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第7話 獣人姉妹

何故か獣人と睨み合う状況になっている。


見た目は子供、実は凶暴な獣人なの?


やはり逃げたほうが良いのか迷う。ギラギラと警戒して私を見る目は、正直ちびりそうなくらい怖い。


でも見た目は子供で、栄養状態も悪いのかガリガリに痩せており、ケモミミはフワフワであって欲しいが、明らかにベトついた感じがする。


それに凄く幼い獣人を庇うようにしてる。


見た目は子供、実は親なのか?


んんっ、赤い!? 小さい獣人の腕に血が…?


手負いの獣は余計に危険な感じがする。でも全然動いていない……。


ストレージからポーションの入った水筒を取り出す。


「これはポーションだ。その子供が怪我しているならポーションを渡すよ!」


勇気を振り絞って声を掛ける。一瞬、獣人の目に戸惑いが浮かんだ気がする。


「言葉はわかるかい?」


ポーションを前に出しながら少し前に出る。

相変わらず目がギラついて歯も見せているが、最初より迫力が弱くなっている気がする。


「これを掛ければ怪我は治るはずだよ」


更に前に進みながら、刺激をしないように優しく話をする。それでも警戒の目つきは変わらない。


言葉が通じれば……。


「ほら、飲んでも問題ない」


少し飲んでいるところを見せる。言葉が通じないなら行動で示すしかない。


あと5メルぐらいまで近づく。小さな獣人はピクリとも動かない。よく見ると二人とも粗末だが服を着ているようだ。


更に一歩近づくと、小さな獣人は腕に怪我をして血が出ていて、驚くほど痩せて生きているようには見えない。


あっ、呼吸している!


呼吸しているような胸の動きは無いが、もう一人の獣人の髪の毛が、呼吸に合わせるように揺らめいている。


さらに顔を良く見てみる。


「みゆ!」


私はそう叫ぶと一気に近づき、ポーションを怪我に振り掛ける。傷はすぐに塞がって行くが、顔色や肌の感じはまるで死人のようだ。


急いで口元にポーションを持って行くが、意識がないのか飲めそうに無い。無理やり口を開けて飲ませるか戸惑う。


「なんで妹の名前を知っている!」


しゃべれるんか~い!


「そんな事より、この子は危険だ! このポーションを飲ませれば何とか、」


最後まで話を聞く前に、ポーションの入った水筒を奪うように私から受け取ると、その子は自分でポーションを口に入れると、口移しで飲ませようとする。


あぁ、全部零れてる……、飲め、飲めぇーーー!


思いが通じたのか、喉が一回動いた。


よし、もっと飲ませろ!


しかし、もう一人は何故か動きを止めている。顔を見ると目に涙が溢れそうだ。


なんで諦めるーーー!


「もう、ポーションが無い! グスッ」


それを言わんかーい!


「こっちの方が効果は高い」


新しい砂糖ポーションの水筒を出して渡す。また奪うように受け取ると、すぐに口移しで飲ます。


今度はハッキリと喉が動いた!


さらにもう一度口移しで飲ますと、喉が動いて飲み込み、腕が少し動いて目も少し開ける。


「ミュウ、これを飲むのよ!」


そう言って口に水筒を持って行き飲ませる。最初は少しずつ飲ませていたが、途中から水筒を自分で持って飲み始める。


ミュウ……美優みゆの訳ないよな。


小さい獣人を、思わず幼い頃の美優みゆとダブってしまった。


何となく顔は似ているなぁ。


水筒を抱えて飲む姿を見てそう思ってしまう。


「おねえちゃん、すごくおいしいの」


思った以上に元気になった小さな獣人は、飲み終わるとそう話した。


ミュウと呼ばれた少女が回復したのがわかると、思わず泣きそうになる。


んんんっ、お姉ちゃん?


女の子だったんかーーーい!


思わずお姉ちゃんと呼ばれた獣人を見ると目が合ってしまう。


「なんで妹の名前を知ってる!」


えぇ、私は怒られているん?


