確固たる証拠
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謁見の間は騒然となっていた。
嘲笑していた貴族だけでなく、上級将校や高級文官の中からも急な陞爵に異議を唱える者が続出していた。
「へ、陛下っ! な、何故ですかっ? 何故陛下を謀ろうとした者が陞爵となるのですかっ!」
「あり得ない! こんな事が認められていいはずがない!」
「そうです! この者は帝国貴族の誇りを汚したのですぞ!」
口々に異議を唱える貴族達だったが、これは拙い。
発言が迂闊過ぎる。
「……帝国貴族の誇りとは、確たる証拠もなく他者を貶める下賤の輩の振舞いの事か?」
陛下の小さく低い声が部屋全体に響き渡る。
絶世の美女である陛下だが、その威圧は本物だ。
戦場に出た事もない貴族達では太刀打ちできるわけがない。
皆一様に口をつぐんでしまった。
「シュナイデン卿が献上した品は古代魔導王国の紋章旗だ。存在自体が定かではなかった伝説の国が実在したという確固たる証明だ。また、当時の文明、魔法技術を知る事ができる歴史的価値も計り知れない。学術的な調査はまだだが、本物であるということはすでに証明されている。よって、献上者たるシュナイデン卿を陞爵とする。異論は認めぬ」
宰相殿が全員に対して陞爵の経緯を説明した。
まだ不満の声は聞こえるものの、表立って口に出す者はほとんどいなかった。
そう、ほとんどね。
「な、納得できません! それが本物であったとしてもダンジョンから出た物とは限りません! ダウスター子爵が持っていた物をシュナイデン卿が偽って献上した可能性も……」
「これだけの品を今まで隠しておきながら、部下のために渡したと? 本当にそう思うのか? デッペルス子爵よ」
「うっ……」
列から再び離れて申し出たデッペルス子爵だったが、宰相殿に軽くあしらわれている。
そういえば、最初に出てきていたギルテン侯爵は苦虫を噛み潰したような表情をしているが、異議は唱えていない。
どうやらこれ以上言っても無駄だと判断したようだな。
って事は、真の馬鹿貴族はデッペルス子爵に決定だ。
「デッペルスよ、もう下がれ」
「な、納得できません……そうだっ! シュナイデン卿っ! ダンジョンに入ったのであれば、当然魔物を討伐したのであろう? その証拠となる品を出せ! まさか、討伐した魔物の素材を得ずに放置したわけではなかろう? さぁ! それを出せば納得しようではないかっ!」
出していいなら出すんだけど、出していいのかな?
俺は宰相殿に視線を移す。
溜息は吐きながら宰相殿はゆっくりと頷いた。
なら出させてもらいましょう。
どうせ小物は認めないとか言うんだろうから、あれを出すか。
「どうしたっ? 早く出すがよい! それともダンジョンでは逃げ回っていただけか? それともやはりダンジョンに入ってすら……」
「デッペルス子爵。危ないですよ」
近づいてきたデッペルス子爵を手で制して、俺は魔法鞄からアレを取り出した。
手で制された子爵は憤慨していたが、出てきた物を見て腰を抜かした。
「ひぃいいいいいいいいいいいいいい!」
「なっ……なんだ……これは……と、虎か?」
俺が取り出した物を見るや、謁見の間は再び騒然となった。
おまけに壁側にいた近衛騎士団が陛下を守るように慌てて前に出て来て、バカでかい虎の頭の周囲をぐるりと囲んだ。
「……シュナイデン卿。卿は一体何を狩ってきたのだ?」
珍しく少し焦ったような口調で話す陛下。
宰相殿もテラーズさんも驚いているのか、眼を見開いている。
さっきの内緒の陞爵の意趣返しができたかな?
「陛下。これなるは《破滅巨大虎》の首にございます。些か手間取りましたが、なんとか討伐する事ができました」
そう、俺が取り出したのは《破滅巨大虎》の首だ。
丸ごと回収したので巨大な身体も入っているのだが、さすがにこの部屋全体が埋まってしまうので、斬り落とした首だけ出した。
「ふ、ふはははははははっ! 見事だ、シュナイデン卿。《帝国緑風勲章》をやった甲斐があるというものだ。見事な武勇だ!」
陛下が玉座から立ち上がって褒めてくれる。
苦労した甲斐があるというものだ。
だけど、そこに水を差す馬鹿がまだいた。
「ふ、ふざけるなっ! こ、こんな虎が存在するわけがない! 謀るのもいい加減にしろ!」
デッペルス子爵がヨロヨロと立ち上がりながら、悪態を吐く。
そう言われても困るんだけどな。
あっ、陛下の顔が怖い……どうやら愉快な気分に水を差されて不快なのは俺だけではないようだ。
「デッペルス。では、卿はこれが偽物と言うのか?」
「そ、そうです! 陛下、騙されてはなりません。こ、このような魔物がダンジョンの上層にいるわけがないのです!」
ん? 上層じゃないぞ。
だって、こいつとは最下層で戦ったんだから。
「それに例え、これが実在したとしても単騎で勝てるわけがありません! きっと、これもダウスター子爵が領軍を用いて以前に……」
「待て。卿は先程から『おそらく』とか『違いない』とか今も『きっと』と随分と推測で物を言うのだな。シュナイデン卿は実際に確固たる証拠を出しているのだぞ? 推測で他者を貶めるなど帝国貴族あるまじき行いと思わぬのか? デッペルス子爵よ」
デッペルス子爵の言葉に宰相殿が苦言を呈する。
確かにそうだ。
さっきからやけに推測だけで俺に突っ掛かってくると思ってたんだよなぁ。
何かあるのだろうか?
「……では、私も確たる証拠をお見せ致します」
そう言うと、俺の前に白手袋が投げ落とされた。
これって、もしかして……。
「シュナイデン卿! 卿に決闘を申し込む!」
デッペルス子爵は陛下の御前で高らかにそう宣言したのだった。
これが確固たる証拠?
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