でも肌触りは良いわね」
同じようにカルアさんもミュウの下着を手に取った。
「アタル様、さすがこれでは小さすぎますよ、それに紐が無いから履いてもずり落ちちゃいます。他の服は大きすぎますよ」
他の護衛の人達もカルアさんの話を聞いて笑っている。
「その下着を横に引っ張ってみてください」
私に言われて、カルアさんだけでなくラナさんも横に引っ張る。
「「伸びる!」」
二人は驚き、他の護衛も驚いている。
実はスライム溶液を糸にしたら、化学繊維みたいになり、更にゴムのように多少伸び縮みしたので、肌触りを良くするために角ウサギの毛を混ぜて糸を完成させたのである。
普通の糸にも、スライム溶液を浸透させて角ウサギの毛を纏わせてやると、普通の糸は伸び縮みしないが肌触りは良くなった。
それを生産工房で糸の比率を調整しながら布にして、服を作り魔法溶液を使って魔法陣を付与したものである。
「下着には自動洗浄と消臭、サイズ調整も付与してあるからピッタリのはずだよ」
「着替えてくる!」
ミュウがカルアさんから下着を奪い取って2階に行った。キティもラナさんから下着を受け取るとミュウに続いて2階に行く。
「服には自動洗浄やサイズ調整、物理攻撃耐性もついてるよ」
自慢気に護衛の人達に説明する。
「服まで魔道具!?」
いやいや、魔道具ではなく効果を付与しただけだよ。
「そう言えばラナさんにも、コルセットの代わりの下着を作ったので試して貰えます。コルセットが辛いと言っていたので作ってみたのですが、……下着も一緒に作ったけど、女性の下着は良く分からないから、正直不安ですが……」
「た、試します!」
本人がそう言ってくれるなら、良いかな?
ストレージから下着とインナーを出す。
「下着はミュウ達と同じ効果が付与してあります。それはインナーで体を全体的に締め付ける作りですね。試作品なので着心地や効果を教えて貰えます」
ラナさんがインナーを手に持っていたので簡単に説明する。
「すぐに着替えてきます!」
えっ、別に今着替えなくても……。
それにクレアさんが羨ましそうに睨んでいるし。
試作品と言うか検証だから……。
どう言い訳しようか考えていると、ミュウとキティが降りて来た。
うん、想像以上に似合うじゃないかぁ。
「これ、これ、すごくきもちいいの!」
キティが嬉しそうに言う。
「ほんとうにピッタリだし気持ち良い!」
ミュウにも好評のようだ。
何故か私に近づいて来た二人を、護衛の人達が捕まえて、服の手触りや着心地などを確認し始めている。
まあ、不評ではないので良いかぁ。
お茶を飲みながら女性はどの世界でも、着る物には興味あるんだと考える。
するとラナさんが2階から降りて来た。
ゆっくりと降りて来たのだが、私だけでなく護衛の女性たちも驚いた表情で彼女を見つめるのだった。
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