「え~と、私の妹の名前が『みゆ』で、少し顔が似ているので思わず……?」


獣人の成長具合や年齢はわからないので丁寧に話す。


それに、この子なんか怖い……。


「そう、なんだ……」


もっとなんか言ってぇええ!


どうしよう……、盗賊とかじゃなかったけど、何を話せば良いのか……。この世界の事も獣人の事も良く分からないし……。


「名前はアタルで28歳、ヨロシク」


とりあえず自己紹介は必要かな…?


「ミュウ、7歳、ヨロシク」


驚くほど元気になったミュウは、嬉しそうに答えてくれた。ポーションは凄いと思うが、ミュウは5歳ぐらいかと思っていた。


「………シャル、12歳」


10歳以下だと思った、……獣人は成長が遅いのか?


見た目より年齢は上だったが、12歳なら子供だ。そこまで丁寧に話さなくても良いだろう。


「建物の中で話さないか?」


「……わかった」


シャルはまだ警戒してるみたいだが、ギラついた目は気の強そうな目つきになり、敵意を剥き出しにはしてこなくなった。


建物の裏から正面に移動して、入り口から中に入るが、二人は手を繋いで入口で止まってしまった。シャルはより警戒した目つきになっている。


「お金はない。渡せる物もない!」


シャルが突然そんなことを言った。


なんだ、そんな事を心配していたのかぁ。


「ああ、なにも要らないよ。できれば話が聞きたいんだ」


そう話すと、少し戸惑いながらも二人は中に入ってくる。


この体格が獣人の標準的な体格なのだろうか?


二人は驚くほど痩せていて、脂肪など一切ついていない。これでしなやかな筋肉がついていれば納得も出来るが、筋肉も碌に付いておらず、どう考えても栄養不足の子供にしか見えない。


この世界で初めての情報源だから大切に話をしないとなぁ。


そう考えながら奥のテーブルに座ると。二人は少し離れた位置に座った。


バリバリに警戒されてるやんけぇ。わ~い!


コミュニケーション能力の低い自分に、この状況から情報を引き出すことに不安を覚える。


「え~と、二人はなんであんな所に? なんで怪我してたのかな?」


うん、ストレートに話を聞くしかできない!


「……あんたのせいだ」


えっ、ええええっ!


「な、なんで、私のせいなのかな?」


「…あんたが急にここにいたから……」


私がここに居たから……、私がこの子たちを追い出したぁ!


悪いのは私じゃない。あの駄女神が悪いんだぁーーー!


「ごめんなさい」


思わずテーブルに手を付いて謝罪する。

良く考えてみると、そこまで私が悪いわけではない。しかし、他の人間に気が付いて、逃げ出そうと考えた私からすると、この子たちの気持ちは痛いほどわかった。


二人は驚いていたが、すぐにシャルが話し始める。


「で、でも、アタルは妹を治してくれたから、も、問題ない…」


とりあえず許してくれたようだ。


「それなら良かった。でも、色々話が聞きたいけど、良いかな?」


「な、なにを聞くんだ!」


また警戒されちゃったみたい?


「この辺の事を知らなくて、教えて欲しい。あと……、君たちは私と姿が違うし、……そのことを教えて欲しいかな?」


凄く驚いた顔をするシャルちゃん。


私は変な事を聞いたのでしょうかぁ?


「自分でここに来て、この辺りの事を知らないのか! それに獣人族を見たことがないのか!」


シャルちゃん怒ってます?

もう少し優しく話してくれると嬉しいかな。


しかし、自分はまったくこの世界の常識が無いようだ。


なんと話せば良いのかなぁ?


「実はこの世界の神様に、突然ここに連れて来られたんだ。だから、この辺の事も常識的な事も何も知らないんだなぁ」


考えるのが面倒でストレートに本当の事を話してみましたけど……文句ある?


シャルさん、そんな可哀想な奴を見るように、僕の事を見ないでくれます。ほら、ミュウは目をキラキラさせて僕を見ているじゃない。


私がミュウの表情を見て嬉しそうにすると、シャルはミュウを見て話しかける。


「この人は大ウソつきか、少し頭のおかしな人だから信じちゃダメ!」


そこまで露骨に否定をしなくても……。


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