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閑話2 神々の文化交流②

順調に地球の文化交流の拠点の整備は進んでいた。


「私達、新文化交流隊の最初の目的は達成できました。文化交流の拠点となるこの場所の、周辺調査と整備も無事に終わらせることが出来ました。特に森樹しんじゅ(森の女神)とみのり(農業の女神)とそれぞれの眷属の神はご苦労様でした。

そして今後の文化交流の費用や資産の管理についても、問題なく確認と運用方法が決まりました。しょう(商売の神)はなれない世界なのに素晴らしい仕事です」


短期間で全員が必死に取り組んだ結果だ。


「文化交流に使える費用も決まりましたので、明日以降は交代で文化交流に関する活動を始めて貰います。ただ、拠点運営もありますので、拠点を離れる活動は事前に報告をお願いします」


そこまで話すと、叡一えいいち(叡智の神様)とはじめ(権能の神)、しょう(商売の神)の3人がハイタッチをして喜んでいる。


あの3人って、あそこまで仲が良かったかしら?


そして叡一えいいちが聞いて来る。


「光の女、…光子みつこ、私は一足早くノバに戻らなくてはならない。早速明日にでも文化交流に行きたいと思っている」


「えっ、ええ、問題ないわ。予定より早く進んでいるし、明日は文化交流活動に専念してくれて大丈夫よ」


叡一えいいちは無理に文化交流しなくても、今回は問題ないと思うが、本人がするというなら問題ない。


「それで今回は、はじめしょうも一緒に活動するつもりだったのだが、問題ないだろうか?」


えっ、問題はないけど……。いつの間にそこまで?


「そ、そうなの、良いわよ。問題はないみたい、」


最後まで話も聞かずに、3人は部屋を出て行ってしまう。


「ねえ、あの3人は何時からあんなに仲良くなったの?」


森樹しんじゅがそう話し、みのりもコクコクと首を縦に振る。


「私も想定外の状況よ。何か文化交流関連で仲良くなる事でもあったのじゃないかしら?」


他の眷属たちも不思議そうに彼らが出て行った扉を見つめるのであった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



部屋を出るとはじめ叡一えいいちの肩に手を置き話しかける。


「作戦通り完璧な対応だな」


「ああ、でもそれもしょうが早めに仕事を終わらせたからさ」


「気合い入りましたがな~。ロザリオメイプル様のイベントが明日でっせ。もしも間にあわなかったら、はじめはんに殺されまんがなぁ」


ロザリオメイプルは最近人気が出てきたアイドルグループのことだ。


「殺しはしないさぁ。フフフ」


「「……」」


はじめの言葉に、殺しはしないけど、何をされたのだろうと不安になる、叡一えいいちしょうであった。


「そんな事より、しょうはチケットの確保は問題ないな?」


「も、もちろんでっせ!」


叡一えいいちはイベントグッズの購入先は確認してあるか?」


「ま、任せてくれ。サイリウムやハチマキはイベント前に買えるように調査済みだ!」


はじめはそれを聞いて嬉しそうに微笑む。


「3人揃ってのイベント参加は今回が初めてだ。ヲタ芸も合わせないと心配だし、しょうはヲタデビューだ。始発で台場まで向かうから、朝まで特訓をするぞ!」


はじめは気合を入れて宣言する。


「本当に生レナたんに会えるんですよね?」


しょうは不安そうに尋ねると、はじめは笑顔を見せて答える。


「それが地球の文化なんだよ。これをノバでも流行らせて欲しいものだ。ふふふっ、アタルに神託でお願いしても良いかもな」


しょうの推しメンはレナたんなんだ。私は何と言ってもユワたん推しだなぁ」


叡一えいいちはユワたんなのか。まだまだ未熟だな。一番はモエコたんに決まっているだろ」


はじめのこの一言で、お互いの推しメンの良い所を言い合う3人だった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



