表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/205

三人の説教

 俺はベットに横になっていた。


「はぁ〜、しんどい……今日は色々あったなぁ」


 俺は今日一日の出来事を思い出していた。


「ダンジョンから戻って子爵様に会いに行くと、大尉と少尉がやって来たと思ったら何でか怒られて、それをテラーズさんが止めてくれたと思ったら独立しろと言われて、旗は歴史的遺産で、陛下に献上することになって、更に大尉と少尉にあげた宝石は超がつくほどの高級品だった。そして……はぁ……」


 その後も大変だった。

 メアリーさんが羨ましそうな目をしていたから、約束していたミスリルの短剣を渡したんだけど、何故か不満げな表情をしていた。

 俺が戸惑っていると、テラーズさんが『彼女に宝石を』と言うので、ルビーのブレスレットを渡した。

 すると、どうだろう。

 さっきまでの不満げな表情はどこへいったのか、満面の笑みで受け取り、代わりにミスリルの短剣は返してくれた。

 価値的にはミスリルの短剣の方がいいはずなんだけど、女の人はよくわからない。

 そして、陛下の謁見での段取りやら献上の手順、更に褒美についての希望やら色々打ち合わせがあって、その後は全員で夕食をとることになった。

 テラーズさんは陛下に報告があると帰っちゃったけど、夕食の後も一悶着あったんだよなぁ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ダウスター子爵邸にて夕食を終えた後のサロンにて子爵様と大尉と少尉、メアリーさんと俺の5人は今後の事について話し合っていた。


「なんとっ! では、貴女はシーラン大公国の末裔ではなく、シーラン大公国の第三公女様なのですかっ!」


 俺とメアリーさんの出逢いの話からメアリーさんの素性の話となり、メアリーさんは意を決して真実を話した。


「はい。ですが、すでにシーラン大公国は亡国となり、三百年の時が流れたとのこと。私は最早公族とは言えないでしょう。ただのメアリーとして接してくださいますようお願い致します」


 メアリーさんが優雅な振る舞いで礼をした。

 いつもと違う雰囲気にドキッとしてしまう。

 こうやってみると、やっぱり高貴な身分の方なんだと思う。

 いつもは何か抜けてる所もあるから思わないけどね。

 子爵様も貴族の礼で応えるが、今後の対応についてはどうするか悩んでいるようだ。


「う、う〜む、これはどうしたものか……まぁ、テラーズ殿からも問題ないと言われておったし、当面の間は貴女はシュナイデン卿の従者として扱わせていただく事にしましょう。それで、よろしいですかな?」


「はいっ! ありがとうございます! このメアリー・シーランは終生、リクト・フォン・シュナイデン様にお仕えする事を誓います!」


 そう言って今度は俺の前に片膝をついて、腕を胸に当て臣下の礼をとる。

 こういうのは困るから、やめてもらおうと手を差し伸べた時だった。


「ま、待てっ! わ、私は反対だっ!」


「私もぉ! 急に従者とか言って抜け駆けは駄目だよぉ!」


 ヴォルガング大尉とリンテール少尉が俺を背に庇い、メアリーさんとの間に入る。


「あの、貴女方は御主人様の……恋人なのですか?」


 メアリーさんがおずおずと尋ねる。


「こ、恋人っ? ち、違う! 私は……私は今はまだ……その、えっと……」


「あのねぇ、アリシアちゃん。ここで引いたら駄目だよぉ! ここはハッキリさせとかないと駄目だよぉ! この人、なかなか手強いと思うしぃ……」


「お二人とも、あちらで少しお話ししませんか?」


 三人はサロンの隅に歩いて行き、話し合っている。

 俺は疲れもあったのか椅子に座ったまま動かず、それをボケーっと眺めていた。

 それにしてもこうやって3人並ぶと女の人って色々違うんだなぁ。


 大尉は長身で鍛え抜かれた肢体を持ち、キリッとした眼をしたクール系の美女だ。

 少尉は小柄であどけない容姿ながら、巨乳というロースター軍曹曰く、トランジスタグラマー美少女らしい。

 そして、メアリーさんは少し抜けてるけど、物腰柔らかく家庭的で優しいスタイル抜群の天然美人。


 こうやって、並んで話しているだけで絵になるんだもんなぁ。

 眼福ってこういう事を言うんだろうか?

 それにしても、3人は一体何をこそこそと話してるんだ?

 たまにチラチラとこっちを見るのも気になるけど。

 おや? 三人が戻ってきた。

 そして三人揃って俺の顔を見ている。

 何かついてるんだろうか?


「困ったなぁ……まさか、ライバルがいるなんて……もう! 負けないんだから!」


「くっ! ファンティーヌ以外にも障害が現れるなんて……な、なんとかしないと……」


「うーん、さすがにのんびりはしてられないかなぁ。アリシアちゃんとメアリーさんかぁ、これは強敵だなぁ」


 皆んなが小声で呟くのが聞こえたんだけど、よくわからない。

 ライバルとか、障害とか強敵とか何のことだ?


「少尉っ! もうこれ以上は増やすなよ、いいなっ!」


「そうだよぉ! もうこれ以上は駄目だからねぇ!」


「お姉さん知らなかった。リクト君、節操ないのは駄目だからね。もう! ちゃんとわかってる?」


 その後も訳の分からない事を言われ続け、しまいには『誰にでも優しくするな』と正座させられ、説教された。

 その説教は三人から延々と続けられ、夜更けまで続いたのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。


宝石について色々調べて気づきました。

カラットって大きさじゃなくて重さを表してたんですね。

どうりで昔『1カラットってどれくらいの大きさ?』って聞いた時に変な顔されたわけだ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