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第40話 何とか解決?

全員からドッズさんと私に注目が集まってしまった。


クレイマン司教は神罰が恐ろしくないのだろうか?


クレイマン司教は神の存在を信じていないか、獣人の神を信じていないのではないだろう。だから平気で神を愚弄するようなことを言えるのだろう。


「すぐ近くに神像があるのに神を愚弄するのは、神罰を分かっていないのでしょう。神罰を受けた教会関係者を、彼に見せてはいかがですか?」


私はゼノキア侯爵に向かって提案する。


「ふ、ふざけるな! 神罰はお前らの作り話だろう!」


クレイマン司教は私に向かって文句を言ってきた。しかし、彼の仲間以外は気の毒そうに彼を見つめている。その雰囲気にクレイマン司教とその仲間たちは戸惑っているようだ。


教会の人間は神の存在を信じていないのだろうなぁ。


「そうじゃのぉ、神罰でどうなるか見せたほうが、この場で愚かなことを言うまい。おい、拘束した者達を運んでこい」


運んでこい……、歩けない人が多いからなぁ~。


ゼノキア侯爵の指示で兵士たちが建物から出ていく。クレイマン司教は必死に動揺しているのを繕っているが、仲間たちは露骨に動揺している。


私としてはこれ以上神が暴走すると、フォローが大変だと考えるのだった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



すぐに兵士たちに拘束されたデジテル司教たちや聖騎士たちを連れてきた。半分の者は兵士に抱えられ運ばれてきた。


「そんな!」「イスタ殿!」「まさか!」


クレイマン司教の仲間たちは、その姿を見て驚きの声を上げる。クレイマン司教は声こそ上げなかったけど顔色が悪い。


「ど、どうかお許しください。私達は命じられて女神像を教会にお迎えしようとしただけです。二度と愚かな真似はしません。どうか、どうか……」


デジテル司教はふらつく足取りで、アーニャ夫妻の方に向かって祈るように懇願し始めた。そして、他の者達もそれに倣って、謝罪の言葉を言い始める。


みこと♪『簡単に許すはずありませんわ!』


お願いだから暴走しないでぇ~!


「う、嘘だ! 彼らは偽物だ! 私を騙すために、よ、用意したのだろ!」


クレイマン司教は、まだ神の存在を信じていないのだろう。必死に自分に言い聞かせるように叫んでいる。その姿を同情するような目で全員が見つめていた。


確かに誰もが神の存在をあまり信じている感じはしなかったなぁ。


私はこの世界に来るときに神に会っているから、この世界は神の存在を信じる人が多いと思っていた。しかし、教会の横暴や神の名を語った嘘の神託により、この世界では逆に神の存在が軽視されているというか、信じられなくなっていた感じがする。


そういう意味でも教会の罪は重いと思うなぁ~。


ゼノキア侯爵が何か言おうとすると、その前にデジテル司教がクレイマン司教に文句を言い始める。


「アンタだ! アンタが変ことを私にさせたからこんなことに……」


涙を流しながらクレイマン司教に言った。


「わ、私は女神像をお迎えしろとだけ言っただけだ!」


「コイツはお前の部下じゃないか!」


デジテル司教が指差したのは聖騎士のイスタだった。彼は老化の進んだデジテル司教より、さらに老け込んでいて、まともに手を動かすこともできなくなっていた。


「知らない! 私はそんなこと知らない! 邪神が彼にしたことだぁ!」


シンジ『ほう、まだ儂を邪神と呼ぶか!』

みこと♪『まさか私の事ではありませんよねぇ』


コイツ馬鹿か!


「2人とも落ち着いてください! 大きく息を吸ってぇ~、そう、そんな感じでもう一度。はい、良い感じですよぉ~」


今度は2人がキラキラし始めて、私は必死に2人を落ち着かせる。


アタル『神が簡単に暴走するなぁーーー!』

みこと♪・シンジ『『ごめんなさい!』』


「いい加減にしろーーー! 神の加護を持つ2人の前で神を愚弄するとは何事だぁ!」


あっ、エドワルド様が切れたぁ!