3人は拠点に戻る坂道をトボトボと歩いていた。


3人は始発で台場に行き、近くのショップでヲタ芸に必要なアイテムを揃え、準備万端で会場に向かったのだが、イベント会場に入ることは出来なかった。


「なんでしょうはチケット購入の時に気が付かなかったんだ?」


はじめの責めるような言い方にムッとしながらも答える。


「ワクチン接種の証明書なんて必要あらへんと思ったんすよ!」


「購入画面で注意書きがあれば、せめて我々に話すべきでしたね」


叡一えいいちしょうを責める。


「我々は病気とか関係ないから、必要ないと思ったんですぅ」


「我々が病気に掛からなくても、媒介する可能性もあるし、規則で必要なら用意しようと考えるだろ!」


はじめもまたしょうを責める。


「そ、そんなこと言われても。……だいたい叡一えいいちさんもネットでイベントの情報を見付けたんだから、気が付くべきじゃないですかぁ。それにはじめさんも人にばかり面倒な事押し付けて、情報の確認ぐらいはしてくださいよぉ」


「「なんだとー」」


3人は険悪な雰囲気のまま拠点まで歩いて戻ったのだった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



「お疲れさまぁ。どうしたの3人共随分疲れた顔をして?」


「「「なんでもない!」」」


拠点に戻ると、光子みつこが声を掛けてきたが、不機嫌な返事をする。


「そうなの? それなら良いけど、明日は私と森樹しんじゅみのりの3人で出かけるから、はじめしょうは留守番をお願いね。

叡一えいいちは明日朝一番にノバに戻って貰うからヨロシク」


3人は不機嫌そうにしながらも頷いて答える。それを確認した光子みつこは奥に行こうとしたが、すぐに振り向いて話をする。


「あとこれワクチン接種の証明書よ」


そう言って3枚のカードを出す。


「「「なっ」」」


「昨日の夜に渡そうとしたけど、話の途中で部屋に戻っちゃったし、何回か部屋に行ったけど、全然返事がなかったから、早く寝てたのね。

今朝渡そうとしたらも、もう出掛けたようだから渡せなかったのよね?」


「「「………」」」


3人は驚きのあまり絶句してしまう。

昨日の夜はヲタ芸の練習をしていて、音が外に漏れないように結界を張っていて気が付かなかったのだ。



   ◇   ◇   ◇   ◇



はじめしょうに留守番をお願いして、森樹しんじゅみのりの3人で午前中から出掛ける。


「ねぇ、拠点にお風呂があるのに、スーパー銭湯?に行く必要はないと思うけど?」


移動しながら光子みつこから今日の予定を聞いて、森樹しんじゅが質問してくる。その後ろでもみのりがコクコクと頷いている。


「う~ん、口で説明しても上手く伝わらないと思うわ。試しと思って今日は付き合ってちょうだい。それに『BIJINNでスパ』は肌も綺麗になるから満足してくれるはずよ」


まだ少し不満そうだが黙ってついて来てくれる。


目的の『BIJINNでスパ』の近くの公園に寄ると、ベンチに座っていた小学生か中学生ぐらいの女の子が走り寄って来た。


「みっちゃん久しぶり~」


片手を振りながら少女が声を掛けてきた。


「セイちゃん逢いたかったよ~」


そう言って、光子みつこは女の子を抱きしめる。


「ま、うぷっ、待って、く、苦しぃ~」


抱きしめられたセイと呼ばれた少女は、光子みつこの豊満な胸に埋もれて、助けを求める。


「ご、ごめんなさいね。久しぶりにセイに会えて嬉しくて、力が入り過ぎたみたい。てへっ」


「「てへっ」じゃない! あと少しで亡くなったおばあちゃんに会えるかと思ったわ!」


森樹しんじゅみのりは二人のやり取りを驚きの表情で見つめている。


見た目で子供かと思ったが、話し方はしっかりとしているというか、少しおばちゃんのような感じだ。


「え~と、光子の子供?」


森樹しんじゅが尋ねる。


「「なんでやねん」」


光子みつことセイが声を揃えてつっこんで来る。


森樹しんじゅみのり光子みつこのそんな姿を見たことがなく、再び驚いて固まってしまう。


「セイは『BIJINNでスパ』で知り合った友達よ。こう見えてセイは24歳独身の処女よ」


「みっちゃん、最後の部分の紹介は必要なくない?」


「でも、セイちゃんが穢れの無い女の子だと、ハッキリさせておいた方が良いと思うのよぉ」


