宝の価値
宝箱の中には黄金色に輝く金銀財宝が隙間なくぎっしりと詰まっていた。
純金の剣や宝石を散りばめた盾などの武具。
魔法が付与された指輪やネックレスなどのアクセサリーが所狭しと……というのを想像してたんだけどなぁ……。
「これって……ハズレなんですかね?」
期待を込めて開けた宝箱の中に入っていたのは、古びた本が一冊、ボロボロの布切れが一枚、後は見たこともない金貨が5枚入っていただけだった。
正直、期待外れどころではない。
金貨5枚ってのもしょぼいが、それ以外の2つはガラクタじゃないか。
あの虎がまだ生きていたらクレームを入れに行くところだぞ。
「…………リ、リクト君、これって……」
宝箱の中身を見ながら、言葉をなくしているメアリーさん。
そりゃ、そうだろう。
もっと良いものが入ってるかと思ったのに……これではもう一つの方も期待できないな。
「メアリーさん。期待させておいてすいません。すぐ片づけ……」
「ま、ま、待って待って! お、お願いっ! 少しだけ少しだけ待って!」
ガラクタしか入ってない宝箱を片付けようとした俺をメアリーさんが必死な顔で止めてきた。
何か気になるんだろうか?
「どうしたんですか? そんなに慌てて」
「これって……やっぱり……リクト君、お願いっ! この本少しだけ見せて! もぅ、お願い! 見せてくれるならお姉さん何でもしてあげるからっ!」
なにぃいいいいいいいいいいいっ!
な、何でも……だ、駄目だっ!
抱擁の時のポヨンが頭から離れない!
年頃の男の子に何てことを言うんだ、この人は!
いけない想像しちゃうじゃないかっ!
「ど、どうぞ……」
顔が熱いのを悟られないように、箱から出した本を俯きながら渡した。
メアリーさんはそれを仰々しく受け取り、深呼吸をしてから中を見始めた。
すると、みるみる内に驚愕の表情へと変わっていった。
「これはっ! やっぱり古代魔導書よ! 凄いっ! こ、こんな完璧な状態で残ってる物なんて……だ、大発見だよっ!」
「こ、古代魔導書?」
目を見開き、本を食い入るように読むメアリーさんとは対照的に俺は若干冷めていた。
だが、メアリーさんの口ぶりからするに、多少は価値があるものみたいだ。
「それ、価値があるんですか?」
「もう、価値があるどころじゃないよっ! 失われた古代魔法が術式込みで載ってるんだから世紀の大発見だよっ! もう!」
普段のおっとりとしたメアリーさんからは想像も出来ない強い口調で言われたので少しびっくりした。
よくわからないが、価値があるのならいいか。
って事は、本当のガラクタはこのボロ切れだけか。
そう思って、ボロ切れを持ってみる。
薄汚れているからボロボロかと思ったら、意外と裁縫がしっかりしており、布自体は傷んでなかった。
細かい金の刺繍が施され、どこかの紋章のようなものが描かれている。
1メートル四方はあるから、ハンカチには使えそうもない。
まぁ、なにかを包む時にでも使うか。
「きゃああああああああああっ!」
突如、メアリーさんの絶叫が部屋中に響か渡る。
慌てて声の方を見ると、メアリーさんが口をパクパクさせながらこっちを見て、指を指していた。
「ど、どうしたんですか?」
「そ、それっ! その紋章旗! それは古代魔導王家の紋章旗よっ! 今まで古代魔導王国が存在したとする資料はあっても現存していた物的証拠がなくて、未だに学者達の間で実在説と捏造説が議論されているのよっ!」
「は、はぁ……」
力説してくれたメアリーさんには悪いが、俺にはよくわからない。
そもそも古代魔導王国って何?
「もう! わかってないね! それは古代魔導王国が実在したという物的証拠なのよっ! 歴史的大発見だよっ! しかも、製法から当時の文化や失われた魔導技術が解き明かされる可能性もあるのよっ! とんでもない貴重品なんだからね!」
あぁ、歴史的な遺産ってやつ?
正直、あんまり興味ないなぁ。
知らない歴史とか言われても全然ピンとこないもん。
まぁ、これも価値があるのならいいや。
歴史好きの人にでもあげよ。
となると、この金貨も価値があるのかな?
「この金貨も価値があるのかな?」
そう思って5枚の金貨を持ってみると、帝国大金貨よりも大きくて分厚いのがわかる。
っていうか重いし、表面には何やら魔法文字が書かれている。
「それは金貨じゃなくて魔導核だね。大型魔道具の核になる希少な物だよ。これも凄い物なんだけど、さっきの2つが凄過ぎて見劣りしちゃうね」
横から覗き込んだメアリーさんが苦笑しながら言った。
金貨じゃなくて残念だが、これはこれで価値があるのならいいや。
あれ? じゃあ、全部価値のある物だったって事?
となると、もう一つの宝箱も期待していいかな?
俺は徐に四大精霊龍から出た宝箱を開ける。
こっちの宝箱にはわかりやすいお宝が入っていた。
ダイヤの指輪にサファイアのネックレス、エメラルドのイヤリングなどの装飾品が幾つかと、豪華な装飾を施した鞘の短剣、軽鎧や籠手に脛当てといった俺好みの宝が入っていた。
虎とは違って、あの龍が生きていたら御礼の一つも言っておきたいところだ。
まぁ、どうせ『カトウセイブツガッズニノルナ!』とか言われるだけだろうけど。
「これはこれで凄いね……このアクセサリーの宝石は濁りもなく澄んでいるし、大きさも申し分ないわ。それにその短剣はミスリル製だし、他の防具も魔道具みたいね……」
驚いてはいるが、さっきよりも冷静に品物を見ているメアリーさん。
どうやら、武具や宝石より魔法の品や歴史的遺物の方が好きなようだ。
そういえば魔法で思い出したけど、龍が言っていた魔法の性質ってのを聞いてみるか。
「メアリーさん。魔法の性質って何ですか?」
「急にどうしたの?」
俺の突然の問いかけに不思議そうな顔をしている。
まぁ、何の脈絡もなく聞けばそうなるか。
「実はこの宝箱とは別に四大精霊龍から龍仙気ってのを貰ったんです。なんでも魔法の性質が変わるとか、それで……」
「ド、ド、ド、ド、龍仙気ぁあああああああ!」
メアリーさんの絶叫が家全体に響き渡る。
間違いなく今日一番の絶叫だ。
もしかして、これが一番のお宝だったんだろうか?
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