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第24話 自重は大事!パート2

エドワルド様との話し合いは順調に終わった。本当に順調すぎて困るぐらいだった。


話合いを始めてすぐに、グラスニカ侯爵と呼ぶのを止めてくれと言われてしまった。同じようにエイブル伯爵もカーク様と呼ぶことになった。最初は呼び捨てで構わないと言われたが、それこそ勘弁してほしかった。結局、ハロルド様と同じ名前に様を付けることで許してもらった。


話合いも俺からの提案はほとんど受け入れられてしまう。エドワルド様は「わかった」「それで構わない」ばかりで、本当に大丈夫かこっちが心配になるぐらいであった。


ハロルド様の提案で公的ギルドの職員が間に入り、グラスニカの役人から何人か参加して、将来的には任せることになった。


ハロルド様にはなるべく、公的ギルドの職員を前面に出して行動するように、きつく注意された。


結局あの周辺の再開発を一気に進めることになり、孤児院や公的ギルドの各支部、福祉ギルドや市場の移転まですることになった。そしてその再開発した区画の管理は公的ギルドが管理することになった。


実はあの獣人が多い市場は、ほとんどが違法屋台だったらしい。商業ギルドが獣人には商店を出すことを許さないためにそのような状況になっていた。今後はあの区画の店は商店ギルドの管理下にすることになった。


それらの調整や再開発の日程は公的ギルドの職員と役人、獣人たちとの話し合いで進めることになり、俺は調整された範囲で指示に従って作業をするだけだ。


もちろんあの神像を設置した場所は、アーニャ夫妻の管理下に置かれる。しかし、2人だけでは大変なので孤児院などの施設と共に、公的ギルドの福祉ギルドが実質は管理することになる。


さらにグラスニカ領内の農産物は全て公的ギルドで買い上げてから、商業ギルドや商店にも販売することになった。実質的にグラスニカ領内でも商業ギルドより商店ギルドが上位になるように進めることになったのだ。


そして暫定的にエルマイスターとグラスニカ間で郵便ギルドを開設し、テク魔車運航を進める方向で話も進み始めた。


うん、一気にグラスニカに公的ギルドが広がりそうだ!


さらに公的ギルドに人を回すため、役所の改修とシステムの構築の依頼も受けることになった。塩会議終了後に一気にそれも終わらせることで話が付いた。


エドワルド様、やけになってないよね……。


話合いで疲れてくると健康ドリンクを飲んでは、目をギラつかせていたので大丈夫だと信じたかった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



話合いが終わり、サバルがアタルを送りに一緒に会議室から出ていくと、ハロルドはエドワルドに尋ねる。


「良いのか? 急激に町が変わることになるぞ」


「これで私もハロルドと同じ借金持ちだなぁ」


エドワルドは自嘲するように笑いながら話した。


「そうですねぇ。しかし、これほどの再開発や魔道具を手に入れると考えれば、破格の安さでしょうなぁ」


カークも笑いながら話している。ハロルドは2人が、やけになっているのではないかと心配になる。


「その通りだ。これほどの改革をするとなると、計画してから5年から10年はかかる事業だな。それが破格の安さで、数日で終わるとなればやらない選択肢はないだろう?」


エドワルドはハロルドに向かって話した。


「しかし、公的ギルドも徐々に進めると言っていたと思うがのぉ」


「それは塩の問題が片付かないと無理な話だったからだ。先にそれを聞いていたら、違った判断になるのは当然だ!」


エドワルドは気合の入った様子で話した。


「そうですねぇ。私もアタル殿に我が領にも来てほしいぐらいですね。まあ、もう少し準備の時間は欲しいですがねぇ」


カークの話に2人も頷く。自分達の意思とは関係なく話が進み、気が付くと選択肢が他に無くなっているのである。これでは誰が領主か分からなくなる。


「そうじゃのぉ。儂も勢いでここまで来たが、この数か月を考えるとよく我慢してきたと思うのぉ」


ハロルドの話に2人は頷くしかなかった。もし自分の領にあんな人物が突然現れたらと思うと、一瞬ハロルドを尊敬しそうになる。


「しかし、アタル殿の知識や能力を見ると、使徒だと言われても納得できるのだが……」


「私もそう思わないでもありませんが、あの子供のように目を輝かせて物造りを提案する姿は……」


「甘いのぉ。あの子供のような目で、とんでもない武器まで作るのじゃ。それも碌に検証もせずぶっ放してから、予想以上に威力があると言われてみよ。思わず怒鳴りつけたくなるわ!」


