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第12話 モフモフ天国

今朝もメイドさんに体を揺すられて目を覚ますと、いつもの朝の日課ルーティンをする。


すぐにメイドさんが朝食に呼びに来て、いつものように朝食を頂く。朝食が終わる頃にハロルド様から話があると言われる。


また何かやらかしたのかなぁ?


すぐに朝食が終り、ハロルド様と一緒に応接室に行く。メイドさんがお茶を出してくれて出て行くのを見送る。


部屋にはセバスさんも残り、すぐにハロルド様が話し始める。


「反省と自重はどうしたのかのう?

収納を外で使いまくるし、土魔法も使ったようじゃ。昨日のウサギ料理は何じゃ。あれが非常識なことを判っておるのか?」


オーブンで作ったから変なのかなぁ? 塩を沢山使いすぎた?


「判っておらん様じゃな。収納は物を入れることは出来るが、前に作った料理が出来立てで出てくることは有り得んのじゃ!」


「あ~、そういえば……」


「そういえばじゃと! 多少は判っているのではないか!」


「す、すみません!」


「幸い収納スキルを持つものが少ないから、あのクレアでさえ気付いておらん! しかし判るやつがいたら大変じゃ!」


「ち、注意します」


「はぁ~、セバスにずっと一緒について貰うかのう」


「私がついていても本人の自覚がなければ同じでございます」


酷い言われようだ。


「そうじゃのう。アタルよ、本当に自重してくれ」


「き、気を付けます」


ハロルド様とセバスさんは心配そうに見つめてくる。アタルは流石に落ち込む。


「話はそれだけじゃ。今日はどんな問題を起こすのじゃ?」


凄く扱いが……。


「もう少し採取をしようかと……」


「それでは護衛を呼びに行かせるから、それまでここで大人しくしておれ」


完全に要注意人物になっている気が……。



少し休憩しているとメイドさんが呼びに来た。


ロビーに行くとクレアさんとカルアさん、そして初めて見る4人の女性騎士がいた。


クレアさんに暫くは交代でアタルの専属護衛になると紹介される。

さすがに申し訳ない気持ちになり丁寧に挨拶をしてすぐに出発する。今日はカルアさんと他2名がついて来た。


東門を出るとまずは昨日の孤児院の子供達を探す。

すぐに昨日会った近くで子供達を見つけると嬉しそうに集まって来た。


そして6本の水筒にポーションを薄めた水を入れて子供達に渡すと、後で採取物は取りに来ると言ってすぐに川辺に向かう。


川辺に着くとスライムを狩りながら川を上っていく。石橋がある所まで来ると橋を渡り、今度は反対の川岸でスライムを狩りながら下って行く。

昨日川を渡った場所まで着く頃には、スライムを100匹以上採取していた。


「カルアさん昼食は昨日と同じで良いですか?」


カルアさんは嬉しそうに合意してくれたので、子供たちを呼びに行ってもらい合流すると昨日と同じように食事をする。


シアとカティ、フォミの3人は雇ってくれるのか何度も聞いてくるが、まだ調整中と話して明言はしなかった。他の子供たちも聞いてくる。


「年長の者が皆いなくなって孤児院は大丈夫なの?」


そう尋ねると子供たちは複雑そうに俯いた。


「私達だけお肉食べてるのも…」


シアがそう呟くと肉串を食べる手が止まる。


「これは仕事の報酬だから遠慮なく食べろ!」


そう話すとまた少しずつ食べ始める。

そういえばウルフの肉が余っていたと思い出し、シアに食べれるか聞いてみると、偶に孤児院出身の冒険者が持ってきてくれるらしい。肉は少し硬くて時間が経つと臭いが出るので、売っても安いらしいが、孤児院では偶に食べられるお肉でご馳走になるようだ。


今からウルフ肉を孤児院に持っていくと話すと安心して食べ始めた。


「後で取りに来るからよろしく~」


そう言うと子供たちは元気よく採取に向かって行った。


カルアさんの案内で孤児院に行くと、建物は2階建ての石造りで思っていたより大きかったが、それ以上に人数が多い気がした。

敷地に入ると沢山の子供たちが、狭い庭や建物内に居るのがわかる。しかし、こちらを警戒するように逃げて行く。


よく見ると沢山のケモミミと尻尾が逃げて行く。


ケモミミ天国来たーーー!


