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第20話 自重は大事!

私は混乱したこともあり、アーニャさんへの返事は外では話せないことも多いので、テク魔車をもう一台出して、その中で話すことにした。


アーニャさんとドッズさんは真剣な表情で私の前に座っている。


「これから話す内容は絶対に秘密にしてください」


2人は私の深刻な表情を見て唾を飲み込んでから頷いた。


「私は鑑定が使えます」


2人が驚くと思ったら普通に頷くだけだった。鑑定は珍しいスキルだと聞いたのだけど……。


ま、まあ、驚かないのなら話がしやすいよね……。


「あの像ですが鑑定すると、獣人の神の像には獣人の神の加護を、生命の女神の像には生命の女神の加護が、それぞれに宿しています!」


2人は驚いたようだが、すぐに笑顔を見せ、涙を零して頷いた。


うん、簡単に信じちゃうんだね……。


「私の前に居た場所でも、真摯に神を信じてたくさんの人が祈りを捧げることで、同じようなことがありました」


嘘です! 加護の理由を私にならないように考えました!


2人は何故か言葉を発しなくなり、信じたのかはわからないがただ頷いている。


泣くか頷くかしかしなくなってるぅ!


「私は獣人ではないので、獣人の加護の効果は分かりません。しかし、生命の女神の加護は分かります。生命の女神の加護は子宝や成長、命を育むものです」


アーニャさんは嬉しそうな顔をしながらも複雑な表情になる。

実は生命の女神から、アーニャさんは子供ができなくて悲しんでいることは聞いていたのだ。


「それぞれの神に真摯に願いを込めることで、それぞれの神の加護の一部が叶えられる可能性があります」


特にアーニャさんが真剣な表情で頷いた。ドッズさんも優しい表情でアーニャさんを見ている。たぶんアーニャさんは必死に願いするつもりだろう。


すでにそんな必要はないのだが……。


「ただ、問題もあります!」


2人は問題と言われて、深刻な表情で私の話に集中する。


「神の加護の宿った像は特別なものです。あの像を悪用したり、穢したり、破壊すると神罰を受けることになります!」


2人は目を大きく見開き驚いている。


さあ、これからが話の本番だ!


「失礼ですけど2人のことは最初に会った時に鑑定しています。申し訳ありません!」


「「問題ありません!」」


私が謝罪すると2人は即座に答え怒ることはなかった。鑑定スキルは希少だから良く分かっていないのかもしれない。


「そして先程の像を守りたいと私に話してから、もう一度念のために鑑定しました」


相変わらず2人は頷くだけだった。


「アーニャさんには生命の女神の加護が、ドッズさんには獣人の神の加護が宿っていました」


2人はお互いに顔を見合わせてまた涙を零し、お互いに抱き合うと泣き出してしまった。アーニャさんはすぐに加護の効果を知ることになるだろう……、子供ができるという効果で……。



暫くすると落ち着いたので、さらに話をする。


「2人に加護が宿ったのは、あの像を管理する立場になったことが理由だと思います。私が許可するとかではなく。神がお決めになったのでしょう。私もできる限り支援します。あの2柱のことをお願いします」


私は2人に頭を下げる。私の軽率な行動で2人の未来をある程度決めたようなものだ。


うん、自重は大事だな! そして神も自重してほしい!


「別にあの像の加護について広める必要はありません。それぞれの神の恩恵が貰えるのかもと教えるだけで構いません。結果的に加護の効果が出たとしても、偶然だと思う人もいるでしょうし、無理に信じさせる必要はありません」


2人はまた真剣に頷く。


「そして神罰があることも仄めかしてください。神罰は加護の逆の影響が出ます。例えば生命の女神なら子供は……、そういうことになります!」


詳細は話さないが逆に真実味が出たのか2人は深刻な顔で頷いた。


それからさらに細かいことを2人に話しお願いした。しかし、2人の私を見る目が、まるで神か使徒を見るようで、居心地が非常に悪かった。


そして、先程から様々な神から神託が届いている。

神も神像の効果を理解していなかったのだ。正確なことは分からないが、神像があると比較的に容易に像に加護が与えられ、その神像を通して人に加護を与えると神の負担が少なくてすむらしい。


それ以外にもあるようだが、神像の効果を神も知り、他の神々が自分の神像を創って欲しいと神託を次々と送ってくるのだ。


それと転生の女神はそんな効果があるならと、加護を与えようとしたができなかったらしい。


私はそれこそ神像の形に不満を言った天罰ではないかと思うのであった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



ハロルド達が会議室に戻るとすぐにエドワルドが呟いた。


「あれでは、アタル殿は使徒だと信じたくなるな……」


「はい、見た目は普通ですが、発想が普通ではありませんね……」


同意するようにカークも話した。


「ここまで2人も知った以上、儂と同じ苦労を背負いこむことになるのぉ」


ハロルドは2人に同情するような目を向けて話した。2人はハロルドの話の意味が分からず戸惑った表情を見せる。


「なぜ苦労なんですか? 確かの今回のことで獣人を守ることは大変だとは思います。しかし、正しいことをするのであれば、それは苦労ではないと思いますが?」


カークがハロルドに質問した。エドワルドも隣で頷いている。


「そうじゃのぉ。アタルのやることは基本的に正しいことじゃのぉ」


ハロルドはカークの話に同意するように話した。2人も頷いている。


「そして人々の為にもなるのじゃ。これまで妥協したり諦めたりしていたのがアタルのお陰で解消されるのじゃ。

私以上に役人や住民がやる気になるのじゃからのぉ」


ハロルドは何故か遠い目で話す。


「それは良いことではないか。そんな苦労なら私もしてみたいくらいだ!」


エドワルドが話し、カークも同意する。ハロルドは気の毒そうに2人を見てから話す。


「そんなことが、たった数ヶ月で起きたのじゃ。それも世界を変えるような変革が次々とのぉ。儂は何度も思ったものじゃ。もう少しゆっくり進めてくれんかとのぉ」


ハロルドの話を聞いて、2人も少し考えてみる。

エルマイスターで起きていることや、今回聞いた公的ギルドのこと、そして今回の獣人のこと。それが数か月の間に自領で起きたらと考えたのである。


「先程の獣人の件は良い結果に終わったじゃろ。じゃがのぉ……、儂は明日にはさらに何か起きるのではないかと心配になるのぉ」


ハロルドの話に、2人のまさかと思いながらも顔色が変わる。


まさかそんなことはないはずだとエドワルドは自分に言い聞かせる。獣人の問題は落ち着いたはずで、アタルの考えや行動を見る限り、暴動など起きそうにないはずである。これ以上問題は起きるとは思えなかったのだ。


カークも同じように、ハロルドの考え過ぎだと思ったのである。


ハロルドはそんな2人を見て、いずれ分かるだろうと考えたのであった。


「そんなことより、本題である話をしようかのぉ」


ハロルドの話に2人も考えても始まらないと思い直し、気になっていた本題の話を聞くことにするのであった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



「塩問題は一気に解決できそうじゃな……」


「それどころか国の懸念事項すら解決しそうです……」


ハロルドの説明を聞いてエドワルドとカークは呟いた。


「そうじゃのぉ。まだ国単位で安定供給できるかの問題はあるがのぉ」


ハロルドも国の塩が安定供給できる確証はなかった。


「しかし、王家のダンジョンでほとんど海のようなダンジョンがありますよね。そこでも塩が抽出できるようになれば、その可能性は高くなるのでは?」


カークが思い出したように話した。


「まあそうじゃのぉ。しかし、それも検証しないと何とも言えないのぉ」


「確かにハロルドの言う通りだな。憶測で国家や領の運営はできないな。

しかし、国規模でも一時的でも国家戦略が変わるほどの量がすでに確保されている。そして、間違いなく今回の塩会議での我々の戦略も変わるのは間違いない! はははは」


エドワルドは嬉しそうに話した。


「だから2人にも先に話して相談したかったのじゃ。わははは!」


ハロルドも嬉しそうに話した。するとカークも笑顔を見せながら話し始める。


「フフフ、それならもう少しこの計画に手直ししませんか? これでもヤドラス子爵に十分に打撃は与えられますが、……のようにすれば、これまでヤドラス子爵が言っていた塩で儲けていた事実が確かめられている可能性があります。さらに……と言うようにすれば罠にかかって、さらに追い詰めることができます」


「クククッ、さすが参謀を務めていただけあるのぉ。お主も悪よのぉ」


「いえいえ、ハロルド殿ほどではありませんよ」


「「ふわっははははは」」


ハロルドとカークは悪人面を見せ、お互いに不気味な笑顔で笑っていた。すでに話し合いが日付を跨いだこともあり、これまでの鬱憤うっぷんを晴らすように変なテンションになっていた。


「これではどちらが悪人なのか分からぬではないか……」


エドワルドはその2人を見て、少し自重して欲しいと思いながら呟くのであった。


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