キラキラ夫婦を見て一番焦っている感じだ。


「お主がそこの連中と同じように神罰を受けるだけなら構わないが、神の怒りがお主だけでなく、この地や町、国ごとになったらどうするのじゃ!」


ゼノキア侯爵も真剣な表情で怒りを滾らせている。


確かに神の怒りというか、神罰がどこまで影響が出るか理解できないよねぇ。急に神が身近になったことで、彼らも内心では恐れているのかぁ。


「そ、そんな、神が居るなんて、そんな、そんなはず……」


おいおい、教会の人間が神を信じていないのはどうなんだぁ!?


まあ、すでに彼の仲間たちは信じたのか、跪いて必死に祈りを捧げ始めているけどね。


「神の存在を信じていないのに神託を持ち出すとは恥知らずのようじゃな」


ハロルド様は愚か者を見るように言った。


「お前が神を信じなくても良いが、この場で神を愚弄すれば即座に我々がお主の首を刎ねる。神の見ているこの場で、また嘘をつけばどうなるのか考えて答えよ!」


ゼノキア侯爵も神を恐れているようだが、それを上手く利用して彼らを脅している。さすが偉いさんは違うと思いたかったが、言い終わると私に目で大丈夫か窺うのはどうかと……。

私は仕方ないので頷くと、露骨にホッとしている。


そして目の前には、呆然として何やらブツブツと呟くクレイマン司教と、彼が何を指示していたのか、許しを請うように叫び出す仲間たちがいた。



   ◇   ◇   ◇   ◇



ハロルド式の尋問の必要もなく、彼らはすべてを自白した。クレイマン司教は武力行使を容認していた感じではあるが、聖騎士のイスタの暴走が一番の原因だったようだ。


どこまでクレイマン司教の罪といえるのか微妙な感じではあるが、領主が管理する像の破壊や略奪を指示したことは間違いないようだ。今後は国と教会との話し合いになるだろう。


今は偉いさん達が神像を見てみたいと言い出したので、一緒に神像の前に来ている。


エドワルド様が必死に祈りを捧げる姿が気の毒に思う。


ある意味、厄介者が自分の町にできたようなものだよなぁ~。


みこと♪『厄介者は酷い!』

シンジ『そ、そうじゃ!』


暴走しなければなぁ~。


みこと♪・シンジ『…………』


「アタル殿、神像は2柱だと聞いていたのだが、この像は?」


そういえばチンチクリンを忘れていた!


転子『チンチクリンは酷いのじゃぁ~!』


「これは転生の女神像なんですが、神の加護が宿っていません。まあ、ただのお飾りですよ」


転子『お飾りは酷いのじゃぁ~!』

アタル『加護がないから諦めて!』


「それより、アタルと呼び捨てにしてください。私はただの平民ですから」


ゼノキア「そ、そうか……」

カービン「ただの平民……」

ハロルド「すまんのぉ……」


「それより、あの時のあれはどういうことなのだ?」


エドワルド様が尋ねてきた。


「あの時のあれ?」


「そうじゃ、2人に息を吸って落ち着かせていただろう。あれのことだ!」


あぁ、あれね……。


「あれは興奮して神の加護というか、神罰の執行というか、暴走というか、そういことが起きないように落ち着かせてみただけです。まだ2人も加護を受けて間もないですから、冷静に行動できるようにした方が良いかなぁ~と思いまして……」


うまく説明できるかぁーーー!


「そいうことなんですね。私達夫婦は、加護を受けるものとして冷静に物事を判断する修業が必要なんですね!」


うん、でもそれはアーニャ夫妻のだけでなく神にも修行を積んで欲しいなぁ。


みこと♪・シンジ『…………』


これまでは神が簡単に地上に関与できなかったと聞いている。神像を創ることで簡単に関与できるようになるなら、神も考えて欲しいなぁ~。


転子『本当じゃ! 考えて欲しいのじゃ~』


アタル・みこと♪・シンジ『『『お前が一番危ない!』』』


心の中で『自重は大事』だと自分に言い聞かせるのだった。


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