心の中で絶叫するも、表情に出さないように手を強く握りしめる。


そこへ大人の女性が近づいて話しかけて来た。


「あの~、こちらに何か御用でしょうか?」


「あっ、私はアタルと、」


「アタル様ですか! 年長の採取しているものからお話は聞いています。中に院長がいるのでお上がり下さい」


挨拶を言い終わる前に女性が話し始めたので、ケモミミと触れ合いたい気持ちを抑え案内されてる。


扉などない部屋に通されると、中には年配の女性が書類仕事をしているようだ。案内してくれた女性が何か耳打ちすると嬉しそうにこちらに来る。


「子供たちからお話は聞いております。汚い所ですがこちらにお座りください」


そう言って4人用のテーブルセットに案内される。アタルが座ると正面に年配の女性が座り、案内してくれた女性は部屋を出て行く。


「こちらの孤児院の院長をしておりますナーミアと申します。昨日は子供たちの採取した物を、ご領主様に高額で買い取って頂いたようでありがとう御座います」


「いえ、丁寧に採取されており、適正な価格で買い取らせて頂きましので、気にしないでください」


「ですが孤児院の者だと安く買いたたかれることが普通でしたので非常に助かります」


「そのことはハロルド様にも報告しております。それに当面は私の方で必要ですので、領主様が購入する予定になると思うので、安心してください。」


「本当にありがとう御座います。それで今日はシア達を雇って頂く話でしょうか?」


おうふ、既に言い触らしてるのね。


それに扉や廊下側の窓からケモミミだけ出して話を聞いているお前たち!

可愛すぎるやろ~!


心の中で叫びながらも、ポーカーフェイスで話を続ける。


「その件はまだ調整中です。私もまだこの街に来たばかりで、住居も決まっていない状況でして」


うおっ、ケモミミが垂れ下がった!


「そうですか、まるで決定したような話をあの子たちがするもんですから」


「もうすぐ成人する3人にはお願いしようとは考えていますが、もう少しお時間を下さい」


ケモミミが直立してピコピコ動いてる~♪


「宜しくお願い致します。それでは今日はどういったご用件で?」


「実は先ほど一緒に昼食を食べていたのですが、自分たちだけ食べていることを気にしていたので、フォレストウルフの肉をこちらに届けに来たんですよ」


「本当ですか!? 子供達も喜びます。ありがとう御座います」


院長の声を掻き消すような歓声が廊下に響き渡る。


「どこにお持ちすればよろしいですか?」


「ではこちらへ」


院長は立ち上がって部屋の出口へ向かう。扉の向こうにははしゃぎまくる子供たちがいる。


「あなたたち静かにしなさーい! 騒ぐ子は罰として夕ご飯はパンと水だけにしますよ!」


一瞬にして驚くほど静かになる。よく見るとケモミミの尻尾がピンと上に逆立ち、微動だにしていない。


「申し訳ありません。どうぞこちらへ」


院長にそう言われついて行く。

子供たちは無言で道を開けてくれるが、我々をキラキラした目で見つめている。思わず頭を撫でたくなるのを我慢してついて行くと、食堂のような部屋にすぐに到着する。


更に奥の調理場へ連れていかれると、


「ここに持って来て頂ければ大丈夫です」


院長にそう言われる。そこには2人ほど下拵えをしているおばちゃんがいた。真ん中に大きな作業用のテーブルが置かれていた。


「じゃあここに出しますね」


そう言って1頭分のウルフ肉をテーブルの上に出す。


「「収納…!?」」


院長とおばちゃん達が驚いて呟く。

それを聞いてまずかったかなと思いカルアさんを見ると大きな溜息をついていた。


誤魔化すように質問する。


「ここには何人ぐらい居ます。足りますかね?」


そう聞くと院長は慌てて答えてくれる。


「ここには87名ほどいます。…たまに孤児院出身の冒険者が足2本ほど持って来てくれるのですが……、全部頂いて宜しいのでしょうか?」


「足りるなら問題ありません。また持ってきますので、子供たちに食べさせてください」


「「ありがとう御座います。」」


そう言うとおばちゃん達と料理法について相談を始めた。


アタルは邪魔になるといけないので食堂へ移動すると、ネコ耳の幼女が飛びついてくる。


「アタル兄ちゃんありがとうでしゅ!」


思わず抱きとめると我慢できずにネコ耳ごと頭を撫でまくる。どさくさに紛れて尻尾をモフってやる。


「お、おう、どういたしまして」


そう言って顔をよく見ると、見覚えのある顔をしている。


「おまえカティに似てるな~」


「カティの妹のキティでしゅ!」


「そうか~、よろしくな~」


「よろしくでしゅ~!」


そう言ってまた頭をなでる。

それを見ていた他の子供たちも「アタル兄ちゃん!」と言いながら次々とやってくる。もみくちゃにされながらも、思わず微笑むのが止まらない。


よく見るとカルアさん達も同じように子供たちが群がっている。


あっ、カルアさんも尻尾をモフってる!


