第31話 指輪の意味は!?
今朝もメイドさんに体を揺すられて目を覚ます。
やはりラナさんの起こし方とは何かが違う。
いつもの朝の日課をして、メイドさんが朝食に呼びに来て食堂に行く。
俺が食堂に入ると、レベッカ夫人が立ち上がって近づいて来ると、突然抱きついてきた。
あっ、ぽよんっ、良い香り。
直ぐにレベッカ夫人は離れると、笑顔で話す。
「まさか夫のある身で指輪を貰えるとは思わなかったわ。主人が居なければ喜んでアタルさんの妻になったのに残念だわ」
レベッカ夫人は、幼さと妖艶さの混ざったような微笑みを見せて、テーブルに戻って行く。
私もテーブルに向かうが、朝の男の日課は治まっていたのに、また始まったようで、腰を少し引くような歩き方になってしまう。
セバスさんが意味ありげに微笑みながら言う。
「私も女性なら、間違いなくこのような贈り物をされたアタル様に、すべてを捧げてついて行きたくなります」
えぇ~、もしかして指輪には何か意味があるの?
それにセバスさんも指輪を付けてるぅ~。
「アタル、ミュウの指輪は?」
「ミュウとシャルにはペンダントを用意したよ」
するとミュウは頬を膨らませて文句を言う。
「ミュウは指輪が良い!」
何気にシャルも頷いている。
「でもミュウの為に特別に作ったのに残念だなぁ」
「とくべつ……」
やはり特別は効いたらしい。
ストレージからミュウ用のペンダントを出す。
ペンダントにはデフォルメした可愛らしいウルフの模様が入っている。
ペンダントをプラプラ揺すりながらミュウに笑いかける。
「み、みせて!」
両手を出す姿が、小さい頃の妹の美優に似ていて懐かしくなる。
ミュウに渡すと嬉しそうにペンダントを色々な角度で見ている。
「かわいい……、これでがまんする!」
我慢すると言いながらも、相当気に入ってくれたようだ。チロチロ俺の事を見るシャルにも、ペンダントを渡す。
シャルのペンダントには精悍な顔つきのウルフの模様にした。最初にあった時のイメージが強くて、シャルは強いイメージがあるからだ。
シャルも嬉しそうにペンダントを見ているが、私が見ている事に気が付くと、無理やり普通の表情をしたが、ケモミミで喜んでいることがわかる。
「私は指輪が、」
「これね!」
アリスお嬢様が指輪を要求しようとしたが、アリスお嬢様の似顔絵入りで、裏にはエルマイスター家の紋章が入ったペンダントを渡す。
少し不満そうな顔をしたアリスも、自分の似顔絵の模様を見て、嬉しそうにする。
「それは魔道具になっていて、手で握りしめて魔力を流すと洗浄が使えるよ」
そう言った途端に3人が少し光ったので洗浄を使ったようだ。3人は嬉しそうにお互いを見て笑い合う。
「そうポンポンと魔道具を……」
ハロルド様が何か言ったが、聞こえない事にしよう。
「それで代金はどうしようかしら?」
レベッカさんに言われて、代金とか考えていなかったことに気が付く。
「そ、そうですね。……では、指輪はお世話になっているお礼という事にしましょう。昨日ハロルド様に渡した魔道具だけ料金を貰えますか?」
「でも、これは国宝級の魔道具よ。流石にお礼としては……」
国宝級!?
それはいくら何でも……。
「では二つ分だけ料金を下さい。ハロルド様とセバスさんにはお世話になっていますし、レベッカ夫人は女性ですので、女性に贈った品の料金は頂けません」
「ますますアタルさんに惚れてしまいそうね」
「本当に」
レベッカ夫人の言葉は嬉しいが、誤解しちゃいそうです。それにセバスさんも同意しないで下さい。
「では二つ分の料金だが、幾ら払えば良いのじゃ? 我が家で払えるかのぉ」
「う~ん、材料費だけという事でお願いします」
そう言うと、ハロルド様は少しホッとした顔をする。
「これは銀で作ったのか?」
「いえ、ミスリルです」
そう言った瞬間にハロルド様だけではなく、レベッカ夫人とセバスさんまでギョッとした顔で指輪を目の前に持って来て見つめている。
「二つ分でも金貨200枚ですね」
セバスさんはボツりと呟くのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
朝食が終わるといつものように午前中は採取をして、子供たちと昼食を食べる。
昼食を食べながらシアとカティとフォミにもペンダントを渡すと大喜びしてくれた。
クレアさんが時々指輪を見つめてニヤニヤしているので少し怖くなる。
やはり、指輪には何か意味があるのか!?
その事を聞きたいが、聞くのが怖い。
もし想像通りだとして、それは魔道具だから違うと言う事が私に出来るだろうか?
少し不安に思いながらも待機所に戻ると、ラナさんがお茶を用意してくれたので、少し休んでから大賢者区画の開発をすることにする。
ついでにラナさんと少し話をする。
「お金は足りていますか?」
「ほとんどは使っていません。食材なども配達してもらっていますし、支払いはエルマイスター家が払っているようです」
う~ん、それはどうなんだろう?
たぶんそれ以上の品を提供している気がするので、問題は無いと思うがいつまでもとはいかないよね……。
「ラナさんはお金の計算は出来ますか?」
「はい、普通に出来ると思います」
「お金の事なんですが、私は自分が困らなければ問題ないと思っていたんですが、人を雇って給金を払う必要もあるし、生活に必要なお金の管理も自分だけの時と違いますし、何とかお願いできませんか?」
「わ、私が……、ふつうそれは奥様がやられるか、執事に任せることだと……」
まあ、奥さんはいないから。
「最初から全部やらなくても良いですし、レベッカ夫人と話して決めて貰えれば構いません。指輪もあるのでお金の管理もやり易いかと」
「ゆ、指輪……」
何故か指輪をジッと見つめるラナさん。
やはり、指輪には……。
「そ、それでは、レベッカ様と少し相談してからという事でよろしいでしょうか?」
「はい、それで構いません。それと屋敷の準備が出来たら、義妹さんと一緒に屋敷に住みませんか。弟さんの奥さんは妊娠していると言ってましたよね。ラナさんは午前中に様子を見に行っているようだし、一緒に住めば安心できるんじゃありませんか?」
「よ、よろしいのですか!?」
「その方がラナさんも仕事に集中できるだろうし、なんなら義妹さんがお金の管理をしてくれたら給金も出しますよ」
「それは助かります。妊娠中で心配だったので嬉しいです」
本当に嬉しそうに答えてくれる。
「ここも部屋はあるから、義妹さんに住んでもらっても私は良いのですが、階段を上り下りするのは危ないですからねぇ」
さすがに妊婦さんを住まわせるのは難しいだろう。
「全然大丈夫です。今は妊娠5ヶ月でそれほどお腹も大きくありませんし、お腹が大きくなる頃には引っ越しているはずですから。できればすぐにでもお願いしたいです」
まあ、私は良く分からないし、構わないかぁ。
「私は構いませんが、子供たちもいるので注意してくださいね」
「あ、ありがとうございます」
えっ、泣くほどの事なの!?
ラナさんは嬉しそうに涙を拭っていた。それほど気にしていたんだろう。
「弟が亡くなって、お腹の子が唯一の跡取りになるかもしれませんので、心配で……」
そ、そうなんだぁ。でも、ラナさんが子供を産む選択肢もあるんじゃないのかなぁ。
その事は地雷になる気がして、聞くことが出来なかった。
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