「「「ふぅ~」」」


3人は同時に溜息をつくしかできなかった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



サバルさんと一緒に戻ってくると、アーニャ夫妻と顔役たちが心配そうに待っていた。


「あれ、皆さんどうしたんですか?」


私がみんなに声を掛けると、全員が顔を見合わせて大きく息を吐いた。


サバルさんはそれを見て笑いを堪えるようにしながら戻っていった。


「みなさん心配していたようです。いつものことだから問題ないと言ったのですが、旦那様が戻るまで待っていると言いまして……」


ラナが今の状況を説明してくれた。


「はははは、そうなんですよぉ。いつもやり過ぎてハロルド様に叱られるのはよくあることなんです。今回はなんと他にも2人のお偉いさんが居て心配だったんですが、意外に無難に済みましたよぉ」


何故かみなさん呆れたような表情をして、やり過ぎた所では激しく頷いていた。


なんか複雑だぁ~!


「それでアーニャさん達がここに住んで管理する許可も、領主のエドワルド様から頂きましたのでご安心ください」


そう話すと、アーニャさんとドッズさんはお互いに手を握り締めて喜んでいる。


「ああ、それからこの辺の再開発の許可も頂きました。孤児院の建設や市場の移転も含めてやることになりました」


うん、全員が呆気に取られている。


「安心してください。これは公的ギルドやお役人さん達が計画的に進めてくれるので、皆さんはその人たちと相談してくれれば問題ありませんよ」


全員がホッとした表情になる。


何か納得できない……。


「じゃあ、突然建物ができたりしないんですよね?」


ドッズさんが真剣な表情で尋ねてくる。


「はい」


え~と、皆さん喜び過ぎでは……?


良かれと思って私は色々したけど喜んでいたよね?


「旦那様、みんなが助かることでも、旦那様のすることは少し常識外れなんです。感謝はしているのは間違いありません。しかし、連続でそれが続くとさすがに……」


えっ、そうなの!?


まさかのクレアからの忠告に驚く。何となくアーニャさん達が頷いている。


そうなのぉーーー!


ムンクの叫びスタイルで驚いていると、アーニャさんがフォローしてくれる。


「違います! 本当にアタル様のされることには感謝しているのです!」


いやいや、ドッズさんが後ろから止めようと服を引っ張っているよ……。


ラナとクレアを交互に見るが、目を逸らされてしまう。


うん、やっぱり自重は大事な気がしてきた……。



   ◇   ◇   ◇   ◇



グラスニカの領都にある教会では、この町の司教が教会の関係者から聞き捨てならないような情報を聞いていた。


「神像が町の中に?」


「はい、聞いた話では神像には神の加護が宿っていると噂に……」


「なんと、それはどこにあるのじゃ!? すぐに教会にお迎えせねばならん!」


「そ、それが、獣人が多く暮らす廃墟の一部にあるそうです……」


「そんな穢れた場所に神像を置いておくことは許されん! すぐにもこの教会にお迎えせねばならん!」


司教は真剣な表情で報告した男に命じていた。しかし、司教は神の存在など信じてはいなかった。噂になる神像なら、教会に置くだけで金になると思ったのである。


「しかし……」


報告した男は口籠る。


「なんじゃ。何かあるのか?」


司教は男の煮え切らない態度にイライラして質問する。


「神像は2柱あるという話なんですが……」


2柱と聞いて2倍儲けられると司教は喜んだ。


「1柱は獣人の神だと……」


それを聞いた司教は急に冷めた目で男を見てさらに尋ねる。


「もう1柱はなんじゃ?」


「は、話では生命の女神だと……」


男は司教の雰囲気が急に変わったことで、報告しなければ良かったと内心で思った。


司教は生命の女神と聞いて、初めて聞く女神だと考えていた。しかし、儲けられそうな女神だと考えた。


「では、その生命の女神像だけ教会に持ってこい! 獣人の神の像は邪神像に違いない。破壊するのだ!」


「む、無理です! 獣人共がたくさん集まっているのです。私は近づくのも恐ろしくて噂を聞いただけです。人族が簡単に近づけるとは思えません!」


司教は話を聞いてどうするか考える。確かに獣人の中に紛れ込むのは難しい。獣人を雇っても獣人の神の像を破壊するとは思えなかった。


もう少し調査してから慎重に行動するべきだと考えるのであった。


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