「そんなことハッキリさせないで~。それじゃあ、私がモテないみたいじゃない!」


「いやいや、セイがモテるのは聞いて知ってるわよ。でも、……特殊な性癖の殿方から、」


「いや~、やめてぇ。それ以上はへこむから勘弁してぇ~」


そんなやり取りを、口を開けて見入ってしまう森樹しんじゅみのり


それに気が付いた光子みつこが二人に声を掛ける。


「ごめん、ごめん、セイちゃんと話すと楽しくて、ついはしゃぎ過ぎちゃうのよ」


「あれれれ、私もやっちゃいましたぁ。自己紹介の途中でごめんなさい」


セイも二人に謝罪する。


「こっちが森樹しんじゅで、そっちがみのりよ。二人は私の親戚になるわ」


「す、すごい、全員外国の血が入っているよね? みっちゃんはヨーロッパ系で、しんじゅさんはエスニック系? みのりさんはブラック系?」


「まあ、そんなところよ。それより早く『BIJINNでスパ』に行くわよ」


「そうね、細かい話はお風呂の中か、お風呂を出てからゆっくり話そう!」


森樹しんじゅみのりの返事など待たずに、二人はさっさと歩き始める。


森樹しんじゅみのりは慌ててついて行くのだった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



光子みつこ森樹しんじゅみのりの3人は、『BIJINNでスパ』を満喫して拠点に向かって歩いていた。


「どうだった? 『BIJINNでスパ』は拠点のお風呂とは違うでしょ?」


光子みつこが尋ねると森樹しんじゅが答える。


「全然違うわ! お湯に独特の香りがして、入ると少しヌルヌルして不思議な感触がしたけど、出ると肌がツルツルになるのよ。

それにお風呂を出ても施設が充実していて最高ねぇ。女性目線でゆっくりできるようになっているし、食事やスイーツも女性が好むものが用意されているし、本が充実しているのも良いわ。

日頃の疲れが癒されるだけじゃなく、地球の文化を知ることもできる。そして、美しくなれる。最高じゃない!」


「マンガは最高の文化交流!」


森樹しんじゅが大絶賛で褒めると、みのりもコクコクと頷き、マンガに嵌まったみのりはそこを強調する。


「二人が満足してくれて良かったわぁ」


連れて行った光子みつこも二人が満足してくれてホッとする。


「ねぇ、あの子は何者なの?」


森樹しんじゅが真面目な顔をして光子みつこに聞く。


「セイのこと? 正直私も良く知らないのよ。『BIJINNでスパ』で会って仲良くなっただけよ」


「でも、……彼女は光属性のような魔力か神気みたいなものを纏っていたわよ?」


「本当に私は偶然に逢っただけよ。私が何かした訳でもないし、地球の主神様にでも話を聞かないとわからないわ」


森樹しんじゅはまだ納得できなかったが、光子みつこが何かしたと思えないし、何かすることも出来なかったはずだと考えて、それ以上は聞かなかった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



セイこと春日聖かすがひじりは『BIJINNでスパ』の帰り道に、今日会ったみっちゃん達の事を思い出していた。


彼女たちは不思議な存在だったなぁ。


みっちゃんは前から偶に『BIJINNでスパ』で会っていたが、その時にも不思議に思っていたが、3人になりそれが疑問となった。


誰も3人の事を気にしないだよなぁ。


あれ程の美人で日本人とは明らかに違う顔つきで、スタイルも抜群と言える3人を誰も気にしない。


確かに『BIJINNでスパ』でも外国の人は見るようになったが、やはり注目を集めやすい。


それに私も良く見られることが多い。

見た目は幼く見られるが、服を脱ぐと年齢に相応しい凹凸はある。自分で言うのもおこがましいが、バランスが取れた良いスタイルだと思う。


ただ、すべてが小さいだけでね。


それなのに彼女たちと居ると、いつものように見られることが少ない。いや、全くと言って無いのだ。


まあ、気にしても仕方がないかぁ。


みっちゃんだけではなく、他の二人も仲良くなると、一緒に居て居心地が非常に良い。


余計な事を考えても良い事は無いので、それ以上考えることを止めて、2年前に亡くなった祖母の家に誰も待っていないが急いで帰るのであった。


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