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3つの殺気

「よく来たな。まぁ、座れ。色々とせねばならん話があるのだ」


 執務室に呼ばれて部屋に入ると、珍しく先に来ていた陛下に手招きで呼ばれる。

 俺は臣下の礼をとってから席に座った。

 部屋の中にいるのは陛下と宰相殿、俺を連れてきてくれたテラーズさんと見知らぬおじさんが一人いた。


「紹介しよう。帝都冒険者組合(ギルド)の副ギルドマスター、ヨハンだ」


陛下はそう言って俺に見知らぬおじさんを紹介してくれた。


「はじめましてになるな。ヨハン・チェスターだ。早速だが、冒険者Gランクの君の成果を確認したい」


 自己紹介から間髪入れずに用件を伝えてくるとは随分とせっかちな人だな。

 おまけに言っている意味がよくわからない。

 どういう意味かわからず躊躇っていると、宰相殿が説明してくれた。

 フェンドラで最下級のGランク冒険者がダンジョンに入ったまま一ヶ月も戻ってこなかった。

 死んだかと思われていたが、何事もなかったかのように突然ひょっこり帰って来たと思ったら今度は何の報告も無しに街を出て、帝都に戻ってしまった。

 それを不思議に思ったフェンドラ支部の冒険者組合が帝都冒険者組合本部に連絡を入れたそうだ。

 連絡を受けた本部が事実確認をしようと訪ねて来た時に人伝に俺がとんでもない成果を上げていると聞き、俺の行方を追ってわざわざ帝城までやって来たんだそうだ。

 迂闊だったな。

 そりゃ、何の報告もせずに街を離れたら不審に思われても仕方ないよなぁ。

 俺は申し訳ない気持ちになりつつ、破滅(カタストロフィ)巨大虎(グレートタイガー)から出た宝箱を出して見せた。

 四大(フォーグレイト)精霊龍(スピリットドラゴン)の宝箱は中身をいくつかあげていたので、出さずにおいたんだけど、それでも結構な騒ぎだった。

 古代魔導書に魔導核が5個、すでに献上してある古代魔導王国の紋章旗だけでもかなりの実績なんだそうだ。

 デッペルス子爵みたいに疑われるかと思ったけど、宝箱自体がダンジョン固有の物なので、それが証明となるそうだ。

 ヨハンさんは今から宝箱と中身を持って帝都組合本部に戻り、俺のランクを会議で検討してから正式に通達すると言って、足早に部屋を出て行った。


「まぁ、中級ランクへの昇格は間違いないだろう。それより、他にも私からお前に話があるのだ」


 そう言って陛下は話を続けた。

 先ずはさっきの決闘の結果だ。

 勝者は俺で間違いないそうだが、問題はその先である。

 賠償金だ。

 決闘の勝者は敗者に対し生殺与奪(せいさつよだつ)の権利を得る。

 だから俺が子爵を殺しても問題にはならないそうだ。

 やらないけどね。

 だが、殺さない場合は相手に他の物を要求する権利が生じるようで、普通であれば忠誠を誓わせたり、部下にする事ができるそうだが、今回は相手の方が階位が上のため、それはできないらしい。

 忠誠を誓わせられない場合に用いられるのが賠償金、または保釈金というわけだ。

 これは金銭だけでなく、美術品や不動産など価値のある物であればなんでもいいらしい。

 しかし、俺はそういった事は全くわからない。

 はっきりいって何を幾ら要求したらいいのか見当もつかないんだよなぁ。

 結局、迷った末に宰相殿の提案で子爵家が保有する利権の一部をもらう事になった。

 デッペルス子爵家は帝都の物資の流通権を持っているので、その一部の酒などの嗜好品に関する流通権を俺がもらう事になった。

 いきなりそんな権利を貰っても困るんだけど、その辺りは信頼できる使用人をつけてもらえる事になったので納得した。

 これである程度の定期収入が見込めるから、有難いしね。

 最後は俺の屋敷だ。

 陛下に献上した古代魔導王国の紋章旗の褒美として、帝都に屋敷を貰える事になったんだけど、屋敷選びが難航した。

 廃爵や没落した元貴族の大きな屋敷をいくつか帝国で管理していたそうだが、俺はダウスター子爵家に近い小さな屋敷をもらう事にした。

 そんなでかい屋敷貰っても管理できないしね。

 それに小さいと言っても、一階にはエントランスホールと大広間、台所と風呂があって、二階には個室が6部屋にサロンまであった。

 はっきりいって十分でかい。

 しかし、陛下はそれだけでは褒美としては少なすぎると屋敷の使用人まで用意してくれる事になった。

 家令、メイド、コック、庭師、従僕、警備なんかを手配してくれるそうだ。

 こういう人選とかもよくわからないから助かるね。

「屋敷に使用人、これでお前も立派な独立貴族というわけだ。今後とも励むがいい」


 そうか! これで俺も独立する事になるんだ。

 ちょっと不安な事もあるけど、いつまでもダウスター子爵様に甘える訳にもいかない。


「ありがとうございます、陛下。このリクト・フォン・シュナイデン。陛下の御期待に添えるよう、一層努力致します」


「そうか。では、期待に添って貰う前にお前に聞きたい事がある」


 急に場の雰囲気が変わり、重苦しくなる。

 陛下を見るとさっきまでと違って、真剣な表情でこちらを見ている。

 一体、どうしたんだろう。


「お前がダンジョンで得た物はあれだけではあるまい。先の決闘の際に見せた力……お前はダンジョンで一体、何と戦い何を得たのか正直に答えよ。嘘偽りがあれば……」


 俺の周りを3つの殺気が取り囲んだ。


いつも読んでいただきありがとうございます。


独立貴族となって浮かれるリクトに迫る3つ殺気。

果たして、リクトの運命や如何にっ!


次回予告だとこんな感じになるんでしょうか?


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