お金持ちリクト
新たに感想頂きました!
しかも、私の無知を教えてくださり、お陰で恥を晒し続けずに済みました。
本当にありがとうございます。
ご意見を頂ける事が何より嬉しいです!
「て、て、帝国金貨十万枚……大金貨で一万枚、白金貨で一千枚……」
予想を遥かに超えた金額に俺は唖然としていた。
他の皆んなも同じで、開いた口が塞がらないまま固まっている。
「当然です。古代魔導王国の存在を示す歴史的な資料としての価値はもちろんですが、この旗には縫目単位で魔法が組み込まれています。現在ではここまで繊細な魔法技術は不可能です。しかし、この旗を調査・研究し、この魔法技術が解明されれば、現在の魔法技術の飛躍的な発展に繋がるのです。そう考えれば、帝国金貨十万枚は決して高くないでしょう」
テラーズさんが淡々と根拠を話してくれてるけど、あまり耳に入ってこない。
だって、それどころじゃないんだよ!
帝国金貨十万枚なんて帝都でも十分暮らしていける金額だ。
独立の資金としては十分過ぎる。
これならなんとか……。
「しかし、問題もございます」
「っ! も、問題ですか? それは一体……」
問題あるのっ!
折角、安心して独立できると思ったのにっ!
「本来、こういった歴史的な遺物は真贋を見極めてから買取となるのです。つまり、この紋章旗が本物であると証明する必要があるのですよ。調査すれば本物と断定できるでしょうが、時間はかかるでしょうな」
「テラーズ殿が本物と言った事は証明にならないのか?」
「確かに私は《魔眼》の能力で本物と断定できますが、考古学の専門家ではありませんので、私の見立ては学術的には証明にはなりません」
という事は、調査が済んで本物の古代魔導王国の紋章旗と断定されない限り、買取は出来ないってことか。
でも、独立のためにはすぐに資金がいるんだよなぁ。
「ふむ、でしたら陛下に献上されてはいかがですか?」
「献上ですか?」
テラーズさんの急な申し出に戸惑いつつも、どういうことか尋ねる。
「ダンジョンで出た珍しい物を陛下に献上する事は不自然な事ではありませんから。陛下に渡すのであれば私の証明で問題ありませんしね。その後、陛下が魔法学院に命じて学術的調査をすれば良いのです」
「あの……それが独立とどう繋がるのでしょう?」
「献上された物に対し、陛下が褒美を下さるのです。そこで資金なり屋敷なり得れば良いのですよ。陛下は吝嗇家ではありませんから、働きに応じた褒美は期待していいですよ」
おおおっ!
それなら学術調査よりは早そうだ。
あとはどうやって陛下に献上するかなんだけど。
「明日にでも登城しなさい。私から陛下にお伝えしておきますので」
はやっ!
っていうか、テラーズさんの権限凄すぎないか?
陛下のスケジュール調整まで干渉してるけど、本当にいいんだろうか。
何か申し訳ないな。
「テラーズさん。何から何までありがとうございます。なんと御礼を言っていいか……」
「気にしなくていいですよ。私が好きで勝手にやっている事ですから。私なんかより、こちらにいる大尉と少尉を労ってあげなさい。貴方がいない間に、この二人ときたら……」
「わぁああああああ! テ、テラーズ殿っ! そ、それだけは内密に! お願いしますっ!」
「ごめんなさいぃ! ごめんなさいぃ! ごめんなさいぃ! あの時は焦ってて取り乱しちゃって……もう二度としませんからぁ!」
「駄目です。シュナイデン卿が冒険者ランクを得に行ったと聞いて、軍令部に直談判したそうです。『我々も冒険者ランクを得に行く』とね。軍務の関係もあるので今は無理だと却下されたら、今度は休暇願をジェニングス中将に直訴されたとのこと。いやはや、恋する乙女とは……」
「ち、ち、違うっ! べ、別に恋慕とか、そうじゃなくて! た、ただ、抜け駆けされるのが嫌だからで……そうっ! それだけだっ!」
「私はそのぉ……置いてかれたらやだなぁ……って、ちょっと寂しくてぇ……」
二人とも顔を真っ赤にしながら全力でテラーズさんの誤解を解こうとしている。
どうやら迷惑かけたみたいだな。
よし、これをお詫び兼お土産って事で渡すか。
「大尉と少尉にもご迷惑をかけたようですね。これもダンジョンから出た物なんですけど、よかったら貰ってください」
俺は魔法鞄からサファイアのネックレスとエメラルドのイヤリングを出して、サファイアを大尉に、エメラルドを少尉に渡した。
「なっ、なんで急にプレゼントなんか……な、何だっ! このデカいサファイアはっ! こんなの見たことないぞっ!」
「うわぁぁあああああああ! ありがとうぅ! 凄い綺麗なエメラルドのイヤリングだぁ! えへへ、これはヤバいなぁ……これってぇ、もしかして私への手付けかなぁ?」
二人ともとても喜んでくれてるみたいで良かった。
俺は宝石なんか興味ないからなぁ。
価値もよくわかんないし、迷惑かけたお詫びになるんならこれぐらい安いもんだ。
「ほぅ、これは素晴らしい。ふむ、両方とも最高品質の宝石ですな。というか、こんな物があるならこれで屋敷も何とかなったのではありませんか?」
「えっ? これって……すいません、お高いんですか?」
俺はコソッとテラーズさんに小声で聞いてみた。
「はい。色、透明度、大きさ、輝き、カットどれをとっても最高品質ですからね。そうですな、二つとも帝国金貨千枚くらいでしょう」
「せ、せんっ!」
大声を上げそうになるのを必死に止める。
金貨千枚って……じゃあ、二つで金貨ニ千枚っ!
そ、そんな高いものだったのかっ!
「いや、それにしてもシュナイデン卿は豪気ですな。あれだけの物をポンッと贈るなど、上級貴族でも簡単にはできませんよ」
「あは、あははは……ま、まぁ、お世話になってますから……これぐらいは……」
俺の乾いた笑い声は、虚しく部屋に消えていった。
読んでいただいてありがとうございます。
拝読って自分が『読む』ことの謙譲語であり、相手に対して使う言葉ではないそうです。
皆さま、これまで大変失礼致しました。
これから気をつけます。




