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第37話 テク魔車

結果的にウマーレムは大好評だったが、何故か呆れられてしまった。そうなると馬車を出すのに躊躇してしまう。


レベッカ夫人が期待に満ちた目で催促しているので出すしかないだろう。


仕方ないので一番無難な馬車から出すことにする。


「ふむ、予想外に普通じゃな。いや、小さすぎるかのぉ」


馬車を出して、ハロルド様の感想を聞いてホッとする。レベッカ夫人が町で利用することを想定して作製した馬車をまず出したのだ。


「ほう、こうやってウマーレムを付けるのかぁ」


アランさんはウマーレムと馬車の連携部分に興味があるようだ。乗り降り用の取っ手部分と後部座席の背もたれ部分に馬車から繋がるようになっている。


実は馬車と連結することでウマーレムは馬車側で管理できるようになる。そしてウマーレムに停止を命令すると馬車にもブレーキがあり、馬車側と連動して止まる。

ウマーレムは馬体と足が小さい。だから馬車が停止しようとしても、ウマーレムでは支えきれずに滑ってしまうのだ。だから連動して止まるようにしたのだ。


「馬車は小さいですが、ウマーレム1頭で引けるのですか?」


ルークさんが一回り小さいウマーレムを見て心配そうに尋ねてくる。


「大丈夫ですよ。ウマーレムは普通の馬車の5倍ほどの力があります。実際には足が小さいので無理をすると地面を削っちゃいますがね」


無理に大馬力で引こうとすれば、ウマーレムの足に力が入り過ぎる。すると地面が抉れる可能性が高いのだ。

しかし、スピードはそれなりに出せるはずである。ただ、馬車に連結した状態では街中では時速15キメル、外でも時速30キメルに制限してある。


「では中を見てもらいましょうか」


レベッカ夫人が馬車の入口で待ち構えている。管理者登録や使用者登録をして馬車の扉を開ける。


「あら。変わった開き方ね」


レベッカ夫人は横開きの扉に驚いたようだ。


「え~と、実は登録者が扉に触れると開きますが、実は離れていても中の管理画面から自動で開閉が可能です」


驚いた表情をしたが、それほど気にしてはいないみたいだ。


うん、まだ許容範囲内のようだ。


扉を開くと自動で中に灯りがつき、馬車内がある程度見える。


「お、思ったより広いわねぇ」


ま、まだ大丈夫だよね?


中に入ると人が普通に歩ける廊下のようになっている。しかし、行き交う時は体を横にしないと無理だろう。


左に行くと御者台へ出られる。右に行くと荷物用の部屋に続く扉がある。そして正面には腰の高さまでの木製の壁と中が見通せるスライム板が横一面に張ってある。


正面の横開きの扉を開くと、中には3×3の迎え合わせのベンチソファにテーブルがある。


「これは空間拡張で広くしてあるのね。予想以上に広くて快適そうだわ。でも窓がないのが残念ねぇ」


「ま、まあ、取り敢えずお座りください」


そう言うとレベッカ夫人とハロルド様が隣同士で座り、反対側にアランさんとルークさんが座った。セバスさんとクレアは私の後ろに控えるように立ち、私は立った状態で説明を始める。


「テーブルに管理パネルがあります。それで色々と管理できます」


「あら、本当ね。食堂やテントのような感じなのね」


レベッカ夫人はそう言うと勝手に使い始めてしまう。


「あら、これは……」


そう言った途端に壁とスライム板の部分に外の風景がガラスのように映し出された。


「「「………」」」


うん、これはダメなやつの気がするぅ……。


「ふぅ~、それで説明してくれるかしら?」


説明と言われても……。


「と、取り敢えず、ウマーレムに訓練場を回るように指示してください」


すると映し出された風景がゆっくりと動き出した。しかし、特に振動もなく加速感も感じない。


「こんな感じで、簡単な指示ならウマーレムが自分で判断して進んでくれます。各種耐性に振動吸収、自動洗浄に自動修復、結界も張られています。結界は管理パネルから強度を設定できますし、馬車に入る許可を出すこともできます」


説明を終わると、また呆れたように何か話している。


レベッカ「アタルだからね……」

セバス「アタル様ですから……」

ルーク「ソウデスネェ~」

ハロルド「アタルはこれで戦争にでも行くのかのぉ……」


最後にハロルド様が不穏な発言をする。


「え~と、これはレベッカ夫人が町中で利用できる馬車にしたつもりなんですが……」


「「「………」」」


なんで全員が黙ってしまうのぉ!