ずるいと思ったが、それを見て遠慮なく子供たちを撫でたりモフったりしまくるのだった。


暫く子供たちと戯れていたが、思った以上に子供たちが痩せているのが気になる。


「みんな~、一度離れてくれるかなぁ。」


そう言って子供たちをテーブルの向こう側に誘導する。カルアさん達には近くに来てもらう。


調理場にコップがないかと聞くと、お椀のようなスープ用の皿を出してくれた。テーブルの上にそれを置き、秘かに作っていたスポドリポーションの水筒を大量に出す。


スポドリポーションは塩と砂糖を水で溶かし、少しだけポーションを入れたものだ。


「これから元気の出る水をみんなに飲んでもらうよ~。4列に並んでくれるかな~!」


普段から大人数で過ごしているからなのか、驚くほど素直に列を作り並んでくれる。しかし肩車状態のキティだけは並ばない。尻尾が背中にペチペチ当たるのが気持ち良くそのままにしておく。


スープ皿にスポドリポーションを入れてキティに渡すと、頭の上で普通に飲む。


「おいしいでしゅ~! お腹が温かくなるでしゅ。」


効果は良いようだ。

子供たちに次々と飲ましてくと、飲んだ子は美味しいと言ってくれ、元気が出ているようだ。あっと言う間に全員が飲み終わってしまう。

借りたスープ皿を調理場に返す時に洗浄ウォッシュを秘かに使って綺麗にする。


返した後に院長に尋ねる。


「ここに居るのが全員ですか?」


「体調を崩している子が4人ほど部屋で休んでいます。」


すぐに部屋に案内してもらう。部屋にはベッドなどなく雑魚寝状態で4人の子供が寝ていた。すぐに子供たちの近くに行くと洗浄ウォッシュ小浄化プチクリアを使う。


子供たちは魔法を使われたことで目を覚ますが、やはり調子が悪そうだ。スポドリポーションを水筒で出して一人ずつ順番に飲ましていく。


効果は絶大ですぐに元気になり起き上がり始める。

起き上がった子にもう一度スポドリポーションを飲ませると、驚くほど元気になる。病気というよりは栄養不足による衰弱だったのだろう。


「今日の夕食は肉が出るからしっかりと食べろよ」


そう言って頭を撫でると、嬉しそうに笑ってくれた。


食堂に戻るとカルアさん達が凄いことになっていた。髪はぼさぼさになっており、数人の子供が体によじ登っている。

戻って来たアタルと目が合うと、助けてと目で訴えて来た。


「そろそろシア達の様子を見に行こうか?」


子供たちを体から下ろすと、カルアさん達は急いで近づいて来る。


院長に軽く挨拶して孤児院を出ようとすると、


「アタル様、その肩に乗っているのは一緒につれて行くのですか?」


カルアさんに指摘されキティを肩車したままなのを思い出す。


「お姉ちゃんを迎えに行くのでしゅ~♪」


キティは嬉しそうにアタルの頭をペシペシと叩きながら声を上げる。

院長を見ると少し笑いながら頷いてくれた。


「迎えに行くだけだから危険もないでしょ。キティも今日は特別だからな!」


「わかったでしゅ~」


本当に分かっているのか不安に思うが一緒に行くことにする。


東門を出てシア達を探すとすぐに見つかった。


「お姉しゃ~ん!」


キティが声をかけるとカティが急いでやってくる。


「キティ! なんで勝手に来てるの!」


「院長には許可をもらって、一緒に迎えに来たから大丈夫だよ」


すぐに他の子供たちも集まって来たので簡単に経緯を説明する。


少し時間は早いが今日は早めに終わりにしようと話して、今日の採取した物を受け取る。予想以上に収穫が多い。特にシュガの実は昨日の倍はあった。


受取りを渡して全員で孤児院に帰ると、時間は早いがすでに食事を始めていた。


「夕食にしては少し早いのでは?」


「この孤児院は40人が定員だったのですが、実際にはその倍以上もいるので、食事も何回かに分けないと食べられないんですよ」


その説明で確かに建物の大きさの割に人数が多いなと納得する。

明日も同じように買取と、食料を届けると話して屋敷に戻る。


それから3日ほどほとんど同じように過ごし、ケモミミを堪能出来て最高な日々を過ごす。


ある日屋敷に戻るとロビーにはたくさんの布と壊れた防具や剣、鍋などの金属類が置かれていた。先日頼んだ物のようで収納して夜に色々作成した。


そして夕飯の時にハロルド様から明日、朝から話がある言われた。最近のケモミミ天国での行動を注意されるのかな?


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