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第12話 異世界生活へ

頭の中に響くアラーム音でアタルは目を覚ます。そういえば寝る前に6時に鳴るように設定した事を、まだぼやける頭で思い出す。


体を起こそうとすると、体の上に掛けていたローブが盛り上がっていて、ミュウが私の上で寝ているのに気が付く。

ミュウを起こそうとすると、足にシャルが抱きついて寝ているのだが、シャルは股間を枕にして寝ていた。


さすがにそれは不味いだろぉ!


ミュウを抱えて起き上がり、体の位置を少し移動すると、シャルの頭は股間から落ちたが、目を覚ます様子はない。


周りの様子を伺うと、すでに起きて朝食の準備をしている騎士が2人ほど窯の前にいるのが見えた。

騎士もアタルが起き上がったのに気付いて目が合うと笑顔で軽く頭を下げる。アタルも寝ぼけた顔のまま頭を下げ返す。


意識がハッキリとしてくると転生してからのことを思い返し始めた。



スキルの検証や採取は何も問題ない。いや、問題もあったがそれ以上に楽しい。


シャルとミュウについては、この世界で初めての知り合いだし、最初は妹に似てるのかと思ったが、性格や話し方は全然違うけど、何故か気になる存在だ。


しかし、辺境伯一行と知り合えたのは良かったと思う。


漠然と自分の能力は隠す方が良いのかと思ったが、隠そうにも何を隠すべきなのか分からないし、この世界で生きて行くのに必要と思って見せた能力ですら、非常識認定されてしまった。


ハロルド様は普通に良い人に思えるし、もう少し常識や知識を増やすのに、これほど最適な人物は居そうにない。


やはり神様がなにか画策しているのだろうか?


しかし幸いなことにハロルド様は非常に好人物のようだ。どこか事故で亡くなった祖父と雰囲気は似ている。強引に話を進めるところは社長に似ているかなぁ。


アタルが色々と考えを巡らせていると少しずつ皆が起き始めた。


ミュウも目を覚まして私から降りると、シャルを起こし始めた。


全員が起きた様なのでアタルは立ち上がって部屋の真ん中まで歩き自分に洗浄ウォッシュを使用する。


するとそれを見ていたアリスお嬢様がアタルの方に歩いてくる。


「アタル様、おはようございます。」


「おはようございます。アリスお嬢様。」


「もしよろしければ私にも洗浄ウォッシュをお願いできますでしょうか?」


アタルはまだ幼い少女だがやはり女性だなと思った。


「喜んでさせて頂きます。洗浄ウォッシュ


「ありがとうございます。」


「恐縮です。私にはアリスお嬢様のお願いは断れません。いつでもお申し付けください。」


「アタル様は女性の扱いがお上手です。クレアが羨ましいです。」


アタルは女性の扱いは苦手なのだが、まるで違う世界にいる事で恥ずかしがらず対応しているだけである。それにアリスは妹と年齢も近いため冗談半分で芝居がかったセリフを言っただけである。


なんでそこでクレアさんが出てくる?


疑問に思いながらシャルとミュウも洗浄ウォッシュを掛けてやる。


その後は美味しくない朝食を食べ、全員で出発の準備を始めた。

アタルは特に準備することもないので、他の人達が準備しているのを見ているだけだ。


休息所を出ると馬車が前に止められており、馬車から荷物を降ろしているようだ。御者の人に理由を聞くと、馬が1頭だけになったので荷物を降ろさないと領都プレイルまで移動が難しいらしい。


ハロルド様が中心となり護衛騎士と誰が一番荷物を持てるか競い合っている。無理に担いだため全員の足元がふらついている。


昨日みたいに魔物に襲われたらどうするのだろう?


自慢げにアリスお嬢様にサムズアップするハロルド様。


やはりただの脳筋孫娘大好き爺だろ!


「あの~、その状態で魔物に襲われたら不味くないですか?

無理に担ぐよりも荷物を馬車に乗せたまま押した方が良いと思いますけど?」


ハロルド様と護衛騎士は驚いた顔を見せた後にバツが悪そうにする。


本当に気付いていなかったんかい!


アリスお嬢様とクレアさんも溜息を付いている。


自重をしようと思っていたが、これでは無事に領都に着けるか心配になり、荷物はすべてアタルが収納して持っていくことにした。


道中も特に問題はなく何度か角ウサギに襲われたが騎士がすぐに討伐するのであった。


馬が1頭なので休憩を多くとったが、それでも昼過ぎには領都プレイルの城壁が見えて来る。城壁は高さが10メルほどあり石造りで頑丈そうである。


遠くからその姿を見て、本格的な異世界生活が始まるのを感じたのである。



   ◇   ◇   ◇   ◇



不思議な雰囲気の人だ……。


クレアは町へ一緒に移動するアタルを見てそう思った。


森ウルフに腹を噛まれて、教会から手に入れたポーションでは絶対に助からなかったと思う。


ポーション容器ではなく、竹で作った水筒にポーションを入れ、普通のポーションより効果が高く、治るまで躊躇なく大量のポーションを使ってくれた。


あの時、私は死んだはずだ!


感謝という言葉では言い表せない。


今この時も、そしてこれからも、すべて彼から贈られた人生じかんである。


でも彼は、私を助けたことを、まるで気にしていない。


対価を求める訳でもなく、自慢する訳でもない。


これまであった男の人とは、全く違う雰囲気の人なのは間違いない。


一緒に居る獣人の少女は、彼を使徒様だと言った。


使徒様だと思える威厳は全然無い。それどころか、その気になれば簡単に倒す事が出来そうである。



ハロルド様にアタル殿に嫁げと言われたが、いつもの勢いと思い付きで発言されたのだと思う。


ハロルド様は尊敬できる主ではあるが、時に深く考えることなく、その時の思い付きを言葉にして、翌日には忘れている事が良くある。


アタル殿は考えると答えてくれた。


彼から贈られた人生じかんである。彼が望んでくれるなら、喜んで嫁でも従者でもなろう。


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