「ま、まあ、レベッカ夫人が乗っても違和感がないように、管理画面から紋章表示やデザイン変更が選べますよ」


「「「………」」」


うん、絶対に叱られるパターンだなぁ……。


「ふぅ~、アタルや、他にもあるのかのぉ?」


おっ、イケるんじゃね!


「他にもハロルド様が旅をできるように宿泊や護衛が乗れる馬車や、大量に人を運べる馬車、金持ち用の個室付き馬車や、簡易宿泊設備のついた馬車もありますよ!

いやぁ~、後でトイレを付けるのを忘れて、造り直したりして大変でしたねぇ」


「「「………」」」


あれ、反応がない?


「ハロルド様用は地図スキルで魔物や人の位置がわかるようになっていますし、一度行った場所は地図も表示されますよ。いやぁ~、地図データ用のクラウドまで用意して大変でしたぁ。あっ、さらに護衛用のウマーレムと部隊登録すると連携もできるようになってます」


「「「………」」」


得意気に説明したが全員の顔に表情が無くて、みんながどういった気持ちなのか全く分からない。


「はぁ~、アタル、いつものマニュアルがあるのじゃろ?」


「え、ええ、もちろん用意してあります……」


マニュアルをストレージから出すとハロルド様に渡す。


ハロルド様は受け取ると、町中用のマニュアルをセバスさんに渡し、ハロルド様用をアランさんに渡し、残りをルークさんに渡していた。


そしてまた質問してくる。


「それで、馬ゴーレムのコアを使って、どれくらいのウマーレムを造ったのじゃ?」


「え~と、馬車用で12頭、それ以外は200頭ほど作製しました。預かっていたコアが231個だからコアは19個残ってます」


アランさんは嬉しそうな表情をしている。


「マニュアルは?」


「これです!」


ハロルド様は碌に見ずに受け取ると、アランさんに渡している。


「アタル! 絶対に我々がどうするか決めるまで、絶対にウマーレムを出すんじゃないぞ!」


うっ、恐い……。


「は、はい……」


「ウマーレムと同じように何か名前はないのか?」


そ、そんな、強引なぁ~。


ハロ馬車? 客車? 電車? 魔車? ハイテク馬車?


うん、混ぜてテク魔車にしよう! 大賢者さん、ごめんなさい!


「だ、大賢者さんの資料によると、テク魔車と言うそうです……」


「ほう、大賢者がのぉ……」


あっ、疑ってる!?


「まあよい。これからはテク魔車と呼ぶことにするかのぉ」


だ、大賢者さん、本当に、本当にごめんなさい!


疑いの眼差しで私を見ていたが、そして予想外の提案をされてしまう。


「それと塩会議には、アタルも一緒に行ってもらう。別に会議に出ろというわけではない。馬車で移動しながら疑問が出たら答えてもらうだけじゃ。決してアタルを自由にすると何か仕出かすから、心配で監視する訳ではないぞ!」


そ、それって、絶対に監視すると言っている気がするぅ~!


「旦那様、良かったじゃありませんか。別の町も見てみたいと言ってたから、よろしいと思います!」


クレアさんに言われて、確かにそう言ったと思うけど……。


なんか塩会議が恐いのぉーーー!



   ◇   ◇   ◇   ◇



その日の夜は6日ぶりにレベッカ夫人が感謝のお礼として屋敷に泊まりにきた。


感謝のお礼で搾り取るのは止めてくれ~!


そう言いながらもダース単位で頑張るアタザルだった。


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