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第16話 ご、誤魔化す!?

魔導銃を取り出して外に向かおうとすると、アーニャさんが焦ったように話しかけてきた。


「ま、待っておくれ! あの声は私の亭主よ。わ、私が話してくるから!」


えっ、アーニャさんの旦那さん?


アーニャさんは急いで部屋の外に出ていく。私達も心配で後ろをついて行く。


「女房に合わせろ!」


部屋の出口付近までくると声が聞こえた。


「アンタ! 何を騒いでるんだい!」


アーニャさんが旦那さんの倍の声で叱りつけた。


アーニャさんの後に続いて部屋の外に出ると、猪獣人の大柄の男が武器を持っていた。それ以外にも4人ほどの冒険者風の男たちもいる。


「お、おまえ無事だったのか?」


猪獣人の男はホッとした表情で話した。


「何を言ってるんだい! 私はこの通りピンピンしてるよ。それより武器まで出してアンタは何をしてるんだい!」


アーニャさんは腰に手を当て話した。


「い、いや、おまえが兵士に連れ去られたと聞いて心配で……」


いやぁ、私も勘違いしていたようだ。


「旦那様、すぐにそれをしまってください!」


クレアさんがジト目で私に言ってきた。


「そうだよ、あれは私の亭主だから殺さないでくれよ!」


いやいや、殺さないから大丈夫だよぉ。


ちょっと気持ちが入り過ぎて暴走しそうになったけど、先日の実弾は使うつもりはないからね?


しかし、クレアだけでなくラナや護衛の人達もジト目で私を見ている。魔導銃を出したときに子供の遺体を受け取った少女まで涙目で怯えている。


「誤解だよぉ~、この武器はそれほど危険じゃないからね。ほら!」


プシュッ! バンッ!


近くの壁に向かって単発で魔弾を撃つ。壁に魔弾が当たると少しだけ壁が抉れただけだった。


「こんな感じで危険は……」


あれっ! なんで壁が揺れてるのぉ~!


「あ、危ない! 逃げろーーー!」


猪獣人の男が大きな声を出すと、一斉に全員がその場から走り出す。


俺は反応が遅れた子供2人を抱えて走り出した。


ズズーン! バリバリ、ズッシャーーーン!


崩落寸前の建物は2階部分が崩れ、その影響で1階部分も完全に倒壊した。運が良かったのは内側に崩れたことで、周辺に被害が無かったことだろう。


呆然と土煙の上がる現場を見つめていると、少女が呟いた。


「お家がなくなちゃった……」


それを聞いた他の子供たちのすすり泣く声が聞こえる。


アーニャさんと旦那さんは怯えた表情で俺を見つめ、クレアやラナたちはジト目で俺を睨んでいる。


待ってくれぇ~!


建物は崩壊寸前だったんだ。最後のトドメは私だけど、近いうちに崩壊していたはずだ。


ど、どうしよう!


「あ、安心しろ! お前達は私が責任を持って面倒を見る!」


そう話しながら少女の頭を撫でようとしたら、一歩下がられて避けられてしまう。


誤解だぁーーー!


「見ていなさい!」


ご、誤魔化すんだーーー!


威厳があるふりをして崩落現場にゆっくりと歩いて行く。そして崩れた残骸を次々とストレージに収納する。


ほんの数分で崩落現場は広い空き地になった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



呆然と空き地を見つめるアーニャさんに話しかける。


「この土地の所有者は誰になるのですか?」


アーニャさんが私を怯えるように見つめて答える。


「この辺は領主様だと思います……」


アーニャさんの怯える表情が私の精神をゴリゴリと削っているが、突き進むしかない。


領主の管理地ならハロルド様経由で何とかなるだろう。


少女に近づくと、少女はビクっと怯えた。


くっ、誤解なんだぁーーー!


心の叫びは表情に出さないようにして優しく少女に話しかける。


「その子を埋葬するのはどの辺かな?」


少女は迷いながら指差したのは空き地の奥だった。でも、建物が無くなったので、少し戸惑っているようだ。


私は手招きして少女を空き地の奥まで連れていく。他のみんなも後ろからついてくる。


奥まで行くと少女に問いかける。


「この辺かな?」


少女は戸惑いながらも周囲を見回してから頷いた。


私は土魔法で亡くなった子供が入るぐらいの穴を開ける。


少女から遺体を受け取ると、その穴に入れ土魔法で埋める。そして目を瞑ると天を仰ぐように顔を上げ、両手を開くとストレージから崩落した残骸の一部を出しながら作業を始める。


土魔法で土台を造り、生命の女神の像を人と同じぐらいの大きさで作る。そして両脇に転生の女神と獣人の神を創る。


転子『なぜじゃー! なぜ眷属である生命の女神が大きく、真ん中なのじゃーーー!』

アタル『えっと、見栄え?』

みこと♪『オッホホホホ、アタルさんたらぁ!』


神託はともかく、それっぽくできたのかなと思い振り返る。そして、呆然とする少女に話しかける。


「この真ん中の像は生命の女神様だよ。生命いのちを育む神様だ。

そして、このチン、小さいのは転生の女神様。亡くなった子供たちが新たな命に生まれ変わらせてくれる神様だ」


転子『誰がチンチクリンなのじゃーーー!』


そんなこと言ってないよ! 言いそうになったけど……。


「そしてこれは獣人の神だ。君達獣人を見守ってくれている神様だよ」


少女は呆然と頷くだけで反応が薄い。やはり、これでは誤魔化しきれなかったのか?


「やっぱり、アタルはしと様で、私の運命の人なのぉ~」


ミュウちゃんや、そのクネクネとしながら照れるのはやめてくれぇ~!


「「「使徒様!」」」


ち、違うからぁ~!


「ご、誤解ですよぉ~。私は少しだけ魔法が使えるだけです」


「「「少しだけ!?」」」


クレアとラナ、護衛のみなさんもお願いだからジト目で睨まないで~。


ぐぅ~。


そこに可愛いお腹のなる音が聞こえてきた。少女は恥ずかしそうに顔を赤くしている。


「そうだ! まだ食事していない子もいるし、ここで食事を食べよう!」


そう言って誤魔化すようにテーブルを出す。すぐにラナが準備を始めてくれた。子供たちも食事に意識が逸れたようで良かった。


アーニャさんの旦那さん達も涎を垂らしている。


「一緒にどうですか? アーニャさんに色々と助けてもらったのでご馳走しますよ!」


さらにテーブルを出して招待する。彼らも食べ物で誤魔化せたと思う。



   ◇   ◇   ◇   ◇



すでに昼も過ぎて、我々も昼食を食べっていなかったから、護衛の人達も一緒に食べ始める。私は食事しながら子供たちに話す。


「私達はエルマイスター領に住んでいる。そこに一緒に来ないか?」


手の届く範囲は頑張ろうと思い、子供たちに質問する。


「はい、使徒様の指示に従います!」


いやいや、使徒じゃないから!


「え~と、私は使徒じゃないよ。少しだけ魔法が使える普通の人だからね」


(少しだけ!?)(普通の人!?)


何故かアーニャ夫妻が驚きの表情で俺を見ている。


「はい、使徒様ということは秘密にします!」


全然分かってないじゃ~ん!


「この人はアタル。エルマイスター領の領主様の相談役をしています。使徒様じゃないのよ」


ラナさんが優しく話してくれた。


「わ、わかりました。アタル様の指示に従います」


指示って何!? 命令しているみたいじゃん!


「ダメよぉ~、アタルはアタルお兄ちゃんかアタルと呼ばないと怒るのよぉ~」


ミュウちゃん、微妙にナイスフォロー。怒らないからね……。


「は、はい、アタルお兄ちゃん……」


なんか無理やり言わせた感じがするぅ~。


でも、エルマイスターに行けばすぐに慣れるだろう。


そしてそれまでの住まいについて考える。自分達の宿舎に連れて行けば問題がある可能性が……。そして閃いた!


立ち上がって空いている場所まで移動すると客車型のテク魔車をストレージから出す。ウマーレムは目立つので付けていない。


これなら箱馬車にしか見えないから大丈夫だろう。


振り向くと何故かさらに驚かれてしまった。


まあ、少しずつ慣れてもらおうと思いながらテーブル戻ろうとすると、今度は空き地に数人の子供たちが入ってきた。


アーニャさんの旦那さんが、慌てて子供たちの方に向かう。


何となく自分の手の届く範囲が、予想以上に広がりそうな予感